最終更新日:2024-04-22
与信審査や取引先のモニタリングといった業務を効率化し、リスク回避を徹底したいと考えている方へ。与信管理システムの導入メリットや選び方、タイプ別でおすすめのシステムを紹介します。
与信管理システムとは、取引先の信用枠(貸し出しの上限金額)や売上債権残高などを一元管理するためのもの。取引先数や取引額が増加するにつれて、煩雑になっていく与信管理業務を効率化することができます。
従来の与信管理は自社で独自にデータを収集して分析したり、外部の調査機関に調査を依頼したりしていたため、「時間がかかる」「部署間で判断基準が統一されていない」など、様々な課題がありました。
与信管理システムを導入すれば、信用のおけるデータベース情報をもとに顧客信用リスクを同一基準で自動評価可能。与信限度額も自動算出でき、リスクの高い取引相手も事前にスクリーニングができるため、スピーディーに与信判断を行うことができます。また、反社会的勢力との取引も未然に防げます。
与信管理システムの主な機能には下記のようなものがあります。
取引先情報の自動収集 | 企業サイト、官報、業界専門メディアやSNSなどの様々なメディアから与信に関わる情報を自動収集。 |
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取引先情報の蓄積・一元管理 | 収集した与信情報や信用格付などをシステム上に蓄積し、一元管理する機能。 |
取引先の格付け (スコアリング) |
財務情報や企業情報といった公開データや予測年間倒産率などをもとに、信用格付を実施。信用状況がひと目でわかるように。 |
モニタリング、アラート | 取引先の企業情報や財務情報、格付情報などを自動でモニタリングし、変動があった際にアラート通知を行う機能。 |
その他に、下記のような便利機能も。
独自データベースの提供 | システム提供会社が独自に保有するデータベースから取引先を検索することで、より高精度な調査が可能に。 |
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反社チェックの実施 | 専門調査会社のデータベースを照会することで、効率よく、かつ信頼度のく反社チェックを実施できる。 |
与信限度額算出 | 取引先の信用格付と月商に応じて、取引金額の目安・上限を算出する機能。与信リスクの抑制に役立つ。 |
与信管理システムの主な導入メリットを3つご紹介します。
「取引先情報の自動収集」や「モニタリング、アラート」「独自データベースの提供」といった機能を使うことで、与信判断のスピード向上を実現。入手できる情報の質と量が上がるので、判断の精度も高くなります。
また、判断基準が明確になるので、与信判断の属人化や判断ミスの防止にもつながり、迷わず取引を進められるようになるでしょう。
取引先の基本情報や格付け情報などを紐付けて、データベース上で一元管理できるため、管理業務の大幅な効率化が見込めます。
更に、継続的な自動モニタリングやアラート通知といった機能を持つシステムであれば、信用力の下がった取引先に対して迅速な対応が取れるというメリットも。
ツールの導入によって、与信判断の基準が明確になったり、業務フローが整備されたりと、内部統制の強化が期待できます。また、与信管理の流れや判断基準を見える化することで、社員の意識向上、理解の深まりといった効果も見込めるでしょう。
与信管理システムは大きく3タイプに分けられます。それぞれの特徴と、適した導入目的について解説します。
新規取引先を選ぶ際の情報収集に強みを持つタイプ。新規取引先の企業調査に時間がかかりすぎている、与信判断の精度が低い、といった課題を抱えている企業におすすめです。
国内最大級約500万社超のデータベースを保有する「e-与信ナビ」や、1社あたり500円でできる“ワンコイン反社チェック”を提供している「アラームボックス」などが該当。豊富な情報提供を受けることで、スピーディーかつ精度の高い与信判断が行なえます。
取引先の情報をシステム上で一括管理して、与信管理プロセス全般を効率化したい場合に適しているタイプ。高精度の格付けや情報収集といった与信判断はもちろん、既存の取引先の与信情報の変動をモニタリングする継続管理にも対応しています。
該当するシステムに、格付けなどの変動に合わせて与信限度額を更新できる「Neuro Watcher」や三井物産の「SMART」、企業およびグループ企業全体の与信限度管理を最適化するオービックの「与信管理ソリューション」など。いずれも独自の信用格付システムが搭載されています。
スコアリングモデルの信頼性の高さに強みを持つタイプ。取引先をスコアリングすることで、客観的な基準で高精度な与信管理業務が行えます。
中小企業経営診断ツールの「CRD統合ツール」は、決算書データを入力するだけで一括スコアリングが可能です。これまで蓄積されてきた約100万社の企業データや、信用保証協会の保証料率決定にも利用されているCRDモデルを活用。信頼性の高い評価結果が得られます。
与信管理システムを選ぶ際に留意したい、3つの比較ポイントについて解説します。
資金未回収リスクを回避するためには、提供されるデータベースの信頼性や分析手法の充実度がポイントとなります。
たとえば「CRD統合ツール」は、国内最大規模の中小企業に関するデータベース機関で、非営利・非公益の会員組織である「CRD協会」が提供する中小企業経営診断ツール。全国100万社以上の企業データを保有しているうえ、第三者評価委員会による厳正なチェックをパスしていることから、高い信頼性を誇ります。その他にも、三井物産のリスクマネジメント・ノウハウをもとに格付けを行う「SMART」や、約500万社以上のデータベースを保有する「e-与信ナビ」なども。
また、「e-与信ナビ」の提供会社であるリスクモンスターは、提供するデータベースの品質保証として、モニタリング登録先が倒産した場合に見舞金を支払う債権保証サービス(オプション)を展開しています。
取引先の与信情報から限度額(与信枠)を算出したり、与信情報の変動に合わせて限度枠を更新したりする機能があると、与信判断のスピード・精度向上に役立ちます。
たとえば「Neuro Watcher」は取引先の信用格付と月商に応じて取引金額の目安を算出し、与信限度額計算に反映させられます。更に、格付けに変化のあった企業のみ抽出して、再格付及び与信限度額の再計算ができる機能も。
「SMART」は、オリジナルの与信限度額算出ロジック作成に対応。自社の業態や規模、与信方針に沿った適正与信金額が算出できます。
国内取引と海外取引とでは、商習慣や文化、リスクが異なります。そのため、海外企業との取引が多い場合は、海外取引先の与信管理への対応が必要に。
海外企業調査レポートの取得や海外企業格付の付与に対応している「SMART」や、世界各国の企業に関するエクスペリアンジャパンの統一評価レポートを取得できる「Neuro Watcher」などが選択肢となるでしょう。
審査時の判断材料に強みのある与信管理システムを2つご紹介します。
(出所:e-与信ナビ公式Webサイト)
国内最大級の500万社を超える企業データベースが利用できる与信管理システム。取引先や関連会社などの最新の企業情報に加え、過去5期分以上の財務データの変遷も確認可能。「RM(リスクモンスター)格付」や「RM与信限度額」「目標利益率」などの指標を参考にすることで、取引可否や与信額の判断を適切かつ迅速に行える。
同社は与信管理に豊富な実績・ノウハウを持っており、情報提供だけでなく、必要に応じてワンポイントアドバイスを行ってくれるのも特徴。「e-与信ナビ」のほかにも、「債権保証サービス」「与信管理研修サービス」などを展開しており、必要なサービスを組み合わせて導入することもできるのも心強い。
(出所:アラームボックス公式Webサイト)
クラウド型のシンプルな与信管理サービス。SNSやクチコミサイト、ニュース、業界情報、公的機関情報などから情報を収集し、ネガティブな評価の急落、支払い遅延、不正行為、退職者増加など取引の継続に影響を与え得る事象を広範囲でキャッチできる「アラーム」が特徴。
収集された情報は重要度に応じて3つのレベルに分類され、ユーザーのマイページ上で一覧表示。新たな情報取得時には登録メールアドレスに即時通知することも可能。取引先ごとに5段階の信用状況を表示することで、ひと目で資金回収リスクを判断できる。
取引先の管理に強みのある与信管理システムを3つご紹介します。
(出所:Neuro Watcher公式Webサイト)
金融機関の融資審査ノウハウを活かして、取引先の与信判断をサポートする与信管理サービス。取引先企業を「与信管理ファイル」に登録すると、社内の複数部署で一元管理が可能。予測年間倒産率による信用格付や与信限度額の算定、定期的なモニタリングの設定等を行える。それとは別に個々の取引先について、基本情報や財務諸表をその都度参照できるほか、過去データとの比較も可能。財務比率や当社独自の分析指標も充実しており、精緻な信用分析が行える。
情報が不足している場合は、東京商工リサーチ社へ低料金で調査依頼もできる。電話取材により必要な情報を迅速に収集できる点が特徴。
(出所:SMART公式Webサイト)
三井物産のノウハウを凝縮した取引先与信管理サービス。実務経験豊富なコンサルタントによる与信管理業務のサポート、オンラインツール「SMART 与信管理サービス」からの信用情報取得、三井物産が開発した統計的手法に基づく信用格付「MCC格付」、海外取引リスク管理ツール「CONOCER」といったサービスで構成されている。海外取引先の与信管理にも対応しているのが特徴で、CONOCERでは世界各国の企業の統一評価レポートを提供し、自社でリスク分析ができるように設計されている。また与信債務管理に関する研修も提供しているため、自社内のナレッジ・スキル向上も期待できる。
(出所:与信管理ソリューション公式Webサイト)
取引先の財務情報を効率的に収集し、的確かつ多面的な分析を実現する与信管理ソリューション。取引先企業の財務諸表データを自動収集・分析する機能があり、信用調査会社やEDINETのXBRLデータ(財務情報を転用するためのフォーマット)を活用できるほか、自社データとの比較・分析も可能。取引先の財務状況を的確に把握できる。
定量・定性評価に基づく信用格付機能もあり、外部モデルとの連携により精緻な格付を実現。この信用格付と取引先基本情報をもとに、与信判断業務の効率化と精度向上を図れる。
取引先企業に関するデータを集約したデータベースを構築し、グループ全体での一元的な与信管理もできる。与信申請業務も電子化してスピーディーな処理も可能。
スコアリングに特化した与信管理システムをご紹介します。
(出所:CRD統合ツール公式Webサイト)
国内最大規模の中小企業に関するデータベース機関「CRD協会」が提供する、中小企業経営診断ツール。財務データに基づいて中小企業や個人事業主の信用力を点数化した「スコアリング」を行う機能を搭載。統計的手法で構築したモデルを適用することで、客観的な信用力を定量的に測定できる。一括スコアリングにも対応しているため、審査業務の効率アップにもつながる。
全国の中小企業データとの比較分析が可能な「中小企業経営診断機能」では、簡易な操作で現状分析や将来シミュレーションができる。「決算データ異常値判定機能」では、決算書の粉飾リスクを判断可能。業界データとの差異から異常値を自動検知し、注意喚起を行う。CSV出力に対応している点も特徴。
多数の取引先を抱えている企業において、取引上のリスクを最低限に抑える与信管理業務は非常に重要なものです。しかし、新規取引先に対して的確な与信判断を下し、既存の取引先に継続的なモニタリングを実施するのは、担当者にとって大きな負荷になってしまいます。一方で、与信管理業務を軽視すると、取引先から思わぬ打撃を受けてしまう恐れが。
業務負荷を抑えつつ、高精度かつスピーディーな与信管理を行うために有効なのが、与信管理システムです。
与信管理システムは大きく3タイプに分類できます。
(1)審査時の判断材料に強み
(2)取引先管理に強み
(3)スコアリングに特化
上記のタイプを参考に自社の課題を見極めたうえで、最適なシステムを選ぶと良いでしょう。また、本記事でご紹介した3つの比較ポイントも、ぜひ参考にしてみてください。
自社にぴったりな与信管理システムを導入することで、与信判断の精度・スピードの向上、リスク管理の最適化、与信管理体制の強化など、様々なメリットが期待できます。
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