法人税申告書の作成業務における、煩雑なデータ管理や決算書からの入力作業を効率化したいとお考えの方へ。法人税申告書作成ソフトの機能や選び方、比較ポイント、おすすめのソフトをご紹介します。
法人税申告書作成ソフトとは、決算データから法人税申告書一式を作成できるソフトのことです。会計ソフトで作成した決算報告書のデータを取り込んで、法人税や地方税を自動計算したり、データ連携で必要項目を自動入力したりできるため、効率的に法人税を申告できます。
特にセルフ申告の場合、申告書類を自社で作成することになりますが、「必要な帳票を判断して揃える」「足りない帳票をExcelで別途作成する」「決算書から転記する」など、手間も時間もかかります。入力項目は多岐に渡り、「どこになんの数字を入力すべきか」は知識がないと判断が難しく、書類不備があった際には該当箇所の検出~修正に対応しなくてはならないため、担当者にとって大きな負担になるのがネックです。
法人税申告書ソフトを利用すれば、手間のかかる処理やエラーチェックまでを自動化。基礎データを入力・連携するだけで、専門知識がなくても簡単に申告書を準備できます。最近では、申告までを効率化できる電子申告に対応するソフトもあります。
なお、この記事では、顧問先の申告業務を請け負う会計事務所向けではなく、企業の経理・財務担当者が自社で法人申告書の書類を作成するためのソフトをご紹介します。
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法人税申告書作成ソフトの主な機能をご紹介します。
会計システムで作成した決算データと自動連携するだけで、提出が必要な帳票を自動判定する機能。
法人税・地方税の申告書を自動作成する機能。会計システムで作成した決算書のデータから必要な項目を自動連携して入力できるため、入力もれや転記ミスを防げます。「税理士いらず」のように、決算仕訳を自動作成できる簡易的な会計ソフト機能を内蔵したものもあります。
そのほか、以下の書類の作成にも対応していることが一般的です。
e-Tax(イータックス)・eLTAX(エルタックス)に対応したデータ形式に変換する機能を備えたものなら、電子署名の付与、申告データの送信、送信データの受付結果等の確認までシステム上で完結できます。また「freee申告」のようにCSV形式でインポートせずにシームレスに送信できるソフトもあります。
自社で会計業務や申告書作成を行ううえで、役立つ情報を確認できる機能。たとえば、手順・注意点、用語解説や最新の税制改訂情報などがあり、ソフトによってはその都度ガイドが表示されるものもあります。
具体的には次のような機能が搭載されています。
法人税顧問 R4 | ポータルメニュー「Eiボード」で、最新の税制改定情報や必要な内容を業務開始前に確認したうえで申告書を作成できます。 |
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freee申告 | 手順操作や、目視チェックするポイント、手入力する箇所を示した「freee申告の使い方ハンドブック(PDF)」を提供。そのほか操作方法のセミナーも。 |
全力法人税 | 入力項目箇所にポップアップでガイドが出たり、解説ページにすぐに移動できたりします。節税や用語の基礎知識の確認が一画面で行えます。 |
法人税申告書作成ソフトには、2つのタイプがあります。既存の業務フローにあったタイプを選択すると良いでしょう。
シリーズ展開の財務・会計システムとセットで利用するのを前提としていたり、ソフト内に会計システムが付属していたりするタイプ。会計から申告までワンシステムで行いたい場合におすすめです。
たとえば、「freee申告」なら、同シリーズの「freee会計ソフト」から決算データを自動連携でき、必要な書類は自動選択してくれるので、データを整形する手間も発生しません。決算前の確認作業や修正業務を効率化できる「決算サポートアプリ」もあり、正確性が高い決算書を作成できます。
他社の会計システムと連携することを前提に申告書の作成に特化したタイプ。既存の運用方法を変えずに、申告書作成機能だけを導入したい場合におすすめです。
たとえば、「全力法人税」は、弥生会計やfreee、マネーフォワードなどの会計システムと連携可能。必要な数値は自動取得でき、自動計算にも対応しています。基本情報や決算書の情報を取り込むだけで、法人税申告書を作成できるため、入力業務を大幅に削減できます。
法人税申告書作成シフトの比較ポイントをご紹介します。
すでに利用している会計システムがある場合は、スムーズに連携できるのかを確認したうえで導入を検討しましょう。連携できたとしても、データ整形をしないと会計データを取り込めないと手間がかかります。
たとえば、「法人税の達人」は、同シリーズの「減価償却の達人」のほかにも幅広いメーカーの会計ソフトや給与ソフトとの連携に対応。各社のソフトと連携できる連動コンポーネントを提供しており、会計ソフトを選ばず利用できる汎用性が魅力です。
自社で必要な書類を確認したうえで、法人税に関する幅広い帳票にどこまで対応できるのか、導入後すべてカバーできるのかの2点に注目しながら選びましょう。
たとえば、「法人税の達人」は、e-Tax、eLTAXで申告できる法人税の帳票のうち、98%の帳票に対応しています。利用度が低い別表もカバーしているため、一部Excelで作成することなく、スムーズに申告書を作成できます。
「法人税顧問 R4」は、法人税、地方税の約290種類の別表作成が可能です。同社の「財務会計 R4」や「減価償却 R4」と連携することで、法人税・地方税申告書はもちろん、納税一覧表、事業税・都道府県民税、市町村民税の内訳明細書にも対応可能に。翌期予定納付額の把握もできて便利です。
法人税申告書ソフトは自力で作成することを前提として設計されているものの、十分な知識がないまま作成から提出までの工程を完結するのは不安が残るものです。ソフトによっては、税理士が相談に応じてくれるプランもあるので、必要に応じて導入を検討するといいでしょう。
たとえば、「freee申告」の「申告後もあんしんプラン(1,583円/月)」なら、税務調査が発生してもfreee認定アドバイザー税理士が最大30時間まで事前準備から事後の修正申告までサポートしてくれます。万が一、税務調査の対象になっても安心して対応できます。
(出所:ASP1000R公式Webサイト)
消費税・法人税・地方税の申告書作成から電子申告までワンストップで行える法人電子申告システム。システムメニューに沿って処理を進めるだけで申告業務が終了。前回の処理データを引き継ぎつつ、複数人での入力分担ができるため、作業重複をなくして効率的に進められる。税効果に関する注記資料や各種件投票を含む190種類以上の帳票出力も可能だ。
全国の都道府県・市町村の税率・均等割の最新情報を自動更新する「地方税率マスター」を搭載。法人税割・均等割の自動計算や月別の従業者数による分割基準の自動計算、事業所所在地の適用税率・均等割の自動判定に対応し、計算業務の負担も軽減できる。入力データの自動チェック機能や別表間の自動連携も利用でき、手入力による転記ミスや漏れ、誤りの防止も可能だ。
(出所:freee申告公式Webサイト)
freee会計利用者向け法人税申告書作成ソフト。利用の際には「freee会計」のアカウントが必須。決算データの自動連携や必要な帳票の自動判定が可能だ。freee会計の登録データをもとに決算前の確認作業をアシストする「決算サポートアプリ」を利用すれば、修正が必要な箇所や登録が必要な固定資産に関する取引の自動確認、勘定項目別の入力ミスの有無もスムーズに。
自動転記後の目視での確認や手入力が必要な箇所は、「使い方ハンドバッグ」を参考にすれば自力での対応も可能。税理士からのサポートを利用したい場合は、「申告後もあんしんプラン」への加入がおすすめ。e-Tax(国税)eLTAX(地方税)に連携した「freee電子申告開始ナビ」を介した電子申告にも対応。
(出所:法人税顧問 R4公式Webサイト)
法人税・地方税の約290種類の別表を作成可能。別表イメージ画面により、手書きに近い感覚で入力できる。利用頻度が高い別表は、「登録メニュー」に登録すれば画面を切り替えだけで作業できて便利だ。自動連携済みの箇所は色分けされるため、確認作業もスムーズに。地方税の計算も、設置年月日や廃止年月日の設定で細やかな対応を実現。税務基本項目比較表で、5期分の比較ができるのも魅力だ。
同シーズの「財務会計 R4」や「減価償却 R4」との連携も可能。ポータルメニューの「Eiボード(標準添付ソフト)」は、会計関連の最新情報の確認から税制改正対応の最新プログラムや辞書マスターの自動ダウンロードまでをカバー。「電子申告顧問 R4」と併用すれば、電子申告にも対応できる。
(出所:PCA 法人税シリーズ公式Webサイト)
中小企業様向けの法人税申告書作成ソフト。クラウド版とサブスク版(オンプレミス)がある。実際の申告書に近いスタイルで作成可能。自動連動機能や自動計算機能、自動転記機能搭載で、手入力や検算などの手間の軽減を実現。入力箇所や上書き可能箇所などを色分けすることで、業務の効率化も期待できる。
各別表や様式の進捗は一覧表ですぐに確認できるうえに、使用しない別表をメニュー上から削除することもできて便利だ。同シリーズの「PCA固定資産シリーズ」と連携すれば、別表十六の作成もスムーズに。電子申告にも対応。オンラインヘルプもあり心強い。
(出所:税理士いらず公式Webサイト)
小規模法人向けの会計ソフト機能を内包した税務申告ソフト。資本金1億円以下・事業所は一つのみで、複雑な申告調整がない、消費税は税込経理で処理を行なっている法人を対象に開発されている。
取引仕訳と前期の決算・申告情報を入力するだけで、決算書と法人税申告書一式を自力で作成できる。煩雑になりがちな決算仕訳は、当期の仕訳や前期の申告書を参照しながら自動作成されるため、計算ミスや転記ミスの防止にもつながる。正確な税額を計算できるのも強みだ。毎年改正される税制改正項目には、小規模法人と直接関係する部分のバージョンアップに対応。
(出所:法人税の達人公式Webサイト)
幅広い別表をカバーした税務申告ソリューション「達人シリーズ」の申告書作成ソフトのうちの1製品 。e-Tax、eLTAXで申告できる法人税の帳票のうち、98%を作成できる(Professional Edition、Standard Editionに限る)。帳票そのままの入力画面なら、手入力もスムーズに。不備があればアラートが出たり、追加事項が発生した場合はポップアップでガイドが表示されたりするのも魅力だ。
帳票作成に必要なデータは、ExcelおよびCSVでのエクスポートとインポートが可能(Professional Edition、Standard Editionに限る)。帳票作成もれなどの確認作業には、オンライン税務サービス「達人Cube」へログイン後、自動で一括チェックできる業務エラーチェック機能が有用だ。会計ソフトのデータ連携も充実。会計事務所向けに同シリーズの「データ管理の達人」がある。
(出所:全力法人税公式Webサイト)
法人税・地方税の自動計算に対応した、小規模法人に特化した無料のクラウド型ソフト。元国税調査官と税理士が監修。基本情報や決算書の情報を国税調査官の丁寧な解説を参考にしながら入力フォームに入力するだけで、法人税申告書を作成できる。別表に入力が必要な値も自動取得可能。
会計データの取り込みは、弥生会計、freee、マネーフォワード、会計王、 弥生会計オンラインが対象。会計データを決まった様式に整形すれば、ほかの会計ソフトでも取り込むことができる。すべての申告書を印刷できるのは有料版のみ。2箇所以上の事業所での利用はオプション料金(7,980円/年度)が必要となる。電子申告にも対応。
(出所:法人税申告お助けくん公式Webサイト)
中小・零細法人向けのデスクトップアプリ。3カ所以下の事業所で利用可能。年間利用費用がライセンス購入のタイミングによっては、5,000円以内に収まる手頃さが特徴だ。既存の会計ソフトの数値を手入力するだけで、法人税申告書一式が作成できる。
同社提供の会計ソフト「ニコラ会計」との連携のほか、無料ツール「お助けくん連携ツール」による他社の会計ソフトとの連携もでき、入力作業の半自動化を実現できる。ライセンスファイルの有効期限は、購入時から1年6カ月。1年目の申告時に購入すれば、次年度の申告時にも利用できるため、コスト削減にもつながる。
法人税申告書を自社でExcelやフリーソフトで作成して、提出まで行うのには、時間や手間がかかるばかりでなく、専門知識も必要です。
法人税申告書作成ソフトを導入すれば、システムが決算書をもとに数値を自動計算・自動入力するため、入力もれや計算ミス、転記ミスなどを減らしつつ、正確性の高い法人税申告書一式を効率的に作成できます。
法人税申告書作成ソフトは、以下の2種類です。
(1)会計システムとセットで提供するタイプ
(2)申告書の作成に特化したタイプ
すでに利用している会計システムをそのまま使うかどうかによって、自社に最適なタイプは異なります。
法人税申告書作成ソフトを選ぶ際は、財務や経理担当者にかかる負担の大きさや自社の現状を踏まえつつ、以下のポイントを比較しながら選んでみてください。
(1)財務・会計システムとの連携性
(2)法人税申告書の対応帳票率
(3)税理士によるサポートの有無
法人税申告書作成ソフトを導入すれば、煩わしくミスが起こりやすいデータ管理や必要書類の仕分け、提出といった手間と時間がかかっていた業務を最小限に抑えられます。小規模法人向けの価格設定や、無料から利用できるシステムもあるので、まずは手軽に試してみるのがおすすめです。
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