電子カルテの導入を検討されているクリニック・診療所の方へ、紙のカルテと比較したメリット・デメリットや導入の流れ、各手順のポイントを紹介します。
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電子カルテの導入は、医師だけでなく、看護師や医療事務、患者にとってもメリットが大きく、これから新規開業をする医療機関にとって検討不可欠のシステムと言えます。
これまで中小規模の医療機関ではコスト面や運用面でのハードルの高さから普及率の低かった電子カルテですが、近年では中小規模のクリニックなどにも使い勝手の良い機能を搭載した電子カルテが登場しています。200床未満の病院やクリニックでの普及率は依然半数に満たないものの、新規開業クリニックの70〜80%以上が導入するようになったと言われています。
この記事では、スムーズな開業に向けた準備ができるよう、電子カルテ導入のメリット・デメリットや流れ・ポイントをわかりやすく紹介します。
「電子カルテシステムのおすすめを知りたい」「病院の規模別に比較検討してみたい」という方は、「電子カルテシステム比較15選」をご覧ください。電子カルテ選びのポイントや各システムの特徴を詳しく解説しています。
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電子カルテシステムの更に詳しい選び方は、こちらの選び方ガイドをご覧ください。
電子カルテシステムの選び方ガイド
電子カルテ導入にあたって、最初に確認しておきたい電子カルテのタイプや費用などについて紹介します。
電子カルテには、インターネット上のサーバーを借りてデータを管理する「クラウド型」と院内で情報システムの設備を保有して管理する「オンプレ型」があります。
オンプレ型 | クラウド型 | |
---|---|---|
概要 | 院内にサーバーを設置してデータを保管 | 外部サーバーにデータを保管 |
メリット |
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デメリット |
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電子カルテのカスタマイズの自由度やセキュリティ面ではオンプレ型の方が優位になるケースもありますが、初期費用が抑えられること、運用面での手軽さなどから中小規模のクリニックや診療所においてはクラウド型の電子カルテが主流となっています。余程の特殊な要望がない限りは、クラウド型の電子カルテの導入を選択するとよいでしょう。
電子カルテは受付のレセコンと併せて使用することになりますが、その際、レセコンと一体型になっている電子カルテにするのか、別途レセコンを用意して電子カルテと連携させるのかを検討する必要があります。
大手メーカー製の電子カルテであれば、レセコンも電子カルテに搭載されているレセコン一体型電子カルテであることが一般的です。情報の整合性が保たれること、カルテ側にレセコンの一部の機能を呼び出すことができるなど利便性が高いのがメリットです。
一方、診療報酬改定の度に電子カルテベンダーによる改定プログラムの開発が必要となり利用料金が高めであること、他システムとの連携といった拡張性が低いことなどがネックとなります。また、レセコンだけであれば、メーカーの乗り換えはそれほど大変ではありませんが、電子カルテのメーカー乗り換えとなると大がかりになることも考慮しておかなければなりません。
レセコンと連携して使う電子カルテの場合には、日本医師会が開発したレセプトコンピューターORCA(オルカ)と連携させることが一般的です。ORCAは、API機能を搭載しているため拡張性に優れていることや、オープンソース方式でプログラムを配布しているため安価で利用できることが魅力です。
オンプレ型 | クラウド型 | |
---|---|---|
初期費用 | 300〜500万円程度 | 無料〜数十万円程度 |
月額費用 | 2〜3万円程度 | 2〜4万円程度 |
導入するPCの台数や構成にもよりますが、オンプレ型の場合、レセプトコンピューター・医師用の電子カルテ・院内ネットワーク用のサーバーの3台構成で、初期設定および導入費用で300~500万円程が平均相場です。月額利用料の平均相場は、2~3万円程です。レセコンを別途用意する場合には、初期費用は150~200万程度追加でかかり、月額利用料は2万円前後プラスとなります。また、数年置きにメーカー指定のPCの買い替えをする必要もあり、その都度初期費用と同等のコストがかかります。
一方、クラウド型の場合には手持ちのPCを使うことも可能なため、電子カルテやレセコンの導入初期費用が無料というところも少なくありません。月額利用料は2~4万円台というところがほとんどです。「きりんカルテ」のように、電子カルテを月額無料で利用できるサービスもあります。
運用後のサポートをどこまで求めるかによっても金額が大幅に異なるため、必要なサービスを見極めてコストを抑えることも可能です。年間コストとしては50~100万円ほど見ておくと安心でしょう。クラウド型のレセコンはORCAを使っているサービスが大半で手頃な価格で使えることが多く、1万円台から利用できるサービスもあります。
また、経産省の「IT導入補助金2022」の対象システムであれば、導入費用の補助を受けることができます。交付申請や事業実績報告などの手続きに関するサポートを行っているベンダーもあるので、相談してみるとよいでしょう。
クラウド型の電子カルテの場合、マニュアルなどをもとに利用側の設定だけで使えるシステムもあります。ただ、システム設定は導入時の最も大事な作業であり、開業時などでバタバタしている時に頻度の高い病名や処方薬の一覧、診察パターンに合わせた処方のセット化などの登録といった設定をすべて自分でするとなると大きな負担となります。有料でも、要件・要望を伝えた上でシステム設定を行ってもらえるプランにした方がスムーズに導入ができるでしょう。
電子カルテを導入すると、以下のようなメリットが期待できます。
紙のカルテにはカルテを探す手間がかかる、ほかのスタッフが使用している時には見ることも編集することもできない、など不便がつきものです。
一方、電子カルテなら入力や編集した情報がすぐに反映されるため、リアルタイムで確認ができます。複数のスタッフが同時閲覧でき、受付や会計の待ち時間を減らせれば、患者の満足度アップにもつながります。
電子カルテには紹介状や診断所などの書類テンプレートが用意されていることが多く、医師による文書作成時間を減らせます。入力補助機能がある電子カルテであれば、医師のカルテ作成のスピード向上にも貢献してくれるでしょう。
また、検査結果を電子カルテに取り込むこともでき、レントゲン画像や検査結果などの情報にアクセスしやすくなります。往診時にもスマホやタブレットからカルテの確認・編集が可能になるのも効率アップにつながります。
紙カルテでは患者が増えるほど保管スペースが必要となりますが、電子カルテなら情報はサーバーに保管されるため物理的なスペースを用意する必要がありません。
電子化する以前の紙カルテについても必要なものだけを紙で残し、それ以外は電子化することで保管スペースを削減できます。
電子カルテでは、紙カルテのように手書き文字を読み解く必要がないため医師の指示を間違いなく理解できます。読み解くための時間もかからず、業務がスムーズにすすめられるほか、転記ミスなどによる医療ミスを防止することにもつながります。
電子カルテ導入にはメリットも多いですが、デメリットも存在します。デメリットも確認して事前にリスクを把握し、万が一の際にも慌てずに対応できるようにしましょう。
導入には、スタッフの習得期間が必要です。直感的に操作ができる電子カルテが多いですが、デジタルツールに慣れていないスタッフが操作に慣れるまでには時間がかかるでしょう。機種によって操作方法が異なるため、電子カルテ経験者であっても操作方法を把握するまでに時間がかかります。
電子カルテは、導入費用はもちろん毎月の運用コストがかかります。費用がどの程度になるのかは、どのサービスを選ぶのか、クラウド型・オンプレミス型のどちらを導入するのかによって大きく異なります。自院に必要な機能を見極め、費用対効果を十分に検討しておくことが欠かせません。
オンプレミス型電子カルテの場合、停電時は使用できなくなります。クラウド型はノートPCやタブレット端末の充電があればアクセス可能ですが、長時間の停電に備えて運用方法を決めておくなど、事前に対策を練っておくと安心です。
電子カルテ導入の流れを紹介します。
導入するサービスによって細かい点ではいくつか違いはありますが、一般的な流れとして、以下の4つのポイントがあります。
サービスの選定から、電子カルテの操作方法の研修などを経て本稼働するまで、規模にもよりますが、およそ6~8カ月が標準的な導入期間です。もちろん、電子カルテの選定にそれほど時間をかけず、導入設定が最小限あれば3カ月内の導入も可能です。
なお、ここでは無床のクリニック・診療所を想定しています。有床病院で診療科目が多い場合、より多くの要件やそのためのカスタマイズが必要となり、手順が増えます。
電子カルテの選定にあたり、複数社を比較検討することで、開業に向けて何を重視すべきかを明確化します。数ある電子カルテメーカーの中から自分の医院にとってベストなサービスを選ぶのは骨の折れる作業です。しかし、この作業を疎かにしてしまうと、導入前に期待していた効果を得られません。
期待通りの効果を得るためには、サービスのコスト面やサポート面、画面のデザインや操作性などを軸に、少なくとも3社以上のメーカーを比較することをおすすめします。大抵のメーカーで無料のトライアル期間が設けています。必ず利用するようにしましょう。複数社のトライアルを試すには2〜3週間かかることもありますが、最初に焦らず時間をかけることが、結果的に最短で最適なサービスを選定することにつながります。
また、老舗のサービス提供会社は多数のクリニック・診療所の電子カルテやレセコンの導入事例を見ているため、実践に即したアドバイスをもらえることもあります。自院と似たような規模や診療内容の事例を聞くことも可能でしょう。電子カルテ導入後のメリットやデメリットを含めた全体像をイメージしたいという場合には、まずは業界シェアトップであるPHC製品を扱っている代理店などから話を聞いてみるのも一案です。
ベンダーの担当者に診療科目、電子カルテに関する要望、確認したいポイントなどを伝えます。要望を把握するための課題の明確化には、サービス提供会社から渡される「カルテの仕様設定のためのヒアリングシート」や「業務把握シート」の活用、現行業務の聞き取り調査などを行います。運用解決したい課題や要望を具体的に伝えることで、目的に沿った内容のデモを実施することができ、システムに反映しやすくなるため、しっかり取り組みましょう。
クラウド型の電子カルテでは、基本的にはカスタマイズを伴わない範囲、標準機能でできる範囲で自院向けの設定をするため、必要な機能が搭載されているかどうか漏れなく確認しておきましょう。
また、システム導入時に電子カルテの初期設定や操作説明をどのように受けられるかの確認も重要です。クラウド型サービスの場合には、マニュアルを渡されて自分で設定するサービスや、メールサポートのみで電話対応はオプションというサービスもあります。対面での指導の有無、無料で受けられるサポートの範囲、有料サービスの内容についても確認しておくようにしましょう。
主なサポート項目をいくつか以下に挙げます。必要なものがあるか参考にしてみてください。
操作研修や説明会を開催し、本稼働に向けて操作方法を習得していきます。ベンダーによっては研修用マニュアルの用意があるところや、決まった時間を確保することが難しい医師に対して個別でのサポート研修対応をしているところもあります。不慣れな間は操作に時間がかかることもあるため、万一の際には紙カルテに記入ができる環境にしておくなど、一定期間は紙との併用も考えておきましょう。
また、電子カルテを導入したからといって、一切紙カルテを排除しなければならないということではありません。紙カルテの方が利便性の高い場合には一部紙カルテをそのまま残して使っているクリニック・診療所もあります。たとえば、前回診療を踏まえた上で時間的な経過を俯瞰して見ることにおいては、紙カルテに軍配が上がることも多くあります。
項目別の解析などは電子カルテ、個人データを総合的に見たいときは紙カルテというように、併用も選択肢に入れ柔軟に導入していくと躓かずに進めていけるでしょう。
ベンダー立ち合いのもと実際の運用手順に従って本稼働します。稼働後に発生した課題についてはベンダーにフィードバックし、解決していきます。保守・サポートの契約を結んでいれば運用後も継続的にメンテナンスをしてもらえるためより安心です。
クラウド型のサービスの場合、コストを抑える分標準サポートに関しては簡易的なものしか用意されていない場合もあるので、有料オプションでどこまで対応してもらえるのかチェックしておくと安心です。
実際に運用してみて、バージョンアップ・改定作業や院内業務全般のコンサルティングといったサポートが必要となった場合には、専用のサポート業者や代理店を紹介しているベンダーもあります。手厚いサポートを望む場合には選定の際に考慮に入れておくとよいでしょう。
数回のデモチェックではわからない、シェーマの入力、カルテ記載完了までのクリック数や簡易入力のための「診察セット登録」機能などについては、導入後に不満が生じやすいポイントです。実際に導入しているクリニックの使用感をあらかじめ営業担当者へ確認しておきましょう。トラブルや不具合の現状とサポート体制についても明確に答えられる担当者であれば、信頼のおけるサービスといえます。
200床未満の病院やクリニック・診療所での電子カルテの普及率は40%前後とまだまだ低いのが現状です。しかし、一方で新規開業のクリニック・診療所においての電子カルテの導入率は70~80%以上と言われています。
厚生労働省も引き続き医療等分野におけるICT化を推進しており、今後も普及率が伸びていくことが見込まれています。イニシャルコストやランニングコストに置ける懸念点もクラウド型のサービスや中小規模の医院向けに開発された電子カルテによって解消されてきており、追い風となっています。
電子カルテを導入するだけですべての業務効率が一足飛びに改善されるわけではありませんが、その特性を理解し、有効な機能を見極めて導入を進めていく過程の中で開業のビジョンが明確化され、より良い診療の一助となることは間違いないでしょう。
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電子カルテシステムのさらに詳しい選び方は、こちらの選び方ガイドをご覧ください。
電子カルテシステムの選び方ガイド
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