テスト業務の効率化を進めたいQA(品質保証)部門の担当者や、Excelでのテスト管理に限界を感じている方へ。自社の環境にマッチしたテスト管理ツールを選ぶための情報として、テスト管理ツールの概要や機能、比較ポイントを、おすすめのツールとともに紹介します。
テスト管理ツールとは、ソフトウェアテストにおけるテストケースやテスト結果の管理を効率化するためのツールのこと。主にQA(品質保証)に関わるスタッフに利用されています。
Excelを用いて手動でテスト管理を行なっている場合、「リアルタイム結果と誤差が生まれる」「フォーマットが管理者によって異なり同時編集がしづらい」「膨大なデータの管理が難しい」といった課題が生じ、管理が煩雑になりがちです。
テスト管理ツールはテストケースや障害の管理、進捗状況といった、テストに関わる情報を一元管理。煩雑な作業を効率化・時短することで、これらの課題を解決します。管理者の負担を減らして、商品やプロジェクト品質の高度化にも役立ちます。
ツールによって差はありますが、テスト管理ツールの主な機能は以下の通りです。
テスト管理 | オンラインやクラウドを利用し、リアルタイムで進捗や不具合状況を管理 |
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テストデータの一元管理 | プロジェクトごとの管理や検索機能により、欲しい情報を素早くキャッチ。テストケース重複の防止にも便利 |
テストレポートの作成・出力 | 手間のかかるレポートを簡単に作成。納品物として提出可能なExcel形式での出力にも対応している |
テストケースの再利用 | ExcelやWordのデータを登録した過去のテストシートを再利用。短期間に同様のケースを複数回テストするプロジェクトで役立つ |
既存のテストケースのインポート | CSVやExcel形式で保存されているテストケースをインポートする機能。一括取り込みに対応したツールも |
また、後述の「テスト管理ツールの比較のポイント3.プロジェクト管理ツールとの連携性」で詳しく説明しますが、テスト管理ツールと外部ツールを連携することで、さらなる業務効率の向上が見込めます。
たとえば「TestRail」はプロジェクト管理ツール「Jira」との連携に対応。テストの実施日時、担当者、テスト時間の計測、テスト結果といったデータを「TestRail」上に記録し、バグが発見された際には、Jira Softwareチケットとテストケースが自動で関連付けされます。
テスト管理プロセスの効率化や、外部委託先との情報共有の円滑化を進めたい場合には、このような連携機能にも注目してみてください。
自社の環境に適したテスト管理ツールを選ぶための比較ポイントを4つご紹介します。
検討すべきテストケースが多い場合、入力作業に時間や手間がかかってしまうのがネック。「CAT」や「TestMonitor」などに搭載された「テストケースの取り込み機能」を活用すれば、Excel上で作成したテストケースを丸ごと取り込めるので、作業の効率アップにつながります。
一括入力に対応していると、テスト結果入力においても作業スピードが向上。「CAT」は複数行のテスト結果を一括で記録できるため、入力の手間を省いて管理者の負担を減らせます。
普段の業務でExcelやスプレッドシートを使っている場合は、操作性が似たツールを選ぶのがおすすめです。
たとえば、見やすさと操作性にこだわった「Qangaroo(カンガルー)」は、Excelに似たインターフェースを実装。情報の入力やセルのコピーなどをExcelと同様の操作感で行えるほか、既存のExcelシートからのコピー&ペーストにも対応しています。
同様に「CAT」もExcel感覚でテストケースの編集が可能。ExcelファイルやCSVファイルをドラッグ&ドロップするだけでテストの登録ができます。
プロジェクト管理ツールとの連携機能を備えたテスト管理ツールなら、バグなどの起票・共有やステータス管理を大幅に効率化できます。たとえば「Zephyr Scale」などのツールは「Jira」との連携に特化。
また、「Kiwi TCMS」のようなサードパーティプラグインタイプのツールは連携性が強く、「Jira」のほかに「Redmine」や「Bugzilla」、「GitHub」といった外部ツールとの連携・統合が可能です。
Jira以外のプロジェクト管理ツールを使っている場合は、「Redmine」や「Backlog」との連携に対応した「Qangaroo」や「Quality Tracker」などが選択肢に。テスト担当者とエンジニアの連携を円滑にします。
そのほかに、オールインワンQAプラットフォーム「Qase」のように、「Jira」や「Monday.com」「Asana」「Redmine」など、多くのツールとの連携に対応したツールもあります。
現在、テスト管理ツールの多くは、クラウド上で利用できるSaaS型が主流です。ただし、企業によってはセキュリティ・ポリシーの関係でクラウドサービスが使えないことも。
その際は、クラウド版・オンプレ版のどちらも提供している「TestRail」などのツールがおすすめです。
ここからは、おすすめのテスト管理ツールをご紹介します。
(出所:TestRail公式Webサイト)
Webベースのテスト管理ツール。シンプルかつ使いやすいUIによってテスト管理にかかわる情報を一元化する。テスト結果はリアルタイムで反映されるため、進捗把握や不具合の追跡などがその場で行える。
様々なバージョンや環境でテスト結果を簡単に記録。スクリーンショットなどのファイルを添付できるので、レポート作成がスムーズに。DevOpsパイプライン、テスト自動化フレームワーク、問題追跡ツールとの統合も可能だ。広範なAPIを活用して、理想的なテストツールスタックを構築できる。オンプレ版、クラウド版の両方を提供している。
(出所:Qase公式Webサイト)
高品質なソフトウェアをより迅速に提供するためのオールインワンテスト管理プラットフォーム。手動と自動それぞれによるソフトウェアテストや問題の追跡、レポート作成をスムーズに行える。リアルタイムで結果が得られるテストについては、ほかのツールに比べ60倍のスピードでテストを完了させた実績を持つ。
AIが10カ国語とフレームワークをサポートし、手動テストを自動的に変換する。受賞歴のあるUIはシンプルで使いやすく、社内の誰もがテストデータの分析ができるように。
99.9%の稼働時間で、予定された、もしくは予期せぬダウンタイムで作業が中断される心配が少ない。
(出所:CAT公式Webサイト)
リアルタイムかつ正確な品質管理を手軽に実現する、国産の統合型ソフトウェアテスト管理ツール。既存のテスト仕様書をそのまま登録できるため、製品・プロジェクトごとに体系的な管理が可能となる。カスタマイズ性に優れたダッシュボード上では、プロジェクトの進捗や障害の対応状況・報告などの確認が可能。加えて、機能・環境ごとの品質分析ビューやバーンダウンチャートによる品質・納期の可視化などができるため、テストの実施がスムーズに。
APIを活用したレポート作成やビジネスチャットへの定期レポートなどで、最適な情報共有基盤を実現する。また、Excelライクな操作感で使いやすいのも魅力。
(出所:Qangaroo公式Webサイト)
テスト管理手法を効率化し、チーム内での情報共有と円滑な調整をサポートするクラウド型テスト管理ツール。WordファイルやExcelファイル、画像、動画などのデータを、一つのテストケースに登録して一元管理ができる。個々のメンバーからプロジェクトリーダーまで、チーム全員がプロジェクトの現状を俯瞰して見られるため、円滑な進行につながる。BacklogやRedmineなどのバグトラッキングシステムと連携し、ツールに登録したバグは自動的に報告される。
徹底した見やすさと操作のしやすさで、テストの「見える化」を実現。Excelやスプレッドシートの使い心地に慣れており、操作性を保ったままテスト管理を行いたい方に特におすすめだ。
(出所:QualityForward公式Webサイト)
大規模で複雑なプロジェクトにも対応可能なテスト管理ツール。快適で正確なテスト管理を実現する機能群によって、リアルタイム結果との誤差、テスト項目のフォーマットの不統一、派生バージョンの管理が煩雑化といった課題を解決する。
多角的に分析できる豊富なレポートには、テスト項目の網羅とテスト結果のPASS率が把握できる独自の「カバレッジパネル」機能を搭載。ほか、長期的に流用できる統一されたフォーマット、タグ機能や検索機能などによるテストケースの管理といった機能がそろう。また、ウォーターフォール型開発やアジャイル型開発と様々な開発モデルに対応。大規模、分散、並列のいずれかに当てはまるテストチームに特に適している。
(出所:Quality Tracker公式Webサイト)
テスト実行時の進捗管理や、テストケース管理の一元化・見える化に使えるテスト管理ツール。進捗計算にEVを採用したEVM(Earned value management)の手法によって、テストの正確な進捗状況を見える化する。
テストケースをクラウド上で管理することで、テストケースをチーム内で繰り返し利用可能。属人化しない効率的なテスト実施を実現する。テストラン単位でのテストの実施計画の作成や、ローカルで作成したテストケースのインポート、信頼度成長曲線、テスト進捗、チケット(不具合)など、各視点での進捗状況の確認も可能。
(出所:PractiTest公式Webサイト)
90カ国以上で利用されている、テストプロセス全体を管理できる総合テスト管理ツール。テストプロセスの各ステップを監視し、開発状況をリアルタイムで確認できるように。カスタマイズ可能なフィルター機能や、ダッシュボード、レポート作成機能で、進捗状況の透明性を確保する。
テストケースはシステム上から直接入力するほか、スプレッドシートやExcelからのインポートにも対応。また、Jira Software、Slack、ClickUPなど、既存のサービスやワークフローと簡単に連携できる。バグトラッキングシステムと管理システムを統合した管理リストを用いて課題を監視し、正確かつ効率的にテストを管理する。
(出所:Tricentis qTest公式Webサイト)
あらゆる種類の自動化戦略を柔軟にサポートする、拡張性の高いテスト管理ソリューション。アジャイルチーム向けに構築されたテストケース管理、テスト自動化管理、レポート、分析といった機能で、よりスマートでスピーディーなテストを実現。ソフトウェア配信目標の達成に貢献する。
バージョン管理機能では常に履歴を記録し、新しいバージョンが承認されるとテスト担当者に通知。適切なテストケースや、失敗したバージョンを把握する。また、JiraやSelenium、Jenkinsなど、複数の外部ツールと統合可能。
(出所:TestMonitor公式Webサイト)
シンプルな操作性と包括的な機能で、ソフトウェアテストを効率化する管理ツール。初心者でも直感的に使えるよう設計されたUIが特徴で、要件定義からレポート作成まで一元管理できる。複数のプロパティや記録を一度に編集できるバッチ編集機能により、大規模プロジェクトでも効率的なテスト管理を実現。豊富なレポーティング機能やダッシュボードを搭載し、プロジェクトの可視化や生産性の向上に貢献する。ユーザーごとに役割・権限を設定できる認証機能を備えているのも便利だ。
JiraやAzure DevOps、Slackなどとの統合にも対応。リスク管理・トレーサビリティ機能で問題の迅速な特定と修正をサポートし、品質向上に役立てられる。
(出所:QMetry公式Webサイト)
アジャイルチームのためのテスト管理プラットフォーム。AIを用いたQQBot機能を搭載しており、テストケースの重複の予防、予測カバレッジなどが可能に。テストの効率化と再利用性の向上が見込める。
ダッシュボードからは、実行の進捗状況やクエリベースのカスタムレポートなどが把握できるほか、要件とテストフェーズの成果物の紐づけが可能。関連する設計項目やテストケースやエビデンスを追跡できる。加えて、バグ分析やターゲットと実際の実行、ビジュアルレポートの作成にも対応。
また、JiraやAzure DevOpsなどのツール、一般的なCI/CDプラットフォーム、自動化フレームワーク、バージョン管理システム、様々なデバイスクラウドとシームレスに統合できるのも強み。
ここでは、Jiraとの連携に強みを持つツールをご紹介します。
(出所:Zephyr Scale公式Webサイト)
Jiraプラグインのテスト管理ツール。Jiraユーザーインターフェースと緊密に統合されているため、問題やテストケース、サイクル、計画間で、エンドツーエンドのトレーサビリティを維持できる。テスト設計段階での冗長性と重複を削減し、大規模なテストケースライブラリの再利用性を向上させられるという強みを持つ。
また、70以上のクロスプロジェクトレポートや60のガジェット、60のConfluenceマクロにアクセス可能。無料のREST APIを介してオープンソースのテストツールを統合することで、Jira内でスケーラブルかつパフォーマンスの高いテスト管理ができるように。
最後に、無料で利用できるオープンソースソフトウェアをご紹介します。
(出所:TestLink公式Webサイト)
Web上でテスト工程を一括で管理できるシステム。テストの実行結果を記録し、テストケースやテストスイート、テスト計画、テストプロジェクト、ユーザー管理、レポートや統計情報の提供を行うプラットフォームとして活用できる。日本語に対応しており、GPLライセンスに基づいた運用が可能。
テストケースの管理やテスト進捗の把握のほか、テストチーム内の役割設定、テストケースごとの担当割り当て、テストプロジェクトごとのユーザー管理にも対応。JIRA、Bugzilla、Trac、Redmine、FogBugzなど、様々なバグトラッキングシステムと連携できる。
(出所:Kiwi TCMS公式Webサイト)
手動および自動テストに対応したオープンソーステスト管理システム。テスト計画とケースを作成し、進捗状況を追跡。複数のチームに作業を割り当てられるテスト管理機能のほか、製品リリース前のテレメトリのテストにも対応している。
JSON-RPCとXML-RPC経由で外部APIと連携。フルアクセスが提供されることによって、自由度の高いテスト環境の構築が可能に。また、アプリを介して、ソフトウェア開発のプラットフォーム「GitHub」との追加統合もできる。
有料サポートサービスとして「Kiwi TCMSエンタープライズ」を提供。
ソフトウェア開発におけるテスト管理を円滑化・効率化し、管理者の負荷削減に役立つのがテスト管理ツール。自社の環境に適したテスト管理ツールは、以下の4つのポイントで比較します。
特に「3.プロジェクト管理ツールとの連携性」に関しては、現状利用しているツールに対応しているか入念に確認し、開発環境に即してカスタマイズできるか検討する必要があります。
手間と時間のかかるテスト管理をツールによって効率化し、より質の高いプロダクトをスピーディーに開発するための環境を構築していきましょう。
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