最終更新日:2024-11-11
医療現場の業務負荷を減らしたい方や、より精度の高い診療サポートを求めている方へ。診療文書の作成効率化や患者対応の自動化を進める医療向け生成AIサービスについて、概要や活用事例、タイプと選び方、おすすめのサービスを紹介します。
医療向け生成AIサービスとは、医療分野に特化したAIを用いて、医療事務をはじめ様々な業務を効率化・自動化するサービスです。
大量の医療データ、医学論文、診療ガイドラインなどを学習し、正確な医療用語を取得しているため、汎用的な生成AIと比べて、事実と異なる情報を作り出す「ハルシネーション」を起こしにくい点が特徴です。
医療現場では、退院サマリーの生成や画像・音声のテキスト化といった文書作成支援をはじめ、医師・看護師の業務支援、患者への情報提供など、幅広い場面で活用されています。これにより作業効率が向上し、待ち時間の短縮による患者数の増加や経営改善につながります。また、セキュアな環境での利用が可能なため、医療情報の取り扱いも安心です。
多くの医療機関ではすでに電子カルテシステムを導入しており、そのデータを活用したAI開発が進んでいます。
なお、画像診断支援といった直接的な診療へのAI活用も始まっていますが、本記事では、より実用段階に入っている事例の多い、管理・書類作成のサポート業務に焦点を当てて、医療向けAIサービスを紹介します。
事務作業を支援する医療向け生成AIサービスは、特に次のような業務支援で活用されています。具体的な活用事例とともに、医療向け生成AIサービスの主な機能をご紹介します。
診断書や証明書、意見書、退院時サマリー、診療情報提供書など、医療機関が患者に対して発行する様々な医療文書。医療向け生成AIサービスを使えば、多様な文書が入力・推敲の手間なく簡単に作成できます。
わかりやすい例の一つが、患者の病歴や入院時の所見、入院中の医療内容などをまとめた「退院サマリー」の作成支援機能です。幅広い医療機関で導入が進んでいる「ユビーメディカルナビ 生成AI」では、作成時間を最大1/3にカットした事例も。
NECが開発した「cotomi(コトミ)」の場合、電子カルテから退院サマリーの下書きを作成。医師の確認・修正のもと、ほかの医療機関や患者へ共有するフローになっています。セキュリティに強みを持つ「ALYアシスタント」でも、退院サマリーなどの医療文書ドラフトを自動生成。つい簡略化しがちな記載内容を、わずか数分で過不足なく作成できるようになったとの声があがっています。
退院サマリー同様に記載内容の多い紹介状や紹介返書の作成も、生成AIサービスであれば短時間で完了します。「ユビーメディカルナビ 生成AI」では、業務にかかる時間を最大1/2に短縮した実績を持ちます。
レセプトに記載する症状詳記の作成サポート機能を備えたサービスもあります。「cotomi」は過去のデータから記載条件を取得し、電子カルテから必要な情報を抽出して症状詳記の下書きを自動作成。医師は確認・修正ののち審査支払い機関に提出するだけと、従来よりも大幅に手間と時間を削減できます。
「ユビーメディカルナビ 生成AI」のように、電子カルテへの診療記録の文章作成をサポートするサービスもあります。手入力作業の負担が軽減されることで、医師は通常業務に加えて研究論文作成の時間を捻出できる、看護師は患者のケアに専念できるといったメリットが期待できます。
医療機関の収入に直結する診療報酬請求業務は、複雑なルールと膨大な作業量が大きな課題。医療向け生成AIサービスを使えば、算定にかかる時間を短縮し、最小限の労力で業務が完了します。
大規模言語モデル(LLM)を活用した「GaiXer(ガイザー)」は、順天堂大学との提携により診療報酬算定の労力を減らす仕組み作りに成功。順天堂大学が提供する電子カルテから、わずか数分で算定を行います。従来は病院全体で数日かかっていた作業の効率化によって、医療現場の負担軽減、患者の待ち時間短縮が期待できます。
AWSによる生成 AIサービス「Amazon Bedrock」では、カルテを基準に従ってコード(符号)化する医療コーディングの自動化が可能。医療コーディングと医療請求の事前承認を自動化することで、規制やコンプライアンス要件を満たしながら、エラーや管理タスクの数を減らします。
あらかじめAIによる問診を行うことで、効率的かつ正確な診察が実現します。AI問診に強みを持つ「ユビーメディカルナビ」シリーズの「ユビーAI問診」は、患者の主訴などをもとにAIが最適化された質問を自動生成・聴取。病名辞書リストアップ機能など、非専門領域の業務効率化をサポートし、研修医や若手医師の育成にも活用できる機能もそろいます。
「ユビーAI問診」と順番予約システムとの併用でカルテの事前準備を実現したクリニックでは、隙間時間でカルテの作成ができるようになり、患者数の増加に対応できるように。診断支援としても活用するほか、多角的なヒアリングで患者の抱える情報を上手に引き出せるようになったと多くのメリットを挙げています。
AI問診について詳しく知りたい方は、Web問診システム比較15選。健診向け含めタイプ別に紹介もご覧ください。
中には最新の医学情報を提供し、臨床現場での意思決定をサポートするサービスもあります。
医学情報の収集・取得・検索に強みを持つのが、医師向けの臨床支援アプリ「HOKUTO」。文献へスピーディーにアクセスでき、検索機能も充実しているため、時間がないシーンでも適切な情報に素早くリーチできます。
また、医療に特化した大規模言語モデルを使った米国発の「Hippocratic(ヒポクラティック) AI」は、医療分野の専門用語や知識を大量に学習している点が特徴。エビデンスをもとにした情報を提供し、医療従事者の判断をサポートします。
医療向け生成AIサービスは、効率化したい業務によって大きく4つのタイプに分けられます。
医師が行う事務作業を効率化する機能を豊富に備えるタイプ。電子カルテへの記録や、退院サマリーの作成、紹介状や議事録の要約、診断書の文書作成など、様々な医療文書に対応しています。医療現場での書類作成や、情報の要約を効率化したい場合に適しています。
代表的な例が、地域医療から高度先進医療まで1,700以上の機関で利用されている「ユビーメディカルナビ 生成AI」です。診断書や紹介状はもちろん、電子カルテへの記録から、議事録やICの音声録画機能による文字起こしと要約まで、幅広く対応。負荷の高い業務の効率化・均一化に寄与します。
AIチャットボットを備え、患者とのコミュニケーションツールとしても活用できるタイプ。上記(1)の業務に加え、診療予約業務も効率化したい場合におすすめです。
HPのAIチャットボットとしても広く活用されているのが、エンタープライズ向けのAGI(汎用人工知能)プラットフォーム「GaiXer」。マニュアルやFAQ、議事録といった様々なドキュメントを学習させることで、医療機関ごとの特有の情報に即した回答を生成できます。使いやすいUIや、テンプレート、プロンプトエンジニアなど充実のサポートで、AIに不慣れでも安心です。
情報の収集に強みを持つタイプ。最新かつ安全性の高い情報を、効率的に収集・保存して診療を効率化したいという声に応えます。
医師向け臨床支援アプリ「HOKUTO」では、最新の医学情報を無料で提供。アプリ内で入手した情報はもちろん、臨床現場で経験したピットフォール、勉強会で配布されたPDFなど、多様なデータを保存できます。薬剤情報、専門医監修の診療マニュアルなどからの、横断的な情報検索も可能です。
生成 AI アプリケーションの構築のため、幅広い機能を搭載したタイプ。ドキュメントを要約して意思決定を加速させる、医療画像を解釈する、医療請求を効率化する…など、現場のサポートから、収集した情報に基づくマーケティングデータの抽出まで対応しています。医療機関ごとの目的や、用途に合わせた環境構築も得意です。
最新のAIモデルを手軽に利用できるのが、AWSによる「Amazon Bedrock」。様々な基盤モデルから目的に応じて選択するだけで、すぐにAIを活用できます。サーバーレスのため、管理の手間がかからない点もポイントです。
ここからは、4つのタイプ別におすすめの医療向け生成AIサービスをご紹介します。
(出所:ユビーメディカルナビ 生成AI公式Webサイト)
病床規模や職種を問わず、幅広い医療業務の負担を軽減する生成AIサービス。文章作成、画像認識、音声認識、文章検索など、AIを効果的に活用した豊富な機能がそろう。生成の質に関わる命令文を、多数の実証実験やプロンプトサンプルの蓄積により最適化。ハルシネーションを抑制しながら、書類作成業務を効率化する。
患者とのコミュニケーションツールとしても活用できるAI問診も強み。AIを使った事前問診により、診察時間の短縮、待ち時間解消、事前準備の効率化を実現し、初診の患者が増加した実例が多数報告されている。
(出所:MegaOak/iS AIメディカルアシストAI公式Webサイト)
国内初となる、生成AI搭載の電子カルテシステム。大規模言語モデルを活用し、医療文書の作成をサポート。電子カルテに記載された診療情報に基づき、診療情報提供書(紹介状)と退院サマリーに活用できる文章案を自動生成する。生成された文書には引用元である電子カルテの内容が表示され、エビデンスを効率的に確認できる。
今後は各種クラウドサービスをセキュアに接続する「MegaOak Cloud Gateway」を利用し、ほかの電子カルテシステムとの連携も実装予定。
(出所:ALYアシスタント公式Webサイト)
医療文書の自動生成や、電子カルテの情報検索をサポートするAIアシスタント。セキュリティ面に強みを持ち、暗号化やゼロトラストの技術を用いて院内のデータに安全にアクセス。医療文書のドラフトを自動生成し、医療従事者が患者のケアといった本来のコア業務に注力できるよう支援する。
電子カルテからデータを抽出し、退院サマリ、紹介状などの書類を簡単に作成。必要な情報の作成・検索をスピーディーに行えるため、臨床現場や研究など、様々なシーンで活躍する。
(出所:medimo公式Webサイト)
累計診察数10万件を超える、AIを使ったカルテの自動作成アプリ。医療に特化して学習させた独自開発のAIが、診察時の会話を文字起こしし、カルテを自動作成。正確な医療用語を用い、SOAP形式に対応したカルテ原稿を数秒で作成する。カルテ内容は医師一人ひとりの好みに合わせてカスタマイズ可能。
クラウド、オンプレ両方に対応した専用デバイスで、カルテ転送も安全かつ容易。「カルテの記載内容を均一化したい」「カルテに記載されていない診察内容を再確認したい」「PCではなく患者の目を見て診察したい」といった声に応える。
(出所:cotomi公式Webサイト)
NECが開発した医療機関向けの生成AI。高い日本語性能とレスポンス速度を両立したNEC独自の大規模言語モデルを備え、他社比最大150倍の長文処理能力を有する。
医療文書の作成サポートはもちろん、外来受付の自動化、オンライン診療の効率化にも対応。外来受付では、AIチャットボットを利用しての次回診察予約可能日の提示や、予約の取得・変更を行える。対象科の空き状況をAIが検索して患者に示すなど、医療従事者の手を煩わせない仕組みになっている。
(出所:GaiXer公式Webサイト)
Microsoftの「Azure Open AI Service」を利用したエンタープライズ向けAGIプラットフォーム。URL、.txt、.csv、.pdfなど、形式にとらわれない様々な情報を学習でき、文章作成はもちろんAIチャットボット、カスタマーヘルプデスクの支援としても活用されている。
学習させる情報の漏えいを徹底的に対策したセキュアな環境で、BingやGoogleなどに基づいた回答生成を行う。編集可能な業種別のプロンプトテンプレートを備えるほか、プロンプトエンジニアが高品質な文章作成をサポートしてくれるのもポイント。直感的な独自設計のUIで、誰でも使いやすい。
(出所:HOKUTO公式Webサイト)
無料で使える医師向けの臨床支援アプリ。有名研修病院からのナレッジシェアや、臨床試験の内容や流れが一目で分かるビジュアル・アブストラクトを配信し、最新の医学情報が簡単に入手できる。保存機能・検索機能も備え、エビデンスに基づく情報に素早くアクセスが可能。
対話型AI技術の導入により、患者への説明内容の考案、おすすめ医学論文の検索と要約・コメントの出力も実現。子ども向けの平易な説明文書も作成できるほか、英語翻訳にも対応している。
臨床予測ルールや抗菌薬の腎機能投与量計算など、EBMに基づく500以上の医療計算ツールも追加料金不要で利用できる。
(出所:Hippocratic AI公式Webサイト)
投資家や専門家から注目を集める、アメリカのスタートアップ企業が運営。医療向けに特化し、安全性を重視した大規模言語モデルを備え、医療の精度と安全性向上に貢献する。独自の「3T+ パラメータ構造」を採用し、病院や保険会社のポリシーに合わせた情報提供なども行う。
患者の症状や段階に応じて看護師に転送するエスカレーションプロセス、栄養バランスなどを考慮したメニューの提案といった、人間とAIとの連携によってより質の高い医療を実現する機能もそろう。
(出所:Amazon Bedrock公式Webサイト)
AWS提供の生成AIアプリケーション作成サービス。APIを通じて、「テキスト生成」「バーチャルアシスタント」「テキスト・画像検索」「テキスト要約」「画像生成」といった基盤モデルから自身の環境に即したAIを作成できる。既存の基盤モデルのカスタマイズや、既存の AWS サービスを使用しての生成 AI 機能とアプリケーションの統合も可能。サーバーレスのため、インフラストラクチャを管理する手間がない。
Amazon Bedrockを利用した、医療分野に特化した臨床文書自動生成サービス「AWS HealthScribe」を利用することで、医師はEHRに入力するための詳細情報を手動で収集する必要がなくなり、患者との対話に集中できるようになる。
料金プランは従量課金制の「オンデマンド」と時間や期間をベースにした「プロビジョンドスループット」の2種類あり、利用するモデルやプロバイダーによって金額が異なる。
医療文書の要約・作成、情報の検索・表示といった機能で、医療現場の業務効率を上げる医療向け生成AIサービス。近年特に実用化が進んでいるのが、管理・書類作成のサポート業務を支援する機能を持った医療向けAIサービスです。退院サマリーや紹介状などの医療文書作成支援、診療報酬算定の効率化、問診支援、医師の情報収集・業務負担軽減に寄与します。
医療向け生成AIサービスは、効率化したい業務によって大きく4つのタイプに分けられます。
(1)医師の事務作業の効率化に特化
(2)事務作業+外来受付の自動化にも対応
(3)臨床現場での意思決定の支援に特化
(4)幅広い用途をカバー
生成AIを活用することで、幅広い文書をわずかな時間で作成できます。最新の情報をスピーディーに検索・確認できるため、非専門分野における判断材料の効率的な収集にも役立ちます。最小限の人数で運営している機関や、僻地医療おいては、特に大きな効果が期待されます。
患者や研究に割く時間を増やすためにも、AIを賢く利用してみてはいかがでしょうか。
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