翻訳作業にかかる時間やコストを削減するために、AI翻訳ツールやサービスの導入を検討している方へ。法人向けAI翻訳の活用メリットや比較のポイント、おすすめのツール・サービスについてご紹介します。
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AI翻訳とは、「人工知能(AI)」を用いて外国語の文書を自動翻訳する技術を指します。
AI翻訳ツール・サービスが登場するまでは、外国語がわかる社員が翻訳を担当するか、翻訳家に依頼をするのが一般的でした。しかし、この方法だと膨大なコストとリソースが必要となります。Google翻訳やMicrosoft翻訳といった無料の翻訳アプリもありますが、翻訳精度やセキュリティの面で万全とはいえません。
その点、AI翻訳ツール・サービスを利用すれば、ディープラーニング(深層学習)による高度な翻訳が可能になります。また、最近のAI翻訳サービスの多くはクラウドで提供されており、テキスト変換だけでなく、Wordなどの文書ファイルごとの変換や、多言語対応している点もメリットです。
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現在では、様々な事業者がAI翻訳ツール・サービスを提供しており、その中には「法人向け」「個人向け」が混在しています。個人向けのツール・サービスは法人向けのものに比べて低コストですが、たとえコストは高くなったとしても、企業は法人向けAI翻訳ツール・サービスを導入すべきです。
以下、その2つの理由について解説します。
AI翻訳のソフトウェアには、膨大な数の単語が辞書登録されているのが特徴です。個人向けのAI翻訳ツール・サービスには一般の人が日常的なシーンで使う言葉が主に登録されているのに対し、法人向けのものには、専門性の高いビジネス用語が多く登録されています。そのため、ビジネスシーンにおいてより精度の高い翻訳が可能です。
また、海外との取引も多いビジネスの現場では、多言語に対応しているかどうかも重要になってきます。個人向けの無料ツール・サービスなどでは、英語や中国語などの主要言語にしか対応していないものがほとんどです。一方、法人向けのものでは、マイナーな言語や発展途上国の言語など多くの言語に対応しています。
AI翻訳ツール・サービスは、クラウド型のサービスが一般的であるため、データを一度クラウドに預けることになります。しかし、企業が翻訳をする会議資料や公的機関への報告・申請資料などの文書は、機密情報を含むため、取り扱いには注意が必要です。
個人向けの場合、すべてのユーザーアカウントで辞書が共有されているものもあります。そのため、別のユーザーが利用した際に、企業の機密情報に関連するキーワードが出てきてしまう恐れもあり、情報漏えいのリスクが懸念点です。
一方、法人向けのものは、暗号化機能や、IPアドレスによる利用端末の制限など、セキュリティ面でも安全が担保される機能を備えています。
以上の理由から、企業でAI翻訳ツール・サービスを導入する場合は、個人向けよりも法人向けがおすすめです。法人向けのAI翻訳ツール・サービスを使うことで、高精度かつセキュアな環境での翻訳が可能になります。
企業で法人向けのAI翻訳ツール・サービスを活用することには、「業務効率化」の観点でも多くのメリットがあります。主なメリットを4つご紹介しましょう。
社内で翻訳作業が必要になったら、必然的に外国語の堪能な一部の社員に任せることになります。マーケティングや市場調査、バイヤー、秘書、英文事務など、語学力を活かしてグローバルに活躍できる優秀な人材が、翻訳作業に追われ、本来の業務でその実力を発揮できていないとしたら、企業にとって大きなロスになってしまいます。
しかし、AI翻訳ツール・サービスを利用すれば、優秀な人材が翻訳作業以外の業務に時間をあてることができ、外国語人材の有効活用が可能です。
事業をグローバルに展開していくうえでは、海外の市場調査が欠かせません。日本語に訳されていない現地のフレッシュな情報をいち早くキャッチし、活用する必要があるのです。
AI翻訳ツール・サービスはリサーチ業務のスピードを飛躍的に高め、同業他社に差をつけられます。
AI翻訳と音声認識のツールやサービスを併用すれば、外国語の音声をテキスト化し、それを即座に翻訳できます。つまり、通訳を介さずにリアルタイムでの意思疎通が可能になるということです。外国語がわからなくても会議に参加できたり、翻訳されたテキストを議事録として共有できたりします。
外国語から日本語への翻訳だけでなく、日本語を外国語に翻訳する際にもAI翻訳ツール・サービスを活用可能です。たとえば、日本語で作成したPowerPointのプレゼン資料を、海外講演のために英語翻訳したいときなども役立ちます。
数ある法人向けAI翻訳ツール・サービスの中から1つを選ぶ際に留意したい、3つの比較ポイントについて解説します。
まず注目したいポイントが、翻訳の「精度の高さ」です。AI翻訳ツール・サービスの精度は、「AIエンジンの性能」と「チューニングや辞書登録の性能」の2点から判断できます。
「AIエンジンの性能」とは、「どのような技術を活用した翻訳サービスか」ということです。2016年にGoogleが「ニューラル機械翻訳」を採用したことにより、機械翻訳の性能は飛躍的に向上しました。現在は多くのAI翻訳サービスがニューラル機械翻訳を導入していますが、エンジンの性能によって翻訳精度は変わってきます。
たとえば、「COTOHA Translator」では、最新のニューラル機械翻訳技術を活用したAIエンジンを採用。TOEIC960点超レベルの高精度翻訳を実現できます。
「チューニングや辞書登録の性能」とは、カスタマイズの性能を指します。たとえば、社内用語や業界の専門用語を辞書に登録したり、企業のトンマナに合わせて文体や言い回しをチューニングしたりといった機能です。
こうした独自のカスタマイズを加えることで、使えば使うほど実用性が高まり、修正の手間を最小限に抑えられます。
AI翻訳ツール・サービスを選ぶ際、この2つの観点でチェックすることが重要となります。
前述の通り、AI翻訳ツール・サービスは利用する企業側で自社のトンマナに合わせて文体や言い回しのチューニングが可能です。しかし、都度チューニングしてAIに学習させるのが大変なのも事実。導入前には大量のデータを用いて学習させ、導入後には精度をチェックしながら、誤ったところを随時修正していかなければなりません。
更に、辞書に専門用語を追加して、その用語をどのように翻訳するか指定する必要もあります。
AI翻訳ツール・サービスを長期的に活用していくためには、こうしたチューニング作業をいかに効率的に行えるかというのも重要。チューニングしやすいサービスを選ぶことで、AI翻訳サービスはただの「翻訳マシン」ではなく、企業の知見を反映した「財産」となり得るのです。
たとえば、「MTrans Team」は、社内用語や業界用語などの翻訳文を蓄積し、修正された翻訳文をデータベースに自動で保存・共有・再利用可能です。
企業でAI翻訳ツール・サービスを利用するうえで、もう一点重要なのがセキュリティ面です。翻訳の際に利用した辞書データが他社のものと混じってしまうと、情報漏えいにつながる恐れがあります。更にその情報が転用・悪用されてしまうリスクも翻訳サービスにはつきものです。
特に近年は、世界的に情報保護の意識が高まっており、欧州では「一般データ保護規則(GDPR)」への対応が求められています。そのため、「DeepL」のように、世界で利用されているサービスではGDPR準拠が必須となっています。
そのほか、IPアドレスでサービスを利用できる端末を制限したり、翻訳処理したファイルを一定時間経過後にサーバーから自動削除したり、暗号化したクラウド上でデータの受け渡しができたりといった、セキュリティ対策機能の充実度もサービス選びにおいて重要です。
各社が提供しているAI翻訳ツール・サービスの中から、おすすめのものをご紹介します。
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(出所:DeepL Pro公式Webサイト)
ドイツ企業が開発し、世界中で利用されているAI翻訳ツール。29言語に対応。翻訳の精度に定評があり、2,000個、5,000ペアを収録可能な用語集(対応は一部の言語)の作成も可能。WordやPowerPointなどの文書ファイルであれば、レイアウトそのままに翻訳できる。
セキュリティ面でも配慮されており、EUの一般データ保護規則(GDPR)に準拠。翻訳用に入力したテキストは、翻訳完了と同時に削除され、翻訳以外にデータは使われないという仕様。そのほか、APIや翻訳支援ツール(CATツール)にも組み込める。月3ファイルまでの無料プランのほか、「Starter」「Advanced」プランには無料試用期間があるため、精度や使い勝手を確認してから導入できるのもうれしい。
(出所:COTOHA Translator公式Webサイト)
NTTグループ企業の株式会社みらい翻訳が、国立研究開発法人情報通信研究機構と共同開発したAI自動翻訳サービス。深層学習応用による次世代技術「ニューラル機械翻訳(NMT)技術」を活用し、単位や年号、人名など、日本語独特の表現も流暢に翻訳できる。
TOEIC960点超レベルの高い翻訳精度を実現。クラウド上でファイルをドラッグ&ドロップするだけで翻訳が完了する。更に、図表やグラフなど、プレゼンノートもデザインを崩すことなくテキスト部分のみ翻訳して置き換えが可能。日本語翻訳結果の「だ/である調」「ですます調」の指定・統一もできる。
オプションで、契約書・法務文書・財務諸表などを事前学習させた、分野特化型エンジンも提供。英語だけでなく中国語など25組の言語ペアにも対応。また、翻訳結果はすべて暗号化され、IPS/IDSといったウイルスチェックシステムを導入するなど、安全性の高さも強み。
(出所:Mirai Translator公式Webサイト)
和文英訳はプロ翻訳者レベル、英文和訳はTOEIC960点レベルの高精度なAI翻訳サービス。日中翻訳も人手翻訳と同等レベルの翻訳が可能。ビジネスコミュニケーションやテクニカル文書の翻訳のほかに、法務・財務関連文書の翻訳を想定した「法務・財務モデル」も提供。特許公報・明細書など特許書類特有の言いまわしにも対応した「特許モデル」も利用できる。
テキストを入力して翻訳するテキスト翻訳と、Word・PowerPoint・PDF・Excelなどのファイルのレイアウトや装飾を引き継いでまるごと翻訳するファイル翻訳に対応。また、ユーザー辞書機能や、メールの定型文・マニュアルの翻訳などに活用できる翻訳メモリ機能などカスタマイズ機能も充実。
ISO27001、ISO27017のセキュリティ要件に準拠し、多言語も含めてすべての翻訳処理を日本国内のサーバーで完結。翻訳終了後にデータは自動削除されるので、情報漏えいのリスクやAIの学習に二次利用されるリスクがなく安心。
(出所:T-4OO公式Webサイト)
「専門分野データベース」「御社専用データベース」の2つのデータベースを兼ね備えたAI翻訳サービス。大規模言語モデル(LMM)による生成AI翻訳に対応。文脈や背景を踏まえた自然な翻訳ができる。
「専門分野データベース」は、医薬や化学、IT、金融、法務、機械など、2,000分野から選択可能。国内外の公的文書やガイドラインなどから膨大な専門用語を収録。各企業の翻訳結果を蓄積する「御社専用データベース」は、社内表現や言い回しをAIが学習し、ユーザーに合った高精度な自動翻訳結果が得られる。PDF・Word・Excel・PowerPointなどのファイル翻訳に加え、WebサイトのURLからレイアウトを崩さずに翻訳することも可能。手間のかかる訳文の修正作業もブラウザ上で効率的に編集できる。
セキュリティ面においては、データ通信の際に暗号化システム(SSL)を採用。ISMS認証取得の設備により、不正なアクセスから保護される。
(出所:MTrans Team公式Webサイト)
「会社専用のデータベース」を持ち、使うほどに業界用語や社内用語の学習が進み翻訳精度が向上していくのが特徴のAI翻訳ツール。初期設定30秒で直感的に操作できるインターフェース。会社ごと、ユーザーごとに個別のデータベースで管理しているため、他社と翻訳情報を共有されることもない。更に、SSO(シングルサインオン)、IP制限やプライベートクラウド運用といったオプションサービスも用意されている。DeepL、Google、Microsoft、Papagoの翻訳エンジンを採用しており、35言語に対応。Word、PowerPoint、Excel、PDFなどのファイルで変換可能。
(出所:ヤラクゼン公式Webサイト)
シンプルなUIながら、使えば使うほど翻訳精度が向上する高性能AIを搭載した翻訳サービス。ファイル形式は、Word・Excel・PowerPoint・PDF・CSV・HTMLなどに対応。翻訳したいファイルをドラッグ&ドロップして言語を選ぶだけで、自動翻訳がスタート。翻訳後にテキストを編集し、元レイアウトそのままで翻訳ドキュメントをダウンロードすることで、スピーディーな編集チェック体制を構築できる。更に、Google翻訳やMicrosoft翻訳、Papagoといった複数の自動翻訳エンジンを標準搭載しているため、翻訳内容に応じた使い分けが可能だ。
また、翻訳データはアカウントごとに個別管理しており、他のユーザーや企業にデータが流出する心配はなし。オプションで翻訳APIを組み込むことで、Webサイトや自社システムの翻訳プロセスを自動化できるのも魅力。
多国籍な従業員への社内マニュアルやeラーニング環境の整備を目的とした場合は、翻訳機能を持つコンテンツ共有サービスを使うのもおすすめです。最後にそのようなサービスをご紹介します。
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(出所:ひかりクラウド スマートスタディ公式Webサイト)
コンテンツ言語変換オプションがあり、研修用に格納した教材を、受講者が指定した言語に変換できるeラーニングツール。英語、ベトナム語、韓国語、中国語、スペイン語、タイ語、ビルマ語、フランス語の8言語に対応している(日本マイクロソフト株式会社の提供するTranslator Text APIを利用して翻訳)。
多国籍の従業員に対して、研修の実施や社内マニュアルを共有したいときに、翻訳を気にせずコンテンツを格納するだけでOK。共有の円滑化や業務効率化が期待できる。このような課題感を持っている場合は、翻訳機能付きのコンテンツ共有プラットフォームの利用を検討するのも一手。
(出所:Clovernet多言語対訳支援サービス公式Webサイト)
対面、遠隔(オンライン)で利用できるリアルタイムの音声自動翻訳サービス。Web会議システムとの併用も可能。英語、中国語をはじめ30言語以上に対応している。専用機器は不要で、利用者が端末(PC・iPad)に向かって自国語で話すと、クラウド上の翻訳エンジンが内容を翻訳してテキストで相手の端末に表示する。
用途に応じて、「専用窓口(テキスト+音声+映像)」「リモートテキスト(テキストのみ)」のいずれかから選択可能。前者の場合は同時に2名まで、後者の場合は同時に最大20名まで利用できる。更に、Zoom等のツールと併用することで、Web会議でのコミュニケーション補助ツールとしても使用可能。ほかにも、窓口での外国人対応や外国人作業員を含めた安全講習会、外国語のウェビナー受講時など活用できるシーンは様々。
AI翻訳ツール・サービスは、ディープラーニング(深層学習)による高度な翻訳が可能、かつ機密性の高いデータを守るためのセキュリティ対策が十分に施されたクラウド型の自動翻訳です。今回は、グローバルに活躍する企業が自社のリソースで翻訳をせずに、外部のAI翻訳ツール・サービスを活用することのメリットと比較のポイントについてご紹介しました。
主な比較のポイントは、以下の3つです。
AI翻訳ツール・サービスはただの「翻訳マシン」ではなく、企業のボトルネック解消や業務効率化に役立ちます。各サービスを比較して違いを理解したうえで、自社に最も合ったものを選んでみてください。
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