最終更新日:2024-03-26
顧客データの表記揺れや法人としての属性、行動履歴管理の不備などを解消し、質の高い顧客データベースを構築したい方へ。SFA・CRM・MAツールへの活用など名寄せツールでできること、タイプ別の選び方、比較ポイントとともにおすすめのツールを紹介します。
名寄せツールとは、SFA・CRM・MAなどの営業ツール、Webフォーム、名刺情報など、様々な経路から流入する顧客データを集約・整理し、営業活動に活用しやすくするためのツールです。
各種営業ツールとの連携前にExcelなどを用いて顧客データを整えている企業も多くみられますが、扱うデータが膨大だったり、部署や部門をまたいでいたりする場合は、専用ツールの導入がおすすめです。
名寄せツールなら、顧客データを取り込むだけで自動的に名寄せが完了。時間や手間をかけずに、データ品質向上や管理効率化が実現します。
名寄せとは、データベースの中にある重複したデータを、名前や住所、電話番号などの情報をもとに同一データとして1つに統合する作業のことです。
名寄せをしないと、データの不備や重複によって競合他社やパートナー企業などをリードから除外するのが困難だったり、特定の業種にアプローチやナーチャリングをしようとしても、リードを正確に分析・活用できなかったりします。その結果、「適切なタイミングでアプローチできない」「同じダイレクトメールを同一顧客に複数送付してしまう」といったミスが生じ、無駄なコストがかかるだけでなく、顧客からの信頼も失ってしまいます。
名寄せをすることにより、顧客データに正確な属性などが一括付与され、高精度なセグメントやデータ分析が可能に。顧客の実態をより正確に把握できるようになることで、効果的な戦略立案や、顧客との良好な関係構築にもつながり、売上向上も期待できるでしょう。
名寄せを行う前に必要な工程に、「データクレンジング」があります。データクレンジングとは、名寄せの前処理として、一定の基準やルールに則り、正確なデータに整える作業のことです。
ツールによっては独自のデータベースや辞書などを保有しており、それらと照合したうえで、データの最新化や不完全なデータの補完、表記統一などを行います。
本記事では、データクレンジングと名寄せをあわせて行えるツールを紹介します。
ツールによって差はありますが、主な機能は以下の通りです。名寄せの手順に沿って、できることを紹介します。
Excelで作成した顧客リストや、各種営業ツール(SFA・CRM・MA)などに散在する顧客データも一括で取り込めます。
一定の基準やルールに則り、住所や名称を最新の正しい情報に修正したり、足りない情報を補完したりして、データを整えます。独自データベースや各種辞書(電話帳データ、住所辞書、局番辞書、姓名辞書など)などを備えるツールもあります。
具体的には次のようなことが可能です。
クレンジング後のデータを、あらかじめ設定したルール(企業名・住所・電話番号が一致した場合、他項目が異なっても同一企業と判定するなど)で整理し、重複するデータを1つにまとめます。
一度構築したデータベースは、社名変更や合併、統廃合などの変化も自動メンテナンスにより反映されるため、常に最新の情報を利用できます。
ツールによっては、名寄せ後のデータに属性を付与してタグ付けやカテゴリ分けをしたり、活用しやすい形にリスト化したりが可能です。
たとえば、SalesforceなどのCRMと連携すれば、いつも使う画面上に、業界・売上・従業員数などの企業属性や特色、経営課題といった様々な企業データが集約され、ターゲット顧客の情報を素早く確認できるように。
顧客データを自動分析し、成約確度の高い企業を集めたリストを作成できるツールもあり、MAツールと連携すれば、リストをもとにしたセグメントメールの配信などが可能になります。
顧客データを取り込む前には、あらかじめデータの調査、品質確認をして、名寄せのルールを設定する必要があります。この設定はツールだけでは対応が難しい場合もあるため、データ管理やデータ処理に精通した専門家のサポートが得られると理想的です。
データが抱える課題を洗い出したうえで、企業ごとの目的やニーズに沿った最適なクレンジング・名寄せプランを提案してくれるサービスもあるので、必要に応じて検討するといいでしょう。
それぞれのツールが持つ強みによって3タイプに分かれます。どのような業務の効率化や精度向上を目指すかで選ぶといいでしょう。
SFA・CRM・MAなど、各種営業ツールからのデータ取り込みに強みを持つタイプ。部署や担当者によって使用しているツールが異なる場合も、情報を一元化して名寄せできるのがメリットです。名寄せ後のデータを各種営業ツールと連携し、活用したい場合におすすめです。
たとえば、「Sansan Data Hub」は、SalesforceやMarketoなどのCRM・SFA・MAツールに散在する社内の顧客データを、Sansan独自のAI技術を用いて一元化。帝国データバンクの企業データなどの外部情報ソースと連携し、会社情報に50超の情報を付与することで、付加価値の高いマーケティングに適したデータへと進化させます。
なお、名寄せ後に、成約確度が高い企業を選定してリスト化したり、作成したリストをそのままSFA・CRM・MAと連携して使えたりするこちらのタイプはABM(Account Based Marketing)ツールとも呼ばれます。
ABMの詳細は、「ABMツール比較7選。自社にあったタイプや選び方のポイントは?」を参照してください。
一般的な名寄せ・クレンジングツールでは処理しきれない種類のデータや、企業ごとの目的や要望に対応するために、カスタマイズしたツールやサービスを提供するタイプ。名寄せ後に、SFAなどの各種ツールとの連携も可能です。自社の課題やニーズに応じた柔軟なサポートを求める場合に適しています。
たとえば、「Data-Master®」は、顧客データの活用目的にあわせて必要な機能を追加したうえで、データクレンジングを行います。「部門ごとにバラバラに管理されていて把握できない法人リストを保有している」など、名寄せに際し課題を抱える企業に対しては、導入コンサルやデータ構造の明確化といった導入支援から、データクレンジング、データの補完、法人番号付与まで幅広くサポート。法人単位だけでなく事業所や支店単位でのクレンジング・名寄せにも対応します。
「Precisely Trillium」では、個人の名寄せはもちろん、世帯や法人の名寄せにも対応。また、定期的に名寄せルールの見直しを行うことで、名寄せ精度の継続的な向上を実現しています。
ダブルスタンダードの「データクレンジングサービス」は、企業の要件に合わせてシステム開発を行っており、名寄せ後のデータのシステム連携も可能です。API、CSV、データベース連携に対応しています。
合併先とのデータ統合など、数百万から数千万以上の大規模データの名寄せを行う際などに適したタイプ。独自システムで蓄積したデータなどがあり、一気に名寄せするのが難しい場合は、ステップを踏んでデータを加工しながら整理していくETLタイプを選択するといいでしょう。
たとえば、「DataStage」は、膨大な量のデータを処理する能力を備え、企業におけるデータ統合基盤(ETLツール)として利用できます。わかりやすいGUIによるビジュアル開発が可能で、システム拡張にも柔軟に対応できます。
ETLツールの詳細は、「ETLツールの比較12選!タイプ別に一覧化して紹介」を参照してください。
ツールのタイプ以外に、次の3つの観点で比較検討しましょう。
(1)マッチング処理の精度
(2)照合データの充実度
(3)データ活用支援の範囲
以下、一つずつ解説していきます。
AIやシステムによる自動マッチングは、大量のデータを迅速かつ効率的に処理できるのがメリットですが、複雑なケースや不規則なデータに関しては限界があり、処理しきれないこともあります。そのため自動マッチングでうまく対応できない場合などに、精度を維持するための機能やオプションが備わっていると安心です。
たとえば、「Precisely Trillium」は、項目ごとの類似度をスコアリングで評価し、「完全」もしくは「あいまい」のフラグ付けができます(「完全」「あいまい」の閾値は自由に設定可能)。「完全」と判断されたデータは自動名寄せ、「あいまい」と判断されたデータは手動名寄せというように、結果に応じて運用を振り分けることで、名寄せの精度を高められます。
「Data-Master®」は、機械処理でマッチングされなかったデータに関して、オペレーターの目検によるマッチング処理も用意(有償オプション)。人間の判断力を活かした、柔軟で丁寧な処理が可能です。
信頼性の高い顧客データ構築のためには、照合用データベースや利用可能なデータが充実している必要があります。
たとえば、「Valu∞」は、電話帳データベース、住所辞書、住所変換マスター、郵便番号辞書、局番辞書、姓名辞書、法人名辞書など、膨大な情報を統合して構築された自社製造の巨大データベースを活用することで、高精度なデータクレンジングを実現。更にオプションで、名寄せ後の顧客データに法人番号や企業の属性情報(業種・事業所・座標など)を一括処理で付加する「法人番号の一括付加サービス」も提供しています。
「Data-Master®」は、データクレンジングの工程で、上述の「Valu∞」の巨大データベースに基づくデータクレンジング技術を活用。更に、法人名や住所の表記揺れなどを吸収する独自の「法人シソーラス」とAI技術を活用した法人番号データベースとのマッチングを行い、顧客データへ正確な法人番号、登記法人名、登記住所などの付与が可能です。
法人番号を顧客データに付与することで、名寄せの効率化や顧客データのタイムリーな更新、社内外のサービス、システムとの連携が可能になるなど、様々なメリットを享受できます。たとえば、法人番号に対応する財務情報サービスと連携し、リードから財務状況の良い企業などを紐付けて抽出するといったことも簡単にできるようになります。
「uSonar」は、日本全国約820万拠点の事業所に、11桁の管理コードを採番した法人マスタデータ「LBC」を辞書として活用。「LBC」は法人番号や業種、売上規模などの企業属性だけでなく、親会社・子会社などの企業の資本関係や、本社・事業所関係などの企業系列まで把握できるのが特徴です。情報量が充実しているからこそ、顧客情報を精度高く整備できます。
名寄せ後のデータを最大限活用するために、どのような機能やサポートがあるかも確認するといいでしょう。
SFA・CRM・MAとの連携に強みを持つタイプ(ABMツール)は、ピンポイントでターゲットとなる企業を選定し、戦略的にアプローチするための機能が充実しているのが特徴です。
たとえば、「uSonar」は、蓄積されたデータに基づく企業の見込み度のスコアリングやWeb行動履歴データとの連携により、アプローチに役立つ属性を付与できます。
「Precisely Trillium」には、名寄せを行う背景から丁寧にヒアリングして、最適な名寄せ結果を得られるようサポートするサービスがあります(クレンジング・名寄せ受託サービス)。個別に名寄せ精度をカスタマイズし、自社に適した条件での名寄せが可能です。
(出所:FORCAS公式Webサイト)
高確度な営業戦略の実行を支援するABMツール。表記揺れや重複など、問題を含んだ既存の顧客リストをアップロードするだけで、FORCASが保有する370万社の企業データの中から正しい企業を特定し、正式な企業名と法人番号、そのほか様々な企業属性を付与してデータを整理。企業名が特定できなかった場合は、表示される候補から選択するだけで名寄せが完了する。
API経由でSalesforceなどのCRM、SFAやMAツールと連携可能。ABMの実践や営業生産性の向上につながる。
簡単な操作で受注確度の高い企業の傾向を自動分析する機能(顧客分析機能)や、同じ特徴をもつターゲット企業リストを出力する機能(企業リスト作成機能)も搭載。
(出所:uSonar公式Webサイト)
国内拠点をほぼ網羅する820万件の企業データベースLBCを搭載した、クラウド型の顧客データ統合ソリューション。
LBCをマスターデータとして、散在する顧客データやリードデータを高精度にクレンジング・名寄せできるうえ、保有していない項目の補完や古いデータの更新が可能。同一拠点のものや、住所移転、本社・支社などの関係をLBCに設けられているコードにより企業を正確に捉えられる。
新規登録時も重複を発生させず、移転や社名変更、市町村統合情報なども自動更新するほか、書式統一マスターも保有することで、顧客データのメンテナンス作業の工数ゼロを実現できる。
(出所:Sansan Data Hub公式Webサイト)
AI技術を結集した独自のテクノロジーにより、顧客データの表記揺れや重複などを解消。マーケティングに適した付加価値の高いデータへと進化させる営業DXサービス。
Salesforce、Marketoなどの主要なSFA、CRM、MAサービスとの自動連携に対応し、簡単に顧客データを取り込み可能。そのほかのサービスともCSVやAPIを介して連携できる。
取り込んだ顧客データは、企業名や住所、電話番号などの9つの情報を利用して企業を特定し、Sansanが独自に発行する企業コード(SOC)を付与。この企業コードにより、重複データの特定や統合といったクレンジング作業を大幅に効率化できる。
名寄せした顧客データには、SOCコードに加え法人番号や登記情報、帝国データバンク情報など、50を超える属性情報を付与。データの不備をなくし、きれいかつリッチな状態に整えることで、分析に必要なデータを素早く正確に抽出できるように。
(出所:Data-Master公式Webサイト)
部署・部門ごとに分散した顧客データに対し、自動でデータレンジング処理を行うサービス。
指定された形式(Excel、CSV形式)のデータをアップロードするだけで、簡単に利用可能。電話帳データや、住所辞書、局番辞書、姓名辞書だけでなく、AIを用いた独自の読み替え辞書「法人シソーラス」を活用し、法人名、住所、電話番号のクレンジングや、データ補完、法人番号の付与を行う。
機械処理で対応できなかったデータに関しては、オペレーターの目検によるマッチング処理で対応(有償オプション)。
データマネジメント専門企業として長年培ったノウハウを活かし、導入コンサルやデータ構造の明確化といった導入支援も行っている。
(出所:Precisely Trillium公式Webサイト)
20年以上にわたりデータ整備サービスを提供する同社による、データクレンジング・名寄せツール。
様々なシステムに分散する顧客情報をデータクレンジング・名寄せすることで、統合顧客データベースの構築・活用・運用が可能に。
業務の内容や目的に沿った名寄せ結果を得られるように、自由に名寄せ条件や精度を調整・設定できる。条件・精度の検討にあたっては、同社のノウハウを活用したきめ細かなサポートを行う。
ツール提供のほか、保有データの状態を調査・分析し、データの課題を洗い出すことで、最適なクレンジング・名寄せプランの提案を行う「データ分析受託サービス」や、金融機関向けにCIF(顧客情報ファイル)整備テンプレートを提供し、スピーディーな業務立上げを支援する「ペイオフソリューション」など、企業ごとの課題やニーズにあわせて最適なソリューションがそろう。
(出所:データクレンジングサービス公式Webサイト)
月間処理件数1億超。豊富なノウハウを持つ、同社独自のデータクレンジングサービス。データの課題整理から必要なデータの収集、生成、加工、活用までワンストップで支援できるのが強み。徹底したヒアリングのもと、企業のニーズに沿ったツールを開発、提供しており、金融、不動産、旅行・宿泊、製造、物流など業界を問わず、幅広い企業への導入実績を持つ。
データクレンジング、名寄せによる情報の一元化により、データ活用を推進。データに新しい属性を付与したり、タグ付け、カテゴリ分け、アノテーションなどを行ったりすることで、これまでにない新しい観点での分析・集計を可能にし、データの価値を最大化する。
(出所:Valu∞公式Webサイト)
15年以上のサービス提供実績をもつ、データクレンジング・名寄せサービス。
電話帳データベース製造で培ったノウハウを活かした高精度なデータクレンジングと高速処理を実現しており、金融、通販、小売など様々な業種での顧客データの最新・最適化に活用されている。
電話帳データベース、住所辞書、住所変換マスター、郵便番号辞書、局番辞書、姓名辞書、法人名辞書など、マスターが充実しているのも特徴。オプションで法人番号や業種情報、座標情報などの属性も付加できる。
Valu∞システムを利用するプラン、Valu∞に処理を委託するプランなど、ニーズに合わせた4つのプランを用意しており、委託する場合は、オンサイトにも対応。情報が企業の外に出ないため、セキュリティ面も安心。
(出所:DataStage公式Webサイト)
名寄せを効果的に行うための3つのステップ(「データ品質の確認」「名寄せ効果の検証」「名寄せ処理のシステム化」)をサポートする高機能ETLツール。
操作にプログラミングの知識は不要。GUI画面上で行うため、直感的に操作できるのが強み。処理が視覚的に把握しやすいので、「データ品質の確認」「名寄せ効果の検証」の処理も迅速に作成でき、その後の「名寄せ処理のシステム化」でも、スムーズに処理の拡張や開発者の引き継ぎができる。
名寄せの精度を向上させるデータクレンジングツール「QualityStage」と連携も可能。「DataStage」の開発画面で「QualityStage」との処理を埋め込むことで、ETLツールとデータクレンジングツールの処理をシームレスにつなげられる。
名寄せツールは、データベースの中にある重複したデータを一つに統合するためのツールです。名寄せによるデータ整備を行うことで、顧客データの品質向上や管理効率化が実現し、効果的な営業活動に基づく、質の高いサービス提供が可能になります。正確で最新のデータが共有されることで、情報の属人化も防げるでしょう。
名寄せツールのタイプは、強みによって3つに分類されます。
(1)SFA・CRM・MAとの連携に強み
(2)データクレンジングに強み
(3)大規模データの突合に強み
自社の課題やニーズを考慮したうえで、以下のポイントにも留意し、ツールの候補を絞り込んでいきましょう。
(1)マッチング処理の精度
(2)照合データの充実度
(3)データ活用支援の範囲
名寄せツールの導入により、マーケティング本来の企画など、じっくりと取り組みたい業務に集中できるようになるのも大きなメリットです。この機会に、導入を検討してみてください。
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