従業員の入退社にあたって発生する各種手続きの内容を知り、業務を抜けもれなく行いたいと考えている担当者へ。入退社手続きの流れや注意点とともに、業務効率化に役立つ入退社管理ツールを紹介します。
入退社手続きとは、従業員が入社・退職する際に発生する一連の手続きのことです。
従業員が入退社する際は、主に社会保険や税金など労務に関する手続きのほかに、各種備品を貸与・回収する手続き、メールアドレス・ツールのアカウント発行・削除などのIT関連の手続きが発生します。そのため、企業の人事総務、労務、情報システム部門や、入退社する従業員が所属する各部門と連携を取りながら、業務を進めていかなければなりません。
また、人事総務担当者が、労務業務やIT関連業務を兼務している場合は、膨大なタスクを円滑に進めていくためのスケジュールの調整が求められます。
機器・備品の用意・回収、メールアドレス・各種アカウントの発行・削除、各種オリエンテーション手配(施設案内、社内ルール説明)、研修手配など
社会保険・雇用保険加入・資格喪失手続き、入社時・退職時の給与計算など
労務手続きを効率化する方法については「【比較表付き】労務管理システム比較15選!料金・機能・シェアまで」で詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。
入退社管理ツールをお探しの方は、こちらからサービス紹介資料をダウンロードいただけます。
入社手続きの流れとあわせて、発生する一般的なタスクをまとめました。
社員番号を、Excelなどで作った台帳をもとに採番します。
人事システムに、入社した社員の氏名、住所、扶養親族、給与振込の銀行情報、住民税の納付先(住民票がある市区町村)などを入力しておきます。入力内容は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載された情報を参照します。
入社予定の従業員に必要な書類を作成・交付します。入社日までに従業員に記入・提出してもらう必要がある書類もあるため、余裕を持って交付するようにしましょう。必要な書類の詳細は、「入退社手続きの際に従業員に用意してもらう書類」で詳しく紹介します。
企業側が「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を記入し、従業員の住民票が置かれている市区町村に提出します。たとえばこの書類が必要なのは、今まで個人で住民税を支払っていた従業員の納付方法(普通徴収)を、給与から天引きする「特別徴収」に切り替えたい場合です。また、中途入社者が、住民税の天引き先を前職から新しい会社に切り替える場合にも必要です。
なお、新入社員など、前年度に所得がなかった人は提出する必要はありません。
入社した従業員の健康保険・厚生年金の加入手続きを行います。具体的には企業側が記入した「健康保険被保険者資格取得届」を健康保険組合加入先へ、「厚生年金被保険者資格取得届」を事業所を管轄する年金事務所へ提出。いずれも、入社日から5日以内の提出が求められています。
上記の加入手続き完了後、健康保険組合加入先から健康保険証が届くので、速やかに従業員へ配布します。
企業側が記入した「雇用保険被保険者資格取得届」を、入社日の翌月10日までに提出します。提出先は、自社の事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)です。
労働基準法では、従業員を雇用した際に以下の帳簿を作成することが義務付けられています。
記載すべき事項も定められているので、不備のないよう作成する必要があります。
企業側には、従業員が入社する際に「雇入時の健康診断」を実施することが義務付けられているため、健診実施場所の手配や日時の調整を行います。実施時期の目安は、入社前後3カ月以内です。
ただし、従業員が入社する3カ月前までに、厚生労働省で定められている11項目の健診を受けている場合、雇入時の受診は必要ありません。
基本的に、健康診断結果は会社に届きます。企業側は、人事システムもしくはExcelなどに従業員の診断結果を入力しておきます。あわせて、従業員に診断結果を配布。判定結果をもとに、異常な所見が見られる従業員には再検査を促します。
原則、雇入時の健康診断にかかった費用は企業側が負担します。会社で統一した施設を利用している場合は、経理担当者が支払処理を実施。従業員に健診費用を立て替えてもらっている場合は、その分を精算します。
従業員の入社にあたって必要な備品を手配します。以下に、準備しておくべき備品の一例をまとめました。
備品とあわせて、利用するPC・スマホの動作確認やアカウント設定、ソフトのインストールなどを実施します。
入社した従業員が社内のチャットツールやグループウェアなどにアクセスするための各種アカウントを作成し、ログインできる体制を整えます。
従業員へ入社日やオリエンテーション、研修日時などの案内を行います。各種研修担当者とも連携しながら、従業員が一刻も早く自社で活躍できるような環境を整えます。
入社した従業員の配属ポジションが決まったら、組織図や人事システムの内容を更新します。
入社した従業員が副業をしている場合は、副業の内容が社内規定に沿っているかを確認しながら申請手続きを行います。
退職を決めた従業員にまつわるタスクを実施するタイミングは、大きく「退職前」「退職後」に分けられます。まず、この章では退職前に必要なタスクを紹介します。
企業は、従業員から提出された退職届を受理して、従業員の退職意思を確認します。また、従業員の退職理由が「自己都合」か「会社都合(倒産や人員整理など、会社側の都合により労働契約を解除すること)」かによって、失業保険の給付日数や給付までの待機期間が変わります。所属部署の上長や人事担当者は、退職理由の確認と記録も行いましょう。
人事担当者は、退職を申し出た従業員と、その所属部署の上長らと連携しながら従業員の最終出勤日・退職日を決定します。所属部署の引き継ぎ期間や、後任者の補充の兼ね合いなどを踏まえながら決める必要があります。
従業員に貸与した備品を返却依頼して、最終出勤日または退職日までに回収します。回収すべき貸与品の一例は、以下の通りです。
業務で利用した社内資料やデータも回収しましょう。社内の機密情報の流出を防ぐためです。
入社時に従業員へ配布した健康保険証は、退職日の翌日から使用できなくなります。退職が決まった従業員には、退職日までに健康保険証を返却してもらうよう依頼し、回収しましょう。
雇用保険被保険者証や年金手帳を企業側で保管している場合は、従業員の退職日までに返却しましょう。
退職予定者へ、以下の事項を通知しておく必要があります。
退職すると、社会保険(健康保険・厚生年金)の資格が喪失されます。ただし健康保険に関しては、2年間任意継続(退職後2年間、同様の健康保険の被保険者になれる制度)で加入できるため、継続するか意思確認をします。
ただし、退職後、間を空けずに次の企業へ転職する場合は、原則転職先の健康保険に加入することになるため確認の必要はありません。
住民税の支払方法には、「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。退職月にもよりますが、再就職まで期間が空く場合は住民税の納付方法が「普通徴収」になり、個人で納付する必要がある旨を通知します。詳しくは、次章の【住民税の手続き】で紹介しています。
退職後は、雇用契約書の影響が及ばないため、競業禁止や守秘義務を約束する誓約書を用意し、退職予定者に締結を依頼します。
ただし、退職者が誓約書を締結する義務はないため、拒否された場合強要はできません。
続いて、退職後に必要なタスクを紹介します。
従業員が退職した翌日から5日以内に、社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失手続きを行います。健康保険組合加入先には、「健康保険被保険者資格喪失届」と従業員から回収した健康保険証を提出。自社の事業所を管轄する年金事務所には、「厚生年金被保険者資格喪失届」を提出します。
従業員の退職日の翌々日から10日以内に、雇用保険の資格喪失手続きを行います。雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を、自社の事業所を管轄するハローワークに提出します。
あわせて、離職日以前の賃金支払状況を確認する書類として、「出勤簿」「労働者名簿」「賃金台帳」、離職理由が確認できる「退職届」などの書類の添付が必要です。
住民税の手続きは、退職した従業員が間を空けずに次の企業へ転職する場合と、そうでない場合で方法が変わります。
次の転職先の勤務開始日まで間があいてない場合は、「特別徴収の継続手続き」を行います。「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の上段に必要事項を記入したうえで、転職先の会社の記入欄は空白にしておき、書類を引き渡します。その後転職先の会社が下段を記入し、従業員が居住する市区町村に書類を提出すれば、特別徴収が継続されます。
再就職まで期間が空く場合は、退職者個人が住民税を納付する方法「普通徴収」に切り替える必要があります。特別徴収から普通徴収に切り替える場合、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の提出が必要です。
ただし、住民税は1月〜12月の収入に対して課税され、翌年の6月から支払が開始する仕組みになっているため、退職月によって住民税の納付方法が異なります。企業側は、手続きとともに以下の仕組みを従業員に通知しておく必要があります。
1月〜4月に退職した場合 | 退職月から5月までの住民税は、退職日以降に支給される給与から一括徴収されます。ただし、給与から控除しきれない分の住民税は普通徴収に切り替わり、退職者は後日届く納付書で、不足分を納める必要があります |
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5月に退職した場合 | 5月中に退職した場合は、最後の給与からこれまでと同様住民税額が天引きされます。一括徴収・普通徴収は発生しません |
6月〜12月に退職した場合 | 翌年5月までの住民税を会社に一括徴収してもらうか、一括徴収せず普通徴収にするかを選択できます。退職者がどちらの方法を望むか確認しましょう |
なお、住民税の支払い手続きや納付方法に関しては、退職者が居住する市区町村によって異なる可能性があるため問い合わせが必要です。
雇用保険の資格喪失手続きの際に提出した離職証明書をもとに、ハローワークが離職票を交付し、企業に郵送します。離職票が届いたら、速やかに退職者へ郵送しましょう。
企業は、源泉徴収票を退職後1カ月以内に従業員へ発行する義務があります。源泉徴収票には、退職した年に支払った給与の総額や、差し引いた所得税額などを記載します。退職者が再就職先で年末調整を受けるため、または自身で確定申告を行う場合に必要になるため、期限内に発行・郵送してください。
退職者が、退職後に国民健康保険に加入する予定がある場合は、健康保険資格喪失証明書が必要です。希望があった場合は、自社が加入している健康保険組合に交付申請を行い、郵送しましょう。
従業員の退職日を基準に、会社規定に則って最終給与や退職金の支払処理を行い、明細書を交付します。特に退職者から申し出がない場合は、会社で定めた給与支払日、退職金支払日に支払えるよう処理をします。
これまで退職者が利用していたチャットツールなどのアカウントは削除。人事システムに登録している退職者情報に関しても、削除または、退職したことがわかるよう情報を更新しておきます。
従業員が退職したら、組織図に素早く反映します。
入退社を控えている従業員には、期日までに書類を用意、提出してもらう必要があります。また、企業側で準備せねばならない書類も膨大です。この章では従業員・企業がそれぞれ用意すべき書類の概要を一覧で紹介します。
入社予定者が用意する書類と、会社が用意する書類、会社が用意した上で入社予定者に署名してもらう書類があります。
必要書類 | 概要 |
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年金手帳(基礎年金番号) | 厚生年金の加入手続き時に必要。入社予定者が手帳を紛失していて番号がわからない場合は、企業側が所轄の年金事務所で再発行手続きをする必要あり |
マイナンバー(個人に交付される12ケタの番号) | 社会保険、雇用保険などの資格取得手続き書類には、マイナンバーの記載が必須。各種保険・年金を管理している機関はバラバラのため、マイナンバーにより個人を照合しやすくする目的から必要とされている |
給与振込口座情報 | 会社から給与振込に使う銀行を指定されている場合は、入社予定者が口座開設手続きをする必要あり |
雇用保険被保険者証番号(中途入社の場合) | 雇用保険に加入している被保険者に付与される11桁の番号。中途入社の場合はすでに番号が付番されているので、前職から返却された被保険者証を持参 |
源泉徴収票(中途入社の場合) | 退職した年に支払った給与の総額や、差し引かれた所得税額などが記載された書類。年末調整を行う際、前職の所得額を確認するために必要 |
健康診断書(入社後に実施しない場合) | 厚生労働省が定めた11種類の検査項目を満たした健康診断書。入社前3カ月以内に実施された健康診断書であれば有効 |
会社によって提出を求められる書類 | 概要 |
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卒業証明書 | 新卒入社で必要になることが多く、履歴書に虚偽の記載がないか確認するために利用 |
住民票記載事項証明書 | 住民票にある項目のうち、必要事項のみを記載した書類。現住所確認のために提出 |
資格取得証明書 | 何らかの資格保有を条件に入社した場合に必要 |
運転免許証のコピー | 社用車を運転する機会のある営業職や、トラックドライバーなどの職種の場合に必要 |
身元保証書 | 入社予定者とともに、身元保証人(親族など)の署名・捺印を求める書類。本人の身元確認、本人の過失で会社が損害を被った際、連帯責任を負う保証人を証明するために利用 |
必要書類 | 概要 |
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入社誓約書 | 入社にあたって遵守すべき項目を記した書類。就業規則や服務規律、秘密保持などについて明文化されている |
雇用契約書 | 企業と労働者間で雇用契約を取り交わす書類。契約書のため、企業、入社予定者双方の署名・捺印が必要。給与、業務内容、就業時間、退職などに関する事項が含まれている |
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 扶養者の有無に関わらず、勤務先への提出が義務付けられている書類 |
年収2,000万円以上、または給与を複数箇所から受け取っており、ほかの企業に当書類を提出している場合は必要なし | |
健康保険被扶養者異動届・(家族を扶養している場合) | 家族を扶養している人が、新たな加入先の健康保険に入る際に必要な書類 |
国民年金第3号被保険者届(家族を扶養している場合) | 被扶養者が国民年金の第3号被保険者(※)に該当する場合に必要な書類。書類は配偶者が記入 |
(※)厚生年金加入の第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者 |
必要書類 | 概要 |
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採用通知書(内定通知書) | 内定者に採用が決まったことを通知するための書類。内定通知書を兼ねて交付する企業もある |
労働条件通知書 | 雇用契約書と同じく、採用者に賃金、就労時間などの条件を明示する通知書 |
法定四帳簿 | 「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」「年次有給休暇管理簿」のこと。労働基準法により、作成と一定期間の保存(従業員が退職してから3年間)が義務付けられている ※従業員に交付はしない |
必要書類 | 概要 | 提出日 |
---|---|---|
健康保険被保険者資格取得届 | 健康保険加入手続きに必要な書類 | 入社日から5日以内 |
健康保険組合加入先へ提出 | ||
厚生年金被保険者資格取得届 | 厚生年金保険加入手続きに必要な書類 | 入社日から5日以内 |
自社の事業所を管轄する年金事務所へ提出 | ||
雇用保険被保険者資格取得届 | 雇用保険の加入手続きに必要な書類 | 入社日の翌月10日 |
自社の事業所を管轄するハローワークに提出 | ||
給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書(前年度に所得のある入社予定者のみ) | 住民税の納付方法を切り替える書類 (普通徴収→特別徴収への切り替え、特別徴収先を前職から変更する時などに利用) |
各市区町村によって定めあり |
従業員の住民票が置かれている市区町村に提出 |
必要書類 | 概要 | 提出期限 |
---|---|---|
退職届 | 退職の意思を伝える書類 | 一般的には、退職日の1カ月~2カ月前(民法では、退職日の2週間前までと定められている) |
企業所定の様式が定められている場合もある | ||
健康保険証 | 入社時に発行された健康保険証 | 退職日まで |
健康保険の資格喪失手続きの際に添付する必要があるため、会社に返却 |
必要書類 | 概要 | 提出期限 |
---|---|---|
退職時誓約書 | 競業禁止や守秘義務などを約束する誓約書 ※退職予定者に署名を拒否された場合、強要は不可 |
退職日まで |
必要書類 | 概要 | 返却期限 |
---|---|---|
雇用保険被保険者証 | 雇用保険に加入していることを証明する書類 | 退職日まで |
年金手帳(会社が預かっている場合) | 基礎年金番号が記載されている手帳 | 退職日まで |
必要書類 | 概要 | 提出日 |
---|---|---|
健康保険被保険者資格喪失届 | 健康保険資格喪失手続きに必要な書類 | 退職日の翌日から5日以内 |
健康保険組合加入先へ提出 | ||
厚生年金被保険者資格喪失届 | 厚生年金保険資格喪失手続きに必要な書類 | 退職日の翌日から5日以内 |
自社の事業所を管轄する年金事務所へ提出 | ||
雇用保険被保険者資格喪失届・雇用保険被保険者離職証明書 | 雇用保険の資格喪失手続きと、離職票発行のために必要な書類 | 退職日の翌々日から10日以内 |
「出勤簿」「労働者名簿」「賃金台帳」、離職理由が確認できる「退職届」などの書類の添付が必要 | ||
自社の事業所を管轄するハローワークに提出 | ||
給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書 | 住民税の納付方法を切り替える書類 (普通徴収→特別徴収への切り替え、特別徴収先を前職から変更する時などに利用) |
各市区町村によって定めあり |
従業員の住民票が置かれている市区町村に提出 |
必要書類 | 概要 | 発行期限 |
---|---|---|
源泉徴収票 | 退職した年に支払った給与の総額や、差し引かれた所得税額などが記載された書類 | 退職日から1カ月以内 |
離職票(再就職まで期間が空く場合) | 雇用保険の失業給付受給の手続きに必要な書類 | 期限の定めなし (離職票が発行される雇用保険資格喪失手続きは、従業員の退職日の翌々日から10日以内) |
自社の事業所を管轄するハローワークから発行される | ||
健康保険資格喪失証明書(退職者が国民年金への加入を希望する場合) | 退職者が、退職後に国民健康保険に加入する予定がある場合に必要な書類 | 期限の定めなし (健康保険の資格喪失手続きが完了次第発行) |
加入先の健康保険組合から発行される | ||
退職証明書(退職者が希望する場合) | 従業員が企業を退職したことを証明する書類 | 期限の定めなし (労働基準法では、遅滞なく発行と定められている) |
公的に決まった書式はなく、企業独自の書式を利用 |
入退社手続きにかかる書類を各機関に提出したり、従業員に渡したりする作業は、期日までに正確に対応する必要があります。この章では、万が一手続きが遅れた場合に発生するリスクやトラブルの一例について解説します。
健康保険の加入手続きが遅れるほど、従業員に新しい保険証を手渡すまでに時間がかかってしまいます。一時的に、医療費を従業員に全額立て替えてもらわなければいけないケースが発生し、従業員に負担をかけてしまう可能性も。なお、健康保険証の加入手続きを失念していた場合には、健康保険法により「6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が課される場合もあるため注意が必要です。
また、社会保険加入手続きが60日以上遅延した場合は、「出勤簿」「賃金台帳」「遅延理由書」を追加で提出しなければなりません。事務負担を更に増やさないためにも、漏れなく正確な手続きを行いましょう。
失業給付を受給する予定の退職者は、ハローワークに離職票を提出する必要があります。企業側で離職票の交付が遅れてしまうと、失業保険を受給するタイミングが後ろにずれてしまいます。
なお、失業保険の受給手続き可能な期間は、退職日の翌日から1年以内です。退職者の生活にも関わることであり、交付漏れや交付遅れが起こるとトラブルになる可能性があります。
たとえば、前年度は普通徴収で住民税を納めていた従業員を雇用する場合、企業側は住民税を給与天引き(特別徴収)に切り替えるために「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出する必要があります。
手続きが遅れてしまった場合、従業員個人の住所に納付書が届いてしまい、給与天引きできない月が発生する可能性があるため、速やかな手続きが求められます。
ここまでご説明した通り、入退社手続きは、膨大な数の書類をやりとりしなければならず、業務フローが煩雑になりがちです。また、部署をまたいで処理するタスクが発生する機会も多く、部署間の連携が欠かせません。
抜けもれなく業務を進めていくには、以下のステップを踏みながら関係者同士で協働していくことが大切です。
まずは、従業員の入社、退社の手続きにあたって「どの書類が・いつまでに」必要なのかを洗い出しましょう。その書類に従業員の署名が必要か否かもあわせて整理しておくのが望ましいです。
必要書類にまつわるタスクはもちろん、入社手続きの場合は各種備品の発注手配、退社手続きの場合は、備品の回収や退職月の給与計算管理などのタスクが発生します。タスクをすべて洗い出し、どの部署が担当するのかを整理しましょう。
洗い出したタスクを処理する順番に並び替えて、チェックリストを作ります。チェックリストは入退社する従業員ごとに作り、「タスク・タスクの完了期限・担当部署」などを入力。更に、「ステータス(完了・着手中・未着手)・完了日」を随時更新できるようにして、タスクに関わる部署が進捗状況を把握できるようにしておきます。
チェックリストに書かれたタスクを誰でもスムーズに実行できるよう、手順や注意点を示したマニュアルを作成します。
チェックリスト、マニュアルで示した手順を共通のフローとして関連部門に周知します。一定期間運用して、フローに改善すべき点が見当たる場合や、社内規定の変更によりフローを変更しなければならない場合も、都度各部門に通知する必要があります。
なお、チェックリストやマニュアルは、ExcelやGoogleスプレッドシート、Notionなどでも作れますが、より効率的に期日管理や進捗管理を行いたい場合は、入退社管理ツールを使う方法があります。
次の章で、入退社管理に便利なタスク管理や業務フロー設計などができるおすすめのツールを紹介するので、参考にしてみてください。
チェックリストの作成や、タスク管理に強みを持つツールを紹介します。
(出所:mfloow公式Webサイト)
入退社をはじめとした従業員管理のサイクル効率化に特化したツール。一人ひとりが受け持つタスクを把握できる仕様になっており、自身のタスクのチェックが簡単。管理職が、部下のタスクをチェックしながら遅延が起こらないよう呼びかけも可能だ。また、各種タスクにおいて発生する更に細かい作業は、チェックリスト化が可能。たとえば社用PCを用意する際に、インストール必須のセキュリティツールやソフトウェアをチェックリストにしておけば、細かな抜けもれまで防げる。部署を横断するタスクに関しても、ガントチャートにより見やすく表現。全体の進捗・遅延状況を把握しやすい。
そのほか画期的な機能は、入退社業務において「誰が・いつまでに・何をするのか」までテンプレート化できる機能があること。テンプレートを事前に準備しておくことで、急いでタスクの期限設定やメンバーの割り振りをする必要がなくなり、入社ラッシュにも対応しやすい。
(出所:WorQ公式Webサイト)
入退社管理をはじめ、人事総務部門のタスク管理に特化したツール。最大の特徴は、テンプレートに従業員の名前や内定日、入社日などを入力するだけで、期日が割り振られたタスクが自動生成できること。また、テンプレートに入退社者の情報が入力された時点で、各部門の手続き担当者にメールやSlackで自動通知する仕組みになっており、すぐに業務に取り掛かれる体制を作れる。すべてのタスクと進捗状況は可視化され、自分が着手すべきタスクのソートも可能。全員がツールを確認することで、リマインドメールなどのコミュニケーションコストのカットにつなげられる。
スムーズに利用開始できるよう、同社のCS担当者が導入・活用を促進するミーティングや情報提供を行ってくれるので、初めて入退社管理ツールを利用する企業にもおすすめ。
(出所:Bizer team公式Webサイト)
入退社業務で発生するタスクを細かくチェックリスト化し、並べ替えながら自社に最適な業務フローを作れるツール。入退社手続きに関するテンプレートがそろっており、アレンジして利用可能。また、一つひとつのチェックリストに対して担当者を割り振り、期限に合わせてリマインダーを設定できる。マニュアルなどの関連ファイルもあわせて添付でき、抜けもれのない作業体制の構築が実現。チェックリストの期限はカレンダーでも確認でき、作業の計画予定を立てやすい。更に、一つのタスクにおいてチェックリストが何項目完了しているかが一目でわかるので、全体の進捗状況も見通せる。
そのほか、タスクにかかった時間を登録・集計する工数管理機能を搭載。時間がかかっているタスクの見直しにつなげられる。
業務の流れを全体で共有し、部門間の引き継ぎをスムーズにするフロー図の作成に対応したツールを紹介します。
(出所:octpath公式Webサイト)
入退社対応における社内の業務フローを簡単に作成・共有可能なツール。見やすいUIで、フローチャートのように作業ステップが一覧表示される仕組み。各ステップをクリックすると、該当するマニュアルを表示可能。今やるべきことを誰でも把握でき、作業の属人化を防げる。また、各ステップには「未着手」「進行中」「完了」などのステータスが表示され、完了期限も設定表示できるので、全体の進捗状況を把握しやすい。作業結果に応じて、次のステップが自動で分岐するよう設定もでき、事務ミスの防止に役立つ。
そのほか、入退社業務において発生する個人情報・機密情報を回収する場面に関しても、ツールが多要素認証やデータの暗号化に対応しているため安心。更に、フローやステップごとに閲覧・編集可能なメンバーの権限設定も可能なため、情報管理を徹底できる。
(出所:Asana公式Webサイト)
入退社において発生する一連のタスクから、プロジェクトの進捗状況も確認できるツール。全体のタスクの中から、自身で請け負うタスクは「マイタスク」にリストアップされるのが特徴。それぞれ期日が表示され、「今日・近日・後日」といった優先度順に自動で並び替えられる仕様になっており、作業の抜けもれが起こりにくい。タスクを完了させると関連メンバーへ通知がいくため、別途メールでの完了報告は不要だ。また、タスク同士が紐付いたフローチャートを確認できる機能も。担当者がタスクを完了するたびフローチャートのステータスが自動更新され、進捗状況が見通しやすい。期日が引かれていないタスクもあわせて表示され、スケジューリングの漏れ防止に役立つ。
「Slack」や「Teams」とも連携可能。通知の連携だけでなく、たとえばSlackでの会話の内容をAsanaでタスク化することもできる。
従業員が入退社するにあたって発生する手続きは、複雑かつ膨大です。また、人事総務部門だけでは完結せず、労務部門や情報システム部門、入退社する従業員が所属する事業部門と連携を取りながら進めていく必要もあります。
今回の記事では、入退社手続きの流れと発生するタスク、企業側、従業員側で用意すべき書類の種類をまとめました。あわせて、手続きを進めるにあたっての注意点や、業務を効率的に進める方法も解説しています。
また、記事の終盤では、入退社手続きの更なる効率化に貢献する、タスク管理や進捗管理が簡単に行えるツールや、業務フローを整理しやすいおすすめのツールを紹介しています。ぜひ参考にしながら、自社の業態に合った入退社管理ツールを選んでみてください。
入退社管理ツールをお探しの方は、こちらからサービス紹介資料をダウンロードいただけます。
<重要なお知らせ> サイトリニューアルに伴い、初回ログインにはパスワードの再設定が必要です。
アスピックご利用のメールアドレスを入力ください。
パスワード再発行手続きのメールをお送りします。
パスワード再設定依頼の自動メールを送信しました。
メール文のURLより、パスワード再登録のお手続きをお願いします。
ご入力いただいたメールアドレスに誤りがあった場合がございます。
お手数おかけしますが、再度ご入力をお試しください。
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