最終更新日:2024-08-28
発注業務の負担軽減や在庫管理問題の解決のため、自動発注システムの活用を検討している小売業のマネージャーへ。自動発注システムの発注方式、主な機能、タイプと選び方をもとにおすすめのシステムを紹介します。
小売業向け自動発注システムとは、商品販売数や在庫数、需要予測などのデータを活用しながら、発注プロセスを自動化するシステムのことです。
発注業務には在庫、陳列量、特売の有無、季節需要、賞味期限など、考慮すべき要素が多くあります。そのため、担当者の業務負荷が非常に高いことや、属人化しやすいことが課題でした。また、需要を読み間違えると在庫過剰や廃棄、欠品による機会損失といったリスクにつながるほか、紙ベースの発注では記入や計算の間違いといった人的ミスのリスクも。
これらの課題を解決する仕組みとして注目されているのが、自動発注システムです。
小売業向け自動発注システムでよく扱われる発注方式は、以下の3つです。導入の際には、どの発注方式に対応しているものが適切か確認しましょう。
商品が売れた分の数量をもとに発注する方式で、「セルワン・バイワン方式」とも呼ばれます。はじめに基準となる数量を各商品に設定しておくと、基準数量を売り上げるごとに同じ量を自動で発注。発注のロジックがわかりやすく、発注忘れによる欠品を防止できる一方で、細かな発注による物流コストの増加や、需要低下時に在庫余りが発生しやすいといった難点があります。
商品在庫が一定のライン(発注点)を下回ったときに発注する方式。発注商品が入荷され、在庫数が発注点を超えると発注を停止します。リアルタイムで数量を把握するのが難しい商品や、納品・補充作業を減らしたい商品、在庫不良となってもそれほど損失が大きくない商品の管理に有効な方式です。
AIなどを活用して売れ行きを予測し、そのデータをもとに発注する方式。ひとくちに需要予測といっても、参照するデータによって様々です。たとえば、「B-Luck 自動発注」では季節商品の需要予測や、価格や客数、これまでの特売販売実績データなどと掛け合わせた特売需要予測、波動需要予測などに対応しています。
更に、賞味期限が短いうえに種類も多いことから、ロスが出やすいパン商品のために、「ロスを最小限におさえるパン需要予測機能」なども。フードロスの抑制、チャンスロス改善、売上向上が期待できます。
システムによって多少の違いはありますが、本記事で紹介する小売業向け自動発注システムには、以下のような機能が搭載されています。
在庫計算 | 棚卸、販売、入荷などの情報と連携し、リアルタイムで在庫情報を把握。欠品時の通知設定や、スマホでの在庫確認ができるシステムも |
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客数予測 | 来客数の実績や天候、気温、イベント情報などから、日別や時間帯別の客数を予測。需要予測に役立てるほか、シフト計画にも活用可能 |
需要予測 | 販売実績や客数予測、価格などのデータを分析し、商品ごとに需要を予測する |
自動発注 | 需要予測と客数予測の結果や在庫状況、あらかじめ決めておいたルールなどに従って、システムが自動で商品を発注。利益が最大になるよう調整して発注し、売上アップやロス削減に貢献する |
そのほか、たとえば「需要予測型自動発注システム(株式会社日立システムズ)」では陳列数の拡大・縮小の最適化を起案する機能、「sinops-CLOUD」では賞味期限管理機能など、業界ごとの課題に合わせたユニークな機能で日々の発注や在庫管理を効率化します。
小売業向け自動発注システムは、以下のよう3タイプに分けられます。自社の業態と照らし合わせ、合致するものをチェックしてみてください。
スーパーなどにおいて、グロサリーや日配品などの発注を自動化したい場合向け。パンや惣菜など、廃棄ロスと機会損失ロスのバランスが難しい商品にも対応しているのが特徴です。
たとえば、「MDware自動発注クラウド」では、販売基準型(発注点方式)と需要予測型のそれぞれに対応。どちらか一方でも導入可能です。好調・不調な商品だけ手動で発注数量をコントロールしたい、イベント時のみ発注数量を増やしたいといった個別のニーズにも応えられます。
食料品店に加えて、ドラッグストアやホームセンターなどの量販店でも使えるシステム。発注の手間削減だけでなく、過剰在庫の削減や欠品率を下げたい場合に適しています。物流の適正化を図る機能を備えているのも特徴です。
たとえば「B-Luck 自動発注」では、欠品率が当初の1.5%から0.7%にまで改善されたという事例も。人気商品の欠品が解消されただけでなく、全体としては無駄な在庫数が大きく削減しました。
食料品店以外の量販店向けシステム。食料品店+量販店向けタイプと同様に、発注の手間を減らすだけでなく、過剰在庫の削減や欠品率の低減に有用です。
たとえば、「FULL KAITEN 〈補充発注〉」では、自動発注の定数(発注点)の設定が可能。品番ごとに売上状況や販売数予測に応じて定数を適宜更新できます。結果として「欠品率が大きく下がったうえ、在庫回転率も向上した」という企業も。
また、商品の種類に特化した機能も多いため、自社の取扱商品に適したサービスを選びましょう。
主な小売業向け自動発注システムのうち、食料品店向けのものを紹介します。
※料金はすべて要問い合わせ
(出所:sinops-CLOUD公式Webサイト)
需要予測データを活用し、7種類の機能で食品ロスを削減するクラウド自動発注サービス。リアルタイム在庫、客数予測、日配、グロサリー、惣菜、AI値引き、本部送込といった小売業に必要な機能が一通りそろう。いずれも現場での使いやすさに強みを持つ。
たとえば惣菜に特化した機能では、インストア加工惣菜にも対応し、生産計画の最適化や原材料の自動発注までカバー。値引きや廃棄ロスを削減し、利益増大に貢献する。また、客数予測の精度も90%以上と高く、45日先までの販売・シフト・生産計画に活用できる。
(出所:AI-Order Foresight公式Webサイト)
統計解析とAIを組み合わせることで高度な需要予測を行う、全カテゴリ対応型の自動発注システム。日配品・生鮮品にも対応し、スタッフの経験に依存しない発注業務で、フロア部門の一体化を実現する。
AIが日々の発注からデータを取り込み、販売数量予測、客数予測、PI値算出、最適発注数算出を行う。刻一刻と変化する販売状況にあわせて予測モデルを自動改善するので、専門家がいない企業でも予測精度の維持・向上が可能に。また、導入効果の事前検証や運用後の改善提案など、サポートが充実している点も特徴。地域の催事など、店舗独自の変動要因を都度リサーチし、追加検討を提案してくれる。
(出所:OrderPartner AI自動発注公式Webサイト)
人手不足やスキル格差による業務水準のばらつきをAI需要予測で是正する、自動発注システム。精度の高い需要予測と、売場在庫と後方在庫の適正化を通じて、店舗運用の全体最適を実現する。
過去の販売実績データと天候、特売、曜日、季節、イベントといったデータを掛け合わせ、AIが需要予測を実施。また、事前に陳列量の設定を行っておくと、最低陳列量を割り込まないよう先取り発注もできるため、安定した売り場づくりに役立つ。
システムはクラウド、オンプレの両方に対応。伴走型の導入運用支援も行っており、自動発注運用が軌道に乗るまで、アセスメントや改善支援などの手厚いサポートを受けられる。
(出所:MDware自動発注クラウド公式Webサイト)
売上基準方式と需要予測方式の2つの方式で、商品ごとに最適な発注を行う自動発注システム。加工食品や飲料などは売上基準型で、日配品や生鮮品には需要予測型で対応する。
好調商品や不調商品に合わせた「増数」や「減数」の設定や、イベントなどの拡販発注時には自動発注を停止するといった、現場に即した機能が強み。拡販発注の場合、拡販発注数分が完売するまで自動発注は停止され、その後基準在庫に戻る。PDAスキャンによる情報表示、自動発注対象外商品のワンクリック補充なども使い勝手が良い。
また、AI客数予測サービスと連動することで、より精度の高い販売予測が可能に。
主な小売業向け自動発注システムのうち、食料品店向けおよび量販店向けのものを紹介します。
※料金はすべて要問い合わせ
(出所:B-Luck 自動発注公式Webサイト)
顧客台帳やシフト管理なども展開する、流通・小売業向けソリューション「B-Luckスイーツ」の自動発注システム。季節商品、特売、 独自カテゴリといった需要予測の種類と範囲に強みを持つ。
自動発注にはAIの需要予測を活用。特売需要予測や最小のロスを見込んだパン需要予測、高周期商品と低周期商品の波動需要予測など、小売店舗の現場に寄り添ったソリューションも豊富にそろう。また、PCやタブレットを発注端末として使用できる運用Webアプリ「ピッピWeb」を備えるのも特徴だ。
発注管理・在庫管理はもちろん、イレギュラーな販売情報を除外するノイズカット機能や、一致率・欠品率などを参照するデータ分析機能で、店舗担当者の負担を大幅に軽減する。
(出所:需要予測型自動発注システム公式Webサイト)
スーパーやドラッグストア、ホームセンターなどの流通・小売量販店に特化した、需要予測型の自動発注システム。日々の自動発注だけでなく、需要予測データをバックヤードや在庫センターの効率改善にも活用でき、商品改廃や物流の見直しによる全体適正につなげる。
天候や特売、ポイント付与などの変動要素を加味した高精度の需要予測で、シーズン品や足の短い惣菜などの発注業務を効率化。加えて、廃棄ロスと欠品時の機会損失のトレードオフも解消する。また、曜日で納品量が変動する商品は、需要予測をもとに前倒し納品することで、店舗の負担軽減と人員配置の平準化が可能に。
主な小売業向け自動発注システムのうち、量販店向けのものを紹介します。
※料金はすべて要問い合わせ
(出所:FULL KAITEN 〈補充発注〉公式Webサイト)
業務負荷の削減と欠品抑制のための発注数予測サービス。過去の売上データから日々の販売数をAIが毎日予測し、在庫数・発注残・リードタイムを考慮しつつ適正な発注点を算出。既存の発注システムがそのまま読み込める発注書を作成する。利用中の発注システムをリプレイスせずに、発注業務を効率化したい場合におすすめだ。
需要予測の際には、発注・発送ロットや発注数の上限・下限設定など、実務に即したロジックの反映も可能。基幹システムとのデータ連携もシステム側で自動変換するので、導入時のカスタマイズ負担を抑えられる。アパレル、スポーツ用品などの業界で多数の導入実績を持つ。
発注は正確性が求められる業務です。自動発注システムを利用すれば、計算ミスや記入ミスといった人的な発注ミスを防ぎ、正確な需要予測や在庫管理を実現できます。また、担当者のスキルによらないシステム構築で、人員配置の平準化と効率化を進められます。
自動発注システムを選ぶときは、以下の3つのタイプから自社に合うものを選んでいきましょう。
適正な量の発注ができれば、コストカットによる経営改善や、欠品による顧客満足度低下の防止に役立ちます。この機会に、自動発注システムの導入を検討してみてください。
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