最終更新日:2024-04-18
「クラウドとは何?」「クラウドで何ができるようになるの?」と疑問をお持ちの方へ。イラストを交えながら、クラウドの基礎知識や導入メリット、種類・活用事例などをわかりやすく紹介します。
クラウドとは、サーバーが提供するサービスやアプリ、ソフトウェアなどを、インターネット上のネットワークを経由して「必要なタイミングで・必要な分だけ」利用できる形態のことです。
一昔前は、手元のコンピューターにソフトをインストールしたり、自社でサーバーを構築したりするのが一般的でしたが、クラウドならインターネットにつなぐだけでサービスやソフトウェアなどを利用可能。また、サーバーのメンテナンスなども運営事業者が行うため、自社で対応する必要はありません。場所を問わず利用できるため、在宅勤務を導入している企業でも利用しやすい点が魅力です。
「クラウド」という名称に関しては、ネットワーク経由の外部サービスをまとめて雲の形の図で表す習慣があったことや、ソフトウェアの動作が目に見えない場所(雲の上)で行われていることから、「cloud=雲」と呼ぶようになったと言われています。
クラウドの特徴としては、以下のようにまとめられます。
クラウドへのイメージを深めるために、クラウド型と比較されやすい「オンプレミス型」との違いを、ゲームにたとえて解説します。
種類 | ゲームの例 |
---|---|
オンプレミス型 | PlayStationやニンテンドーDS |
クラウド型 | 各種インターネットゲーム・スマホゲーム |
オンプレミス型とは、自社でサーバーやシステム、回線を構築し社内で運用する形態のことです。たとえば、「PlayStation」のようにゲーム機本体を購入・設置し、好きなソフトを適宜ダウンロードして遊ぶ形式のものがイメージしやすいでしょう。
クラウド型がオンプレミス型と異なるのは、ネット回線さえあれば、どこからでも・どんな端末からでもサービスを利用できる点です。インターネットゲームがその一例で、外出先のスマホや友人宅のPCなどでも自分のアカウントでログインすれば、ゲームを遊ぶことができます。それと同様、クラウド型も時間・場所を問わずにサービスを利用することができます。
20世紀末に登場したクラウドの概念は、2000年代にPCとインターネットの普及とともに浸透してきました。
AmazonやYouTube、FacebookなどのWebサービスはもちろん、近年では、グラフィックデザインソフト「Adobe Illustrator」、会計ソフト「freee」、ビジネスチャットツール「Slack」など、様々なジャンルでクラウド型サービスが展開されています。Word・Excelなどのオフィスソフトも従来のようなCDでインストールする形態ではなく、「Microsoft 365」としインターネット経由で提供してもらうようになっています。
クラウド化が進んでいる理由として、主に以下が挙げられます。
一番の要因はスマホやPCなどを通じて、多くの人がインターネットを身近に利用するようになったことでしょう。働き方においても、コロナ禍を契機として在宅勤務が普及したことで、「いつでも・どこからでもアクセスできる」クラウドサービスの魅力が広まっている側面があります。ビジネスに関しては、「面倒なインフラ環境を用意することなく、自由にアプリを利用・開発できる」という柔軟性が評価され、クラウド化が進んでいると考えられます。
身近なクラウド型サービスとしては以下が挙げられます。
クラウド型サービス | サービス概要 | サービスの具体例 |
---|---|---|
クラウドストレージ | オンライン上のサーバーにファイルを保存して共有できるサービス |
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Web会議ツール | オンライン上でリアルタイムに音声と画面をつないで会議できるサービス |
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SNS | 不特定多数の相手とやり取りできるサービス |
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ビジネスチャットツール | 主にビジネスシーンで活用するコミュニケーションツール |
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クラウドEC | インターネット上のプラットフォームを活用してECサイトを構築できるサービス |
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上記のサービスは、いずれもインターネットを活用して「データを保管する」「他者とやり取りする」「商品を販売する」などの価値を提供している点で、身近なクラウドサービスといえます。
クラウドを利用するメリットとしては、主に以下が挙げられます。
オンプレミス型の場合、サーバーやデータセンター、メモリなどの新設や増設が必要なため、工事の手間が発生したり、多額の初期費用が発生したりします。また導入後も、電気代を含めたサーバールームの維持費やシステム担当者の人件費などが必要なため、ランニングコストも膨らみます。
クラウド型の場合、サービス提供事業者が管理するサーバーを利用できるため、導入や維持コストを削減可能。削減したコストを自社のコア業務に回せる点も魅力です。
オンプレミス型の場合、法改正やセキュリティアップデートなどにも対応しなければなりません。たとえば、オンプレミス型の会計ソフトであれば、電子帳簿保存法やインボイス制度の導入といった法改正が行われるたびに、随時買い替えやアップデートが必要です。
クラウド型の場合、サーバーのメンテナンスや法改正への対応、セキュリティ対策などはサービス提供事業者が代行してくれます。システム障害といったトラブル対応も専門知識を持った人材に任せられるため、保守・運用のために自社の人員を割く必要がありません。コア業務に集中できる体制を整えられます。
オンプレミス型は、自社サーバーやシステムを経由しているため「社内からの利用」が基本です。個人のスマホや社外のPCから接続するには、VPN接続などの複雑な設定が必要です。
クラウド型は、インターネットにさえつながっていれば、「いつでも・どこからでも」アクセスできます。外出先からも利用できるため、たとえば出先からスマホでクラウド型の営業支援システムに商談履歴を入力して、そのまま直帰するということも実現可能。ユーザーの働きやすさ改革や業務効率化に寄与します。
また、クラウドシステムを管理する側の業務も効率化できます。たとえば、アクセスが急増してサーバーメモリがダウンしそうな場合でも、「自宅からアクセスし管理画面のボタンひとつでメモリを増設」といったことが可能です。
オンプレミス型は社内にサーバーを設置したり、PCにソフトをインストールしたりするため、もしオフィスが火災や地震等で被災すればデータも一緒に失われてしまいます。
クラウド型であれば、インターネットを介して別の場所にデータが保管されているため、自社に万が一の被害があってもデータは守られます。また、随時バックアップも行っているため、万が一データを消してしまったとしても復元することができます。
オンプレミス型の場合、事業規模を拡張する際は、データセンターの拡大やサーバー増築など物理的なインフラ工事が必要です。コスト回収の見込みがあったとしても、多額の費用がかかるのは企業としても避けたいところでしょう。
クラウド型の場合、事業の成長に合わせて柔軟にインフラを拡充できます。まずはスモールスタートして、その後事業拡大に伴い、たとえば「海外支社とのコミュニケーションが必要」「フォルダ容量の大幅な拡張が必要」となっても、必要な分だけ必要な時に増設できます。
一方でクラウドには以下のような注意点もあります。
クラウド型サービスは、利用しやすいようにサービス提供事業者側であらかじめ機能や仕様を絞って提供しているため、オンプレミス型のように「自社業務に合わせて個別に作り込む」ということはできません。
ただし、クラウド型サービスの中には、豊富な機能の中から自社業務に必要なものを選んでカスタマイズできる製品も増えているため、通常目的での利用には困ることはほとんどないでしょう。業界・自社独自の慣習・フローが存在しないようであれば、自社でシステムを作り込むより、既にベースがあるクラウド型システムを活用したほうが、メリットは大きいといえます。
クラウド型サービスは、オンプレミス型のような買い切りではなく月額制(サブスクリプション)が基本です。そのため、オンプレミス型のような初期費用は発生しませんが、利用中は毎月費用が発生します。費用体系はサービスごとで異なりますが、「1ユーザーあたり◯◯円」「利用ストレージ量に応じて毎月変動」といった従量課金制が基本。年を経るに連れ、料金が膨らんでいくのが一般的です。
ただし、その一方で「最初は特定部署のみで利用して、慣れたら範囲を拡大」「スモールスタートして、事業が拡大したら本格的に利用」というように、初期投資を抑えて必要な分だけ無駄なく利用できるのもポイントです。
オンプレミス型のように接続できるネットワークが社内に制限されていれば、情報が漏れたり、不正にアクセスされたりするおそれは少なくて済みます。しかし、インターネットさえあればどこからでもアクセス可能で、かつ外部にデータを保管するクラウド型の場合、そうはいきません。多くのクラウドベンダーは二要素認証やデータの暗号化、更にデータセンターのセキュリティ向上などに取り組んでいますが、一定のリスクがあることは理解しておきましょう。
セキュリティを維持するためには、しっかりとした対策を取っているクラウドベンダーの選択や、利用開始後も「従業員が誤作動させて情報漏えいを起こす」といったヒューマンエラーを起こさないための社内での取り組みが必要です。
クラウドには様々な種類があります。GmailやGoogleカレンダー、Salesforceなど一般的に認知されているクラウドサービスは「SaaS(サーズ)」と言って、クラウドの1形態にすぎません。それ以外にもクラウドには、「PaaS(パース)」「IaaS(イアース)」という種類があります。
まず前提として、クラウドサービスを成り立たせるには、以下のような様々なものが必要です。
それらが下から段階的に積み重なって、上部のアプリケーションを支えている、と考えるとイメージしやすいかもしれません。SaaS・PaaS・IaaSはこのうち「どこからどこまでがベンダーによって提供されているのか」という提供形態によって区別されます。以下、イラストを交えながらわかりやすく解説します。
SaaS(Software as a Service)は、上記のアプリからサーバーまで一連のサービスすべてを提供するクラウドサービスです。ユーザーはスマホやPCなどのデバイスからインターネットを通じて、専用サイトにログインしたりアプリケーションを立ち上げたりするだけで、簡単にサービスを利用できます。
ただし、SaaSは目的以外の用途で利用することはできません。GmailならGmail、GoogleカレンダーならGoogleカレンダー。車にたとえるなら、既にドライバーが用意されており、自らは何もすることなくとも目的地まで連れて行ってもらえる「タクシー」のようなものです。
PaaS(Platform as a Service)は、サーバーからミドルウェアまで、アプリ以外をインターネット経由で提供するクラウドサービスです。そもそもアプリの開発過程で使われるサービスであり、システム会社や制作会社など「開発者サイド」が利用者であるため、一般的な馴染みは薄いかもしれません。しかし、世の中のアプリ制作環境を裏から支える重要な存在です。
かつてITエンジニアがアプリを開発するには、自らネットワークやハードウェア・OS・ミドルウェアなどの開発環境を構築しなければなりませんでしたが、PaaSの導入によって簡単に用意できるようになりました。ITエンジニアはコードをPaaSにアップロードするだけで、好きな用途のアプリを自由に開発できます。車にたとえるなら、ドライブしたり、買い物したり、送り迎えしたり、用途を自由に選べる「マイカー」です。
IaaS(Infrastructure as a Service)は、アプリとミドルウェア以外の下部のインフラ部分を提供するクラウドサービスです。たとえば、Webシステムやサービス開発にはCPUやメモリなどのインフラが必要ですが、IaaSならインターネット上で自由に増減可能です。自社でサーバーなどを購入・運用するコストや手間を削減して、業務効率化を図れます。
サーバーやOS、使うプラグラミング言語などの自由度が高いのが特徴ですが、その分、自社でメンテナンスを行う範囲も広がります。運用には一定の知識が必要であり、車にたとえるなら、好きなように改造することができるものの、専門的な知識・技術が求められる「カスタムカー」のイメージです。
続いては各クラウドサービスが具体的にどのようなシーンで利用されているのか。導入目的・活用事例などについて解説します。
SaaSは「インターネットさえあれば簡単に利用できるアプリケーション」です。一般の方にも馴染のあるクラウドで、おそらく一度は利用したことがあるはず。領域別に無数アプリが存在しますが、導入目的は共通で、以下のような場合が多いです。
たとえば、よく知られたところで言えば、Googleが提供している「Gmail」は、メーラーのようにインストールする必要がなく、Webブラウザからアクセスするだけで利用可能。「PCに下書きしてスマホで外出先から送信する」などデバイスを跨いで利用できるため、従業員の業務効率化に寄与します。
近年では、パッケージ型で提供されていたアプリケーションの多くがSaaSに置き換わっているケースも。たとえば、Microsoftの「Word」「Excel」といったオフィスソフトやAdobeの「Illustrator」などです。また、従来はオンプレミス型で企業独自に開発されていたシステムもSaaSに置き換わっています。たとえば、財務や人事労務などのバックオフィス業務全体を効率化できる「マネーフォワードクラウドERP」などです。
PaaSはアプリの開発過程で使われるサービスです。利用者はシステム会社や制作会社に限られます。主に以下の場面での利用が想定されます。
PaaSを利用すれば、アプリケーション制作に必要なネットワーク・ハードウェア・OS・ミドルウェアなどを必要な時に必要な分だけ利用できます。そのため、企業は開発リソースを無駄なく集中投下できます。たとえば「Microsoft Azure」は、好きな言語を活用して開発できる「App Service」や、事前に構築されたSQLデータベースを活用して開発できる「Azure SQL Database」などを提供しています。
IaaSはサーバーやOS、利用するプログラミング言語などを自社のリソースに合わせて自由に選択でき、規模も簡単に拡大・縮小できます。主に以下の場面での利用が想定されます。
たとえば、「さくらのクラウド」は、最大で「CPU128コア・メモリ480GB」まで選べるIaaS型のクラウドサーバーです。直感的に操作できるコントロールパネルで、スケールアップなどのインフラ管理を実施できるため、「SNSでバズって急激にアクセスが増加した」というケースでも、即座に管理画面からメモリを増設しサーバーダウンを防止できます。
クラウド型サービスはインターネット回線を利用する以上、情報漏えいのリスクがつきまといますが、多くの機密情報や個人情報を取り扱う企業にとって情報漏えいは万が一にも許されません。厳しいセキュリティポリシーを掲げる大手企業や金融機関、行政機関などは「クラウド型である」という理由だけでサービス利用をNGとするケースもあります。
しかし、以下の方法を活用することで、クラウドを安全に利用できる体制を整えることができます。
自社専用のクラウド環境を構築し、社内やグループ企業といった内部のみで利用するサービスのことです。社内のみで運用するため高い安全性を誇ります。プライベートクラウドに対して、社外ユーザーも利用できる一般のクラウドサービスは、パブリッククラウドと呼ばれます。
「独自のセキュリティポリシーを適用して確実に情報漏えいを防ぎたい」「特殊なカスタマイズが必要なシステムを設計したい」という企業におすすめです。
以下のような社内におけるセキュリティ対策の構築も重要です。
クラウドサービスのセキュリティは、それを提供するクラウド事業者の安全対策如何によって異なります。クラウド事業者の安全性を図る指標としては、たとえば以下のようなもの挙げられます。
公式サイトでは公開されていない場合もありますが、上記の基準を参考にして、より安全性が高くセキュリティ意識が高いクラウド事業者を選びましょう。
クラウドのシェアは「SaaS・PaaS・IaaS」の提供形態別で異なります。
SaaSは用途の数だけアプリケーションが存在するため、各カテゴリでシェアが分かれます。更に国・エリアや導入企業の規模などによっても異なります。たとえば、クラウドストレージやチャットツールについても大手企業ではMicrosoftがシェアの大半を占めますが、中小企業ではBoxやSlackが逆転します。あらゆるカテゴリが群雄割拠の状態のため、SaaSでどの製品のシェアが高いとは言い切れません。
一方、PaaSとIaaSは、導入企業・提供するベンダー自体が限られてくるため、主要製品もほぼ決まっています。以下の3つです。
PaaSについては、上記以外にもSalesforceやIBM、Alibaba Cloudなどが独自の機能や強みを持ち、存在感を放っていますが、IaaSについては、AWS・Microsoft Azure・GCPの3つで、世界シェアの6割位上を獲得している状況です。内訳としてはAWSが約3割、Microsoft Azureが約2割、GCPが約1割という順序です。
市場規模は製品によって多少変動はあるものの、全体としては前年比より10%強増加し続けています。総務省の調査でも、形態を問わずクラウドサービスのシェアは拡大が見込まれており、「オンプレミスからクラウドへ」という流れは今後とも続くと考えられます。今後の事業成長を考える上で、クラウドに関する知識を身に付けておくことは必須と言えるでしょう。
クラウドに関連してよく耳にする用語について、わかりやすく解説しておきます。
「クラウドソーシング」・・・仕事を受注したい人と発注したい人を結びつけるオンラインプラットフォームのことです。インターネットを通じて、契約書のやり取りから納品、支払いなど、仕事に関わる一連の作業を完結できるのが特徴です。
「クラウドワーカー」・・・上記のクラウドソーシングを活用して働く方のことです。クラウドソーシングに掲載されている仕事の中から、自身のスキル・経験に合うものを選び業務を遂行します。時間や場所を問わず働ける点が魅力です。
「クラウドストレージ」・・・データやファイルなどをインターネット上に保管するためのスペースのことです。データの共有・受け渡しなどに利用されています。データ保管量に応じて最大容量を手軽に拡張・縮小できる点が魅力です。
最後に、クラウドに関連して聞かれることが多い質問へも回答します。ご自身の疑問点を解消できているか、チェックしてみてください。
クラウドストレージを活用し、インターネット上にデータを保管することです。インターネット上のフォルダにデータを「格納する=入れる」とイメージするとよいでしょう。クラウドに入れておくことで、オンラインであれば場所や時間を問わず、データやファイルを確認できます。
クラウドサービスを提供する事業者が定めたサーバーに保管されます。事業者が自社で保有するサーバーに保管することもあれば、クラウドサービス事業者が提携している別会社のデータセンターに保管するケースもあります。被災した時に備えて、複数の保管場所を用意して相互にバックアップするなどの対策が取られていると安全です。
自社サーバーやデータセンターで管理していた情報を、インターネット経由で外部のクラウドサービス事業者へ移行することです。クラウド化によって、「情報をリアルタイムで共有できる」「サーバーのメンテナンスを任せられる」などのメリットを実感できます。
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