最終更新日:2024-07-23
毎月の給与計算や、年末調整業務の効率化をはかりたいと考えている方へ。無料(低価格)で使える給与計算ソフトの選び方や、無料で使える範囲とともに、おすすめのソフトを紹介します。
給与計算ソフトとは、従業員の給与支給額を自動計算できるソフトです。給与の支給額だけでなく、法律や自社の規定に基づいて、控除対象の社会保険料や所得税額などを自動計算。計算データを反映した給与明細書もワンクリックで出力できます。
給与計算ソフトには様々な種類がありますが、中には無料で利用できるものも複数存在します。ただし「無料でできる範囲」はソフトによって異なります。具体的には以下のようにタイプ分けできます。
タイプ | おすすめソフト |
---|---|
完全無料タイプ | 円簿給与 |
一定の人数まで無料タイプ | フリーウェイ給与計算 |
一定の人数まで+機能制限あり無料タイプ | ジョブカン給与計算、PayBook |
一定期間無料タイプ | 弥生給与Next |
本記事では、無料のほか、低価格で使える給与計算ソフトについて解説していきます。「給与計算を自動化したいけど、コストはかけられない」という場合はぜひお役立てください。
記事後半には、それぞれのタイプごとにおすすめのサービスも紹介していますので、「今すぐサービス選定に移りたい」という方はそちらをご覧ください。料金・コストだけでなく、「様々な観点から自社に合った給与計算ソフトを選びたい」という方は、「給与計算ソフト比較15選!規模別のおすすめと無料ソフトも」を参照してください。
給与計算ソフトをお探しの方は、こちらからサービス紹介資料をダウンロードいただけます。
まず、「給与計算ソフトを導入するとどのような利点があるのか」「具体的にどんな機能が搭載されているのか」について解説しておきます。給与計算ソフの導入メリットは、以下の通りです。
種類によって多少の違いはありますが、給与計算ソフトには以下の機能が搭載されています。
給与計算 | 基本給だけでなく、残業代や自社で定められた独自の手当も含めて給与の支給額を自動計算。支給額から控除される社会保険料や所得税額もあわせて計算する |
---|---|
給与明細書の発行 | 計算した給与情報を反映した明細書をワンクリックで出力。発行した明細はWeb上で配布できるので、一枚一枚印刷する手間が省ける |
各種改定事項の自動 アップデート |
たとえば社会保険料率(※)、所得税率の改定があった際に、改定後の料率を自動でアップデート。利用者側での設定変更は不要 |
年末調整 | 毎月の給与データと、年末調整のタイミングで従業員から回収した各種控除申告書の数値を入力して、所得税の過不足額を自動計算。計算値を反映した源泉徴収票は、従業員配布用と税務署提出用とを出力できる |
その他書類・帳票出力 | 給与明細以外にも、業務に必要な月額変更届(従業員の給与が変動する際に年金事務所へ提出する書類)や賃金台帳(従業員への給与支払い状況を示した台帳)などの書類を出力可能 |
マイナンバー管理 | 従業員のマイナンバーを登録・管理する機能。中には、メールでマイナンバーの入力と本人確認書類の送信を促す機能を搭載したソフトも |
給与振込データ作成 | 給与の計算が完了したら、FBデータ(従業員の給与振込額や振込先が反映されたデータ)を自動作成。FBデータをネットバンキングにインポートすれば、金額を打ち込む手間が省け、ミスなく振込ができるように |
※健康保険料率に関しては、全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率に改定があった際のみ、自動更新に対応しているソフトがほとんどです。健康保険組合(組合健保)の料率は各組合によって異なるため、改定があった場合は手動で対応する必要があります。
冒頭で述べた通り、給与計算ソフトによって「無料でできる範囲」は異なります。
タイプ | 特徴 |
---|---|
完全無料タイプ | 人数や機能、使用期間の制限なく無料で使えるタイプ。 |
一定の人数まで無料タイプ | 給与計算対象の従業員数が一定数までは無料のタイプ。 |
一定の人数まで+機能制限あり無料タイプ | 利用人数に制限があり、更に機能制限がかかっているタイプ。 |
一定期間無料タイプ | 一定期間という条件付きで無料で使えるタイプ。 |
人数や機能、使用期間の制限なく無料で使えるタイプ。「円簿給与」は、従業員数や利用機能、使用期間の制限がなしに無料で利用でき、年末調整まで対応しています。
給与計算対象の従業員数が一定数までは無料のタイプ。たとえば「フリーウェイ給与計算」は、従業員5名までなら機能制限なく無料で利用できます。6名以上で使いたい場合は、月額1,980円の有料版に切り替えられます。
利用人数の制限と機能制限があるタイプ。
たとえば「ジョブカン給与計算」は、従業員5名までは無料。ただし、無料プランは年末調整業務に対応しておらず、データの保証期間も30日に制限されています。月額400円/名の有料プランに切り替えれば、上記の制限なく利用可能。また、「ジョブカン年末調整」や「ジョブカン勤怠管理」など、同シリーズのソフトとのデータ連携もできるようになります。
「PayBook」は従業員10名まで、給与データの保存期間は3カ月間までなら無料で利用可能。月額1,100円のスタンダードプランに切り替えれば、データ保存期間・従業員数ともに制限なしで利用できるように。ただし、有料プランに切り替えてもソフト内で年末調整が行えない点には注意が必要です。
一定の期間無料で使えるタイプ。「弥生給与Next」は、無料トライアル期間が1年間と長めに設定されています。じっくり機能を試したい場合や、有料プランへの転換前提で、初年度は極力コストを抑えたい場合に適しています。
無料で使える条件を一覧にまとめてみると、以下の通りです。
給与計算ソフト名 | 概要 | 無料で使える条件 |
---|---|---|
円簿給与 | 従業員数に縛りがなく、給与計算から年末調整まで対応 | なし ※マイナンバーのクラウド保存、FBデータの出力、外部ソフトとのAPI連携には非対応 |
フリーウェイ給与計算 | 給与計算、年末調整のほか、マイナンバーのクラウド保存にも対応 | 従業員数5名まで |
ジョブカン給与計算 | 協会けんぽなどの健康保険料率、社会保険料率の改定にリアルタイムで対応 | 従業員数5名まで 年末調整非対応 データ保存期間30日間まで |
PayBook | アカウント登録すればすぐに利用できる。時給ベースの給与計算にも対応 | 従業員数10名まで 給与データの保存期間が3カ月まで ※有料プランに切り替えても年末調整には非対応 |
弥生給与Next | 給与計算、年末調整に対応。画面に表示される「やることリスト」に沿って業務を進められる | 使用期間1年まで (セルフプラン、ベーシックプランの場合) |
導入目的やユースケースごとに、無料の給与計算ソフトの選び方を解説します。
年末調整の機能は不要で、給与計算だけできれば問題ない場合は「一定の人数まで+機能制限ありで無料」タイプの「PayBook」がおすすめ。給与データの保存期間に制限がありますが、過去データをExcelファイルなどで出力して、別途保存しておけばカバーできます。
年末調整業務もソフト内で完結させたい場合は、「円簿給与」「フリーウェイ給与計算」が有力な選択肢となります。「フリーウェイ給与計算」の場合、一通り年末調整業務が終わった後、国税庁が運営する電子申告サービス「e-Tax」に取り込むデータファイルを出力できる機能を搭載。税務署への申告がペーパーレスで完了します。
毎月の給与計算や給与明細書の出力のほか、給与関連の業務をできるだけ効率化したい場合は、有料プランへの切り替え前提でソフトを選ぶのがおすすめです。
たとえば「弥生給与Next」は、年末調整に必要な控除申告書をWeb上で配布・回収できるため、記入済み用紙を集めて転記する手間が省けます。また、従業員が提出した申告書にもれやミスがあった際にWeb上で差し戻しできるのも便利です。
「ジョブカン給与計算」の場合、月額変更届を提出対象者がいた場合にアラート通知をするため、見落としを防げます。更に、どの機関へいつまでに書類を提出すべきかを案内してくれるToDoリストを表示する機能も。
10名以上の従業員の給与計算を自動化できる無料ソフトは「円簿給与」に限られます。毎月の給与計算だけでなく年末調整業務もカバー。無料でありながら、操作の不明点などの問い合わせに対応するフォームも設けられています。更に、同社提供のグループウェア「sufure」と連携すれば、オンライン打刻での勤怠管理や勤務表の編集まで行えるように。
しかし「円簿給与」は、マイナンバーのクラウド保存やFBデータの出力、外部ソフトとのAPI連携には対応していません。これらをカバーする機能が欲しい場合や、更なる機能の拡張を視野に入れている場合は、有料版の「フリーウェイ給与計算」「ジョブカン給与計算」「弥生給与Next」、もしくは後の章で紹介する「低価格で使える給与計算ソフト」が選択肢に。
たとえば「freee人事労務」には、従業員にリクエストメールを送信して、マイナンバー情報を簡単に収集する機能を搭載。また、マイナンバーは源泉徴収票などの必要書類に自動反映されるため、転記の手間も不要です。
「給料王」の場合、従業員データ・給与データをもとに、雇用保険離職証明書などの帳票出力も自動化。各種社会保険に関わる手続きを更に効率化できます。
従業員数や機能に制限なく、完全に無料で利用できる給与計算ソフトを紹介します。
(出所:円簿給与公式Webサイト)
ユーザー数無制限で、給与計算から年末調整まで対応するクラウドソフト。給与計算は、月給だけでなく日給や時給の計算にも対応。また、給与情報の入力後には「計算確定」ボタンでロックをかけて、勝手に修正できないよう保護できる。給与明細書は、PDF形式での出力が可能だ。
年末調整業務を行う場合には、従業員から回収した各種控除申告書の情報を手入力することで、源泉徴収票や給与支給報告書などが出力できるように。過去のデータの保存期間には制限なし。無料ながらもサポートサービスが用意されており、操作に関する不明点は専用フォームから問い合わせできる。
マイナンバーのクラウド保存や、FBデータの出力、外部ソフトとのAPI連携には非対応。別途、勤怠管理をしたい場合は同社提供のソフト「sufure」と連携すれば、タイムカードでの勤怠管理や勤務表の編集が可能に。
一定の従業員数までなら無料で利用できる給与計算ソフトを紹介します。
(出所:フリーウェイ給与計算公式Webサイト)
従業員5名までなら、無料で給与計算や年末調整を行えるソフト。各従業員の出勤日数、勤務時間や基本給を入力すれば、社会保険料や所得税が計算される仕組みになっている。割増率に応じた残業代も自動で計算できる。
ダウンロード専用のURLを記載したメールで給与明細書を送信できるので、印刷・配布作業が不要に。従業員に送信したURLは1週間で無効になるので、セキュリティ面も安心だ。年末調整も、従業員から回収した各種控除申告書の情報をソフトへ手入力していけば、自動で計算される。源泉徴収票や支払調書などの各種書類の作成もできるほか、e-Taxに取り込むデータファイルの出力機能もそろっている。
その他、マイナンバーは別ソフト「フリーウェイマイナンバー」と連動して管理可能。AWSを採用しているため、情報漏えいリスクの低減にも有効だ。
利用人数の制限と機能制限があるタイプの給与計算ソフトを紹介します。
(出所:ジョブカン給与計算公式Webサイト)
給与計算業務の負荷削減のために豊富な機能を備えたソフト。従業員数5名までなら無料で利用でき、協会けんぽ・ITS健保の健康保険料率や社会保険料率の改定にリアルタイムで対応する。通勤手当は自動で課税・非課税を判別するほか、支給上限額も設定可能。給与明細は、Web上で従業員に公開・配布できる。また、月額変更届の提出対象者がいた場合はアラート通知するため、見落とし防止に役立つ。その他、イレギュラーな計算が必要な途中入社・退職者に注意マークを表示する機能も搭載。
有料プランに切り替えると、「ジョブカン年末調整」や「ジョブカン勤怠管理」など同シリーズのソフトとの連携が可能に。
(出所:PayBook公式Webサイト)
税理士事務所が監修を手がけている、従業員数10名までなら無料の給与計算ソフト。Web上でアカウントを登録し、フォームに会社情報や従業員情報を入力するだけで初期設定が完了。PCだけでなく、iPadなどのタブレットでも利用できる。
画面に基本給を入力すれば、各種社会保険料などの控除額が自動計算される仕組みになっており、料率変更があった場合には自動アップデートを実施。また、給与は時給ベースでも入力でき、パートやアルバイトの多い職場での給与管理にも適している。
また、保存できる過去の給与データは3カ月分までなので、期間無制限で保存したい場合は有料プランに切り替える必要がある。なお、有料プランに切り替えても、年末調整の自動計算には非対応。
一定の期間、無料で利用できる給与計算ソフトを紹介します。
(出所:弥生給与Next公式Webサイト)
毎月の給与計算から年末調整まで、一気通貫で対応するクラウド型ソフト。オペレーターによるサポートが付く「ベーシックプラン」、サポートなしの「セルフプラン」であれば1年間無料で利用できる。
画面上の「やることリスト」に沿って給与計算を進められる仕様になっていることで、専門知識がなくてもスムーズに業務を進められる。計算データをもとに出力した給与明細書はWeb上で配布でき、従業員はPCやスマホから閲覧できる。年末調整業務に関しては、控除申告書をWebベースで配布・回収可能なのがポイント。記入済み用紙を集めてソフトに転記する手間が省けるほか、申告書に記入もれやミスがあっても、Web上で差し戻しできる。
その他、居住地などの基本情報に変更があった際は、従業員側からPCやスマホで変更申請が行えるため、社内手続きの効率化に役立つ。
最後に、比較的安価に利用できる給与計算ソフトを紹介します。 料金の目安はそれぞれ以下の通りです。
freee人事労務 | 月額2,600円/5名まで |
---|---|
ジンジャー給与 | 月額300円〜/名 |
給与奉行クラウド | 月額5,500円/20名まで |
給料王 | 40,000円/10万名まで(買い切り) |
その他、有料の給与計算ソフトに関しては以下の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。
給与計算ソフト比較15選!規模別のおすすめと無料ソフトも
(出所:freee人事労務公式Webサイト)
給与計算のデジタル化を促進し、ミス防止や作業時間削減を実現するソフト。上位プランを選べば勤怠管理や人事情報管理などがカバーでき、ミニマムプランでも月額400〜520円/名で給与計算に特化した機能が利用可能となる。勤怠情報をもとにした給与計算画面で、は各種社会保険料などの計算根拠が表示される仕様になっており、計算式の見直しが行いやすいだ。給与明細の電子データ出力、Web上での展開のほか、FBデータも作成でき、振り込みまでがスムーズに。加えて、月額変更届や賃金台帳などの各種帳票も一括出力できるなど、業務効率化に役立つ機能が充実している。
そのほかにも、従業員に送ったリクエストメールに情報入力してもらうだけで、マイナンバーをスムーズに収集する機能も。
(出所:ジンジャー給与公式Webサイト)
従業員の勤怠・人事情報をもとに、各種手当を含む給与を自動化するソフト。シンプルなUIが特徴で、ソフトが示すステップに沿って進めるだけで給与計算が完了する。また、給与体系ごとに項目名や計算式を設定できるため、従業員ごとの給与計算が不要に。給与データを一括で訂正したい場合も、処理月、雇用区分などの条件でデータをソートすればスムーズに修正できる。Web上またはPDFで給与明細書を配布できるほか、従業員への申し送りもあわせて共有可能だ。年末調整の計算機能が一通りそろっており、従業員に配布する源泉徴収票もWebまたはPDFで展開できる。
その他、同シリーズの「ジンジャー勤怠管理」を連携すれば、勤怠データの取り込みがよりスムーズに。
(出所:給料王公式Webサイト)
給与計算を含む労務まわりの業務をまとめて効率化するインストール型の給与計算ソフト。画面上のガイドに従って会社・社員情報を入力すれば設定が完了するという、立ち上げの簡便さが強み。給与計算においては、自社独自の手当や、手当に紐付く独自の計算式の設定が可能。目標達成率に応じたインセンティブの算出も簡単に行える。
また、年末調整業務もカバーしており、必要な項目を入力すれば源泉徴収票や給与支払報告書を自動出力。ほかにも、雇用保険の資格を喪失した社員に配布する「雇用保険離職証明書」などの出力にも対応しており、各種社会保険手続きの円滑化にも貢献する。
専用クラウドへデータを自動バックアップする機能を搭載しているため、PCトラブルによるデータ消失リスクにも備えられる。
(出所:給与奉行クラウド公式Webサイト)
給与計算や年末調整のデジタル化推進をサポートするソフト。正社員やパートなどの雇用形態が違う人材に対して、支給項目や計算式を分けて給与計算できるのが特徴だ。役職手当や住宅手当など企業独自の手当も反映可能。通勤手当に関しては、電車だけでなく算出が複雑になりがちな自家用車の計算にも対応する。また、前月に入力した内容をコピー・反映できるので、入力作業を最小限にとどめられるのも便利。年末調整に関しても、計算機能や源泉徴収票・賃金台帳など、必要な書類の出力機能が一通りそろう。
給与明細を電子化したい場合は、別途「給与明細電子化クラウド」を導入する必要がある。
給与計算ソフトを使えば、従業員の給与支給額や社会保険料、所得税額などを自動計算できます。また、ほとんどのソフトが給与明細書のPDF出力やWeb上での配布に対応しているため、印刷・配布の手間が省けて便利です。
しかし、特に従業員数10名程度の小規模な企業の場合、給与計算ソフトの利用によってかかるランニングコストが気になるもの。そこで今回の記事では、無料または低価格で使える給与計算ソフトを紹介しました。
無料で使える給与計算ソフトには、利用人数に関係なく無料のタイプ、一定の人数制限や機能制限が付いたうえで無料利用できるタイプなどがあります。また、ソフトによっても利用可能な機能に多少違いがあるので、本記事を参考にしながら自社に最適な給与計算ソフトの導入を検討してみてください。
給与計算ソフトをお探しの方は、こちらからサービス紹介資料をダウンロードいただけます。
給与計算ソフトのさらに詳しい選び方は、こちらの選び方ガイドをご覧ください。
給与計算ソフトの選び方ガイド
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