最終更新日:2024-10-25
煩雑な輸出入業務のExcel管理に限界を感じ、貿易管理システムの導入を検討している方へ。貿易管理システムの機能や導入検討時の比較ポイント、タイプ別のおすすめシステムをご紹介します。
貿易管理システムとは、仕入管理や外国送金、貿易書類の作成といった輸出入に関わる業務を効率化するためのシステムです。
多通貨での取引や船便の管理、各種ドキュメントの作成・管理など、輸入・輸出に関わる業務は煩雑かつ膨大。安全保障貿易管理への対応も求められます。そのため、事業規模が拡大していけば、いずれExcelでの管理に限界を感じるようになるでしょう。
こうした貿易業務の効率化に役立つのが、貿易管理システムです。
対外的な業務だけでなく、承認フロー設定や会計仕訳データの作成、原価管理など、社内業務の負担を軽減する機能が充実したシステムもあり、会社の収益力向上や内部統制の強化といった効果も期待できます。
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貿易管理システムのタイプによってできることは異なりますが、主な機能は以下のとおりです。
受発注管理 | 輸出業務では、受注契約書や注文書の発行、輸出数量の残管理などに対応。輸入業務では、注文書の発行や、発注数量に対する船積数量の残管理、為替予約の引当などに対応。 |
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仕入管理 | 輸出時は発注に対する入荷数量、輸入時には入荷予定情報の登録、為替予約の引当、通関依頼書の出力といった機能で、仕入管理を効率化。 |
出入金管理 | 輸出業務では、取引先からの入金情報をインボイス単位で消し込み、入金残・為替差額を管理。輸入業務では、支払予定データを支払単位に束ねて、支払残・為替差額を管理。 |
外貨対応 | 輸出入に伴う外貨での入金処理、支払処理時、為替差損益が確認できる機能。外貨による債権・債務の管理にまで対応したシステムも。 |
各種帳票の出力 | 包括保険対象一覧表や為替予約使用明細表、受発注入力明細票など、各種管理帳票の出力が可能。クラウド上で書類を管理できるシステムも。 |
在庫管理 | 入荷伝票や出荷伝票を登録することで、在庫情報を自動更新する機能。諸掛(入荷・在庫管理等の諸経費)を登録すれば、在庫単価の管理まで行えるものも。 |
文書管理 | 貿易書類や請求書を管理する機能。クラウド上で書類を管理できるシステムなら、ペーパーレス化やテレワークの促進にも役立つ。 |
貿易管理システムは、大きく次の3つのタイプに分類できます。
(1)受発注管理に対応するタイプ
(2)進捗管理や情報共有に強みのあるタイプ
(3)書類作成に強みのあるタイプ
それぞれの特徴や機能について解説します。
輸出・輸入業務における、受発注、販売、在庫管理、仕入管理、入出金管理などに対応しているタイプ。上記のような基本業務をシステムで一元管理することで、効率化を促進します。
「TOSS-SP」や「EX-TRADE」、「HarborWrite」などのシステムが、こちらのタイプに該当します。
取引の進捗管理や、関係者への調整連絡、書類共有といったやりとりを効率化できるタイプです。
たとえば「TradeWaltz」は、TOSS(受発注システム)とのAPI連携によって、貿易書類の情報をボタン1つで取引先に送信できるようになります。
また、「Shippio」は本船動静をリアルタイムで把握できるのが特徴。本船遅延が発生したら陸上輸送の変更手配を行うなど、素早い対応が可能に。更に、本船のステータス状況や、通関に必要な書類作成など、様々な業務をワンストップで行えるのも魅力です。
インボイスやパッキングリストなど、輸出入の手続きに必要となる書類の作成・管理に強みを持つタイプです。
「WATS for cloud」では上記の書類に加えて、Proforma Invoice(仮送り状)やOrder Confirmation(注文請書)、Shipping Instructions(船積依頼書)などの作成・管理に対応しています。
貿易管理システムの導入検討をする際に留意したい比較ポイントは、次の4つです。
(1)Excelとの親和性
(2)文書の共有方法
(3)自社業務にあったロットへの対応
(4)三国間取引への対応
それぞれ解説していきます。
取引先からの注文書などがExcelファイルで送付されるケースが非常に多いため、Excelとの親和性は重要なポイントです。
たとえば「HarborWrite」は、商品明細のExcel出力/取込機能を標準搭載。Excelの注文書を取り込んで発注書を自動で作成できるため、大幅な業務効率化が見込めます。
また、「EX-TRADE」もExcelファイルのインポート/エクスポートに標準対応。既存の帳票フォーマットに合わせて、文字サイズやフォントの変更、表示項目の変更や行数の変更、画像の追加といったレイアウト設定ができます。
インボイスやピッキングリストをはじめ、輸出入業務に必要な書類は多数あります。そのため書類の作成に加えて、関係者との共有作業の効率化も欠かせません。
書類共有に強みを持つシステムに、文書管理画面からメールの立ち上げ・ファイル添付できる「TOSS-SP」や、システム上でのファイル共有やコメント付与ができる「TradeWaltz」など。更に、「TradeWaltz」には複数の書類を関連付けて、一緒に添付・保管できる機能が搭載されています。
在庫管理をするにあたって、ロット管理に加えて、食品であれば消費期限管理、アパレルであればカラーやサイズの管理が必要になるでしょう。
「EX-TRADE」は、ロット・消費期限管理、カラー・サイズ管理に対応しています。
海外から輸入した商品を他国へ輸出するのが三国間貿易(取引)。取引相手が増えるため、通常の取引よりも業務が煩雑になったり、進捗確認が難しかったりします。
「TOSS-SP」や「HarborWrite」のように、三国間貿易に対応するための機能が搭載されたシステムなら、業務負荷の低減が可能。「TOSS-SP」は仕入と売上のデータ連携、「HarborWrite」は為替予約の引当や三国間船積などに対応しています。
受発注の管理に対応した、おすすめの貿易管理システムをご紹介します。
(出所:TOSS-SP公式Webサイト)
7,400社以上の導入事例をもとに輸出・輸入業務をフルサポートする、輸出・輸入・販売・購買・在庫管理システム。販売モジュールと購買モジュール、在庫モジュールで構成されており、海外輸出入と国内での仕入・販売の両面に対応した販売・購買管理や、ロット別での在庫管理などに対応している。インボイスの発行や経費込みの原価の自動計算、在庫自動引当など、業務効率化に役立つ機能も充実。
また、購買モジュールの仕入(輸入)から販売モジュールの売上(輸出)へ、在庫モジュールを経由してデータ連携することで三国間貿易への対応に対応している。承認フロー機能や権限管理機能など、内部統制の強化につながる機能も搭載。
(出所:EX-TRADE公式Webサイト)
貿易・国内販売を一元管理し、煩雑な受注・出荷・在庫管理業務を効率化する貿易管理システム。インボイスやパッキングリストといった貿易書類の作成をはじめ、すべての一覧画面からのExcel出力、船積管理など、基本業務機能が充実している。ロット、消費期限、カラー・サイズ別の在庫管理に対応しているので、食料品やアパレル製品の管理に強みを持つ。また、売上分析表や仕入集計表など、様々な帳票の出力・分析ができるので、「経営の見える化」の実現にも貢献する。
その他にも、多言語対応やワークフロー承認機能、為替差損益の自動計算、会計ソフトとの連携など、業務効率化機能が多数そろう。
適格請求書の発行や電子帳簿保存法への対応など、改正された法要件を満たすための機能も搭載。
(出所:HarborWrite公式Webサイト)
見積・受発注・輸出書類作成・入金といった基本業務機能に加え、三国間機能、安全保障貿易管理、NACCS連携にも対応している貿易管理システム。輸出入における見積入力から入金・支払い管理までのフローに加えて、各種管理帳票の出力や為替予約、アプリケーションドラフトの出力などに対応している。
また、税関システムNACCSから許可情報を取得すれば、照会機能からの検索や許可書イメージの出力ができるように。インボイス情報と紐づけ管理することで、通関情報を用いた実績管理も可能。
ライセンス買取とクラウドの2タイプを提供しているほか、実機もしくはクラウドでの導入環境の準備代行に対応している。必要な機能だけ選択してシステムを構築することもできる。
(出所:PORTNeTシリーズ公式Webサイト)
クライアントサーバー型、Webブラウザ型、クラウド/SaaS型の3タイプで提供されている貿易業務管理システムシリーズ。輸出業務管理システムの「PORTNeT/EX」、輸入業務管理システム「PORTNeT/IM」、輸入商品販売在庫管理システム「PORTNeT/SX」の3製品がそろう。
「PORTNeT/EX」は輸出管理をメインに、輸入・三国間・国内の各取引を一元管理。貿易書類の作成や受発注管理、スケジュール管理、売掛・買掛管理に対応している。また、「PORTNeT/IM」は輸入業務に特化して、POの作成や発注残管理、入荷予定管理、輸入にかかる諸掛の按分などが可能。「PORTNeT/SX」では、未通関在庫や諸掛込みの在庫管理、国内向けの出荷や請求書の発行などに対応している。いずれもWebブラウザ型やクラウド/SaaS型なら、インストール不要で手軽に導入できる。
(出所:TRADINGシリーズ公式Webサイト)
貿易管理・輸出入管理・国内在庫販売管理に対応したクラウド型パッケージシステム。輸出入全域をサポートする輸出入在庫販売管理システムの「TRADING-SD」をはじめ、輸入在庫販売管理システムの「TRADING-IS」、輸入業務のみ対応した「TRADING-IM」、輸出管理システムの「TRADING-EX」、輸入帳票作成のみ対応した「TRADING-EL」など、必要な機能のみを選択して利用可能。豊富な標準機能のほか、カスタマイズにも柔軟に対応できる。
統合版の「TRADING-SD」では、一連の貿易管理業務に対応しているのはもちろん、権限設定といった内部統制機能、外貨・邦貨でのBI分析ツールなどを搭載。更に、ほとんどの会計システムとも連携できるので、他業務の効率化促進も実現する。
(出所:アラジンオフィス公式Webサイト)
導入社数5,000社を超える実績を持つ販売管理・在庫管理システム。豊富な機能に加えて、業種ごとに必要機能を搭載したパッケージ版が用意されているため導入負担が低いのが特徴。
販売管理・在庫管理以外のオプション機能も豊富で、貿易管理機能もその一つ。輸入・輸出両方の機能を備えており、いずれか一方の機能のみの利用も可能。国内取引は円、国外取引は外貨で入力でき、外貨建ての取引は都度円換算されるため、面倒な集計・計算の必要がない。輸送方法マスタ、建値マスタ、決済条件マスタなど、海外取引に関連するマスタが充実しており、ワンシステムで国内外の取引を一元管理可能。
進捗管理や情報共有に強みを持つ、おすすめの貿易管理システムをご紹介します。
(出所:TradeWaltz公式Webサイト)
貿易実務の完全電子化によって、業務の可視化・効率化を実現する貿易プラットフォーム。ブロックチェーン技術を活用することにより、荷主・物流・銀行・保険・船会社など全貿易関係者の間で一気通貫の情報共有ができる。
各タスクのステータスを一覧表示したり、コメント付きで書類のやり取りをしたりと、進捗管理や情報共有の効率化に強みを持つ。PDFやExcelなど、様々な形式の関連書類を紐づけて保存することも可能だ。また、業務の電子化によって、書類関連の作業時間とコストをおよそ44%削減したという実績あり。貿易実務者のリモートワーク促進にも役立つ。
(出所:Shippio公式Webサイト)
本船動静の自動更新、見積もり・発注、貿易書類や請求書管理、納期調整を一元管理できるクラウドサービス。デジタルフォワーダー業を手掛ける株式会社Shippioが提供しており、同社にフォワーディングを依頼すればクラウドサービスは無料で利用できる。
マイルストーンやマップを使って、タスクの進捗や本船位置を可視化するシップメント管理機能や、クラウドサービス上での見積依頼、各種書類のクラウド管理など、進捗管理や情報共有を効率化する機能が多数そろっている。また、外部倉庫や海外現地法人にもアカウントを付与すれば、関係各所とのやり取りもShippio上で完結。貿易業務量を約50%削減したという事例あり。
書類作成に強みを持つ、おすすめの貿易管理システムをご紹介します。
(出所:WATS for cloud公式Webサイト)
貿易書類の作成からデータ管理までをカバーする、輸出入業務支援パッケージシステム。インボイスやパッキングリスト、船積依頼書など、通関に必要な書類を簡単に作成できるのが特徴。石材や食品、自動車部品、キャラクターグッズなど、様々な商品の取引に使われている。同時アクセス数に制限がないので、導入後に業務担当者が増えてもそのままのコストで利用可能。オンプレミス版とクラウド版の2タイプが用意されており、クラウド版は3日ほどで環境構築できる。基幹システムとのデータ連携が豊富で、他業務の効率化につながるのも魅力。国内販売管理にも対応。
事業規模が大きくないうちは、ExcelやAccessでも貿易業務を管理することができるかもしれません。しかし、規模の拡大に合わせてシステム導入による業務効率化が必要となるでしょう。
貿易管理システムを導入すれば、必要書類の作成や受発注の管理、在庫管理、進捗管理といった様々な業務の効率化が可能。40〜50%もの業務時間削減に成功したという事例もあります。
自社にあったシステムを導入するには、まず本記事でご紹介した以下の3つのタイプから、導入目的にあったものを選びましょう。
(1)受発注管理に対応するタイプ
(2)進捗管理や情報共有に強みのあるタイプ
(3)書類作成に強みのあるタイプ
その上で、「Excelとの親和性」「文書の共有方法」「自社業務にあったロットへの対応」「三国間取引への対応」といった比較ポイントの中で、外せない機能が搭載されたシステムを選ぶとよいでしょう。
最適な貿易管理システムを選ぶことで、業務の効率化やコスト削減、更なる事業規模拡大などが期待できます。本記事を参考に、ぜひ貿易管理システムの導入を検討してみてください。
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