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eKYCとは?オンライン本人確認の種類・やり方、利用法を簡単に

eKYCとは?オンライン本人確認の種類・やり方、利用法を簡単に

最終更新日:2024-07-29

「eKYCとはどういうものなの?」という疑問をお持ちの方へ。オンライン上で本人確認を完結できるeKYCサービスについて、概要からメリット・デメリット、種類・やり方、利用法まで、わかりやすく解説します。

目次

eKYCとは?

eKYCとは、「electronic Know Your Customer」の略語で、郵送や対面で行われていた本人確認をオンライン上で完結できる仕組みのことです。読み方はそのまま「イー・ケー・ワイ・シー」。「オンライン本人確認」「デジタル認証」とも呼ばれています。

eKYCサービスを利用すれば、スマホ・PCから顔写真や身分証のアップロードが可能。本人確認手続きにおける利用者・事業者双方の手間を大幅に軽減できます。

eKYC(オンライン本人確認)のメリット

銀行口座開設・クレジットカード発行などを行うためには「本人確認手続き」が必要です。従来は店舗を訪れて行うのが一般的で、一部では郵送手続きが認められていたものの、利用者・事業者双方にとって「サービスの利用開始まで時間がかかる」「確認に手間がかかる」など多くの問題点が挙げられていました。

eKYCなら、利用者はスマホで自分の顔と身分証を撮影してアップロードするだけ。早ければ即日で本人確認を完了できます。

ekycのメリット_ekycの概念図_ekycの流れ_kycとの違い

<利用者のメリット>

  • 本人確認の手間・時間が減る
  • すぐにサービスを利用できる

<事業者のメリット>

  • 本人確認手続きにかかる負担が減る
  • 書類郵送や封入・印刷のためのコストを削減できる
  • 利用者の離脱を防ぐことで、サービス利用率が向上する
  • 生体認証などを組み合わせることで、本人確認をより厳密に行える

eKYC(オンライン本人確認)のデメリット

一方で、eKYCにはいくつかのデメリットや注意点もあります。たとえば、「eKYC対応アプリのインストール方法がわからない」「本人確認書類をうまく撮影できない」など、利用者のITリテラシーによっては対応できないケースも考えられます。

また、多くの場合、運転免許証やマイナンバーカードといった顔写真付きの本人確認書類を持っていない利用者は、そもそもeKYCを利用することができません。注意点としては、eKYCに関する法規制は頻繁に改訂される可能性があるため、常に最新の法規制に留意しておかねばならない点などが挙げられます。

とはいえ、ここ数年コロナ禍による感染症対策の一環として、対面から非対面への移行が迫られたことにより、eKYCを導入する企業は増加傾向にあります。

本記事では、eKYCの導入が進んでいる背景、仕組みや安全性、具体的な利用場面までわかりやすくご紹介します。

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eKYCの導入が進んでいる背景

eKYCの理解を深めるために、まずは、その前提となる「KYC」とはそもそも何なのか、というところから見ていきましょう。

KYCとは?

KYC(Know Your Customer)とは、マネー・ロンダリングやなりすましなどの不正行為のリスクを低減するために義務付けられた、本人確認手続きの総称です。この“リスクの高い行為”には、銀行やクレジットカード会社などが行う銀行口座開設やクレジットカード発行などが含まれます。

銀行やクレジットカード会社は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、「犯収法」)に基づき、顧客の本人確認を適切に行う義務があります。

また、不正行為の早期発見や防止を図るため、KYCの手続きに、顧客の身元確認(IDの提出)に加え、リスク評価や継続的なモニタリングも含まれる場合もあります。

<本人確認が義務付けられている主な領域>

対象機関 根拠法 目的
金融機関・証券会社等 犯罪収益移転防止法 マネー・ロンダリング等の防止
携帯電話事業者 携帯電話不正利用防止法 携帯電話の犯罪利用の防止
リサイクル業者 古物営業法 盗品等の売買の未然防止
マッチングアプリ運営業者 出会い系サイト規制法 未成年の利用防止・児童保護

eKYC誕生の背景

10年ほど前までは、KYCの大半は対面による手続きで行われていました。一部、来店せずに、郵送で書類をやりとりして本人確認を行う非対面手続きも認められていましたが、この場合、より厳格な手続きが必要になってきます。取引の安全性は担保できるものの、その一方で「工数がかかりすぎる」「負担が大きい」「途中で面倒臭くなって離脱してしまう」などの課題が挙げられていました。

そのような状況を打開するべく、2018年の「犯収法」施行規則の改正により認められたのが、オンラインでの電子的な本人確認「electronic KYC(eKYC)」です。これにより銀行口座開設・クレジットカード発行も、手持ちのスマホを使って、簡単にオンラインで本人確認手続きを完了できるようになったのです。

 

eKYCによる本人確認の種類・やり方

eKYCの概要が理解できたところで、続いては、オンライン上の本人確認のやり方には「どんな方法があるのか」について説明します。

eKYCの本人確認の種類と傾向

本人確認の種類としては、現在、犯収法により以下の方法が認められています。

1. 6条1項1号ホ 「本人確認書類の画像」と「本人の容貌の画像」の送信
2. 6条1項1号へ 「本人確認書類のICチップ情報」と「本人の容貌の画像」の送信
3. 6条1項1号ト 「本人確認書類の画像もしくは本人確認書類のICチップ情報」の送信と事業者による「銀行などへの顧客情報の照会」(※)
4. 6条1項1号ワ 「公的個人認証(電子署名)」の送信

※銀行照会に代わり、少額振り込みとインターネットバンキング記録の画像送信でも可能

ただし、その利用には偏りがあり、実際に利用されている事例の多くが「1.」「4.」に限られています。

  • 「1.」はスマホのみで本人確認が完結できるので手間がかからないから
  • 「4.」は本人確認手段であるマイナンバーカードが急速に普及しているため

「2.」「3.」のやり方は、なりすまし防止などセキュリティには長けているものの、ICチップの読取にICカードリーダやNFC対応スマホなど専用のデバイスを用意しなければならないなど、色々手間がかかるため、導入する企業が限られているのが現状です。

具体的な本人確認の仕組み・やり方

続いては、具体的に「どのようにしてオンライン上で本人確認が行われるか」です。eKYCを使った本人確認の仕組み・安全性を、オンライン本人確認の主流である「1.」を例にしながら、詳細に説明していきます。

1. 6条1項1号ホ 「本人確認書類の画像」と「本人の容貌の画像」の送信

用意するもの

• 写真付き本人確認書類(たとえば運転免許証など)、それを写した画像
• その場で申請者「本人の容貌」を写した画像(事前撮影した画像は使用不可)

撮影方法

事業者が提供するソフトウェアを使用して撮影します。スマホ内蔵のカメラアプリなどは使用できません。本人確認書類と本人の容貌をそれぞれ別個に撮影するケースもあれば、本人が運転免許証など確認書類を持って一度にフレーム内に収めるケースもあります。

本人確認の強化のため、撮影中に「上を向いて、下を向いて」など指示を出して複数の角度で撮影するものや、動画やビデオ通話機能を利用するものもあります。

送付方法

事業者が提供するソフトウェアを使用して送信しなければなりません。メールなどの既存ソフトは使用できません。

判定方法

送付した身分証に記載されている本人写真と容貌写真、本人情報と申請情報が一致することを確認したら本人確認完了です。照合作業は、オペレーターが行う場合、AIの画像識別が行う場合、その両者を組み合わせる場合など、事業者によって異なります。

自社で照合作業を行うことが難しい場合は、「TRUSTDOCK」のように本人確認の照合作業をアウトソースで請け負ってくれるサービスもあります。

認証精度

顔認証やAI技術の進歩に伴い、年々高まっています。

たとえば、「Digital KYC」に搭載された顔認証AIエンジンは、米国国立標準技術研究所による性能評価で5回も第1位を獲得。誤判別率0.5%という優れた精度を持っています。

また、「Polarify eKYC」で使用されているDaon社の顔認証技術は世界各国の金融機関で実績のあるものなので、十分に信頼できるサービスと言えるでしょう。

利用可能な本人確認書類の種類

「氏名・住所・生年月日が記載された写真付きの本人確認書類原本」が必要です。具体的には次のようなものが挙げられます。

  • 運転免許証
  • 運転経歴証明書
  • 在留カード
  • 特別永住者証明書
  • パスポート
  • マイナンバーカード
  • 住基カード

なお、写真のない健康保険証などはeKYCの本人確認に用いることはできません。

また、政府はeKYCに限らず、本人確認書類としてマイナンバーカードの原則利用を掲げています。その一環として現行の健康保険証を2024年12月2日に廃止することを決定(最長1年間の猶予期間あり)。そのほか、運転免許証、在留カードに関してもマイナンバーカードとの一本化に向けた検討を進めています。

 

eKYCの主な利用場面・運用法

続いては、eKYCが実際にどのような場面で利用されているのかについてです。

eKYCは様々な場面で用いられていますが、「法規制に基づいて行われている場合」と「自主的に利用されている場合」に大別されます。

法規制に基づいて行われている場合

法律上、本人確認が義務付けられている場合です。

たとえば、「犯収法」では本人確認が必要な事業者として以下の事業者を挙げています。事業者が行うすべての行為に本人確認が必要なわけではなく、その中でも、預貯金口座の開設や大口現金取引、クレジットカードの締結、そのほか、なりすましの疑いがある取引などハイリスク取引を行う際に、「取引時確認」と呼ばれる本人確認手続きを行うことが義務づけられています。

  • 金融機関等
  • ファイナンスリース事業者
  • クレジットカード事業者
  • 宅地建物取引業者
  • 宝石・貴金属等取扱事業者
  • 郵便物受取サービス事業者(いわゆる私設私書箱)
  • 電話受付代行者(いわゆる電話秘書)
  • 電話転送サービス事業者
  • 司法書士又は司法書士法人
  • 行政書士又は行政書士法人
  • 公認会計士又は監査法人
  • 税理士又は税理士法人
  • 弁護士又は弁護士法人

本人確認を義務付けている法律は「犯収法」に限りません。そのほかにも、質屋や古物買取事業者は「古物営業法」を根拠として、通信キャリアは「携帯電話不正利用防止法」を根拠として、マッチングアプリや出会い系サイト運営者は「出会い系サイト規制法」として、というように様々な法律により、多くの事業が様々なシーンで本人確認を行うことが法的に義務付けられています。

なお、犯罪手口の高度化・巧妙化によっては上記に限らず、今後法規制の範囲が広がることが予想されます。たとえば、2023年の特殊詐欺グループによる広域強盗事件では、居場所・発信元が追及されにくい「050アプリ電話」などが連絡手段として利用されていたことから、今後はIP電話事業者などにも新たに本人確認手続きが義務付けられるようになるのではないかと言われています。

自主的に利用されている場合

現状、法的に本人確認が義務付けられているわけではないものの、顧客の安心・安全への配慮に基づき、自主的に本人確認が行われるケースです。

代表例としては、プラットフォーム上でのユーザー間取引が挙げられます。トラブルが起こった際に備えて、本人確認を行っておく必要があることから、より効率的に本人確認が行えるeKYCが利用されています。

厳格な本人確認が必要な例がシッティングサービスです。過去にはマッチング型ベビーシッターサービスで派遣されたシッターによる犯罪行為が起きてしまいました。法整備はもちろんですが、事業者側でも身分証等による個人身元確認作業などを通して、事前に犯罪可能性のある者を除外できるようなリスク対策が求められています。

そのほか、eKYCを用いた本人確認が自主的に用いられている例としては、以下が挙げられます。

  • ソーシャル・ネットワークサービスの会員登録
  • チケット購入(不正転売防止)の本人確認
  • 行政のオンライン手続きの本人確認
  • コールセンターでの本人確認
  • 賃貸物件の内覧時の本人確認
  • オンライン診療の患者本人確認
  • オンライン試験の受験での本人確認

 

eKYCの利用を後押しする6つの理由とは?

最後に、なぜ近年多くの企業でeKYCの利用が進んでいるのか、その理由について触れておきます。次の6つの理由から、eKYCは今後も加速度的な普及が考えられます。

(1)従来型の本人確認の厳格化
(2)オンライン本人確認へのニーズの高まり
(3)eKYC利用による確認コスト・工数の削減
(4)eKYC適用範囲の拡大
(5)eKYC専用ツール・サービスの充実
(6)マイナンバーカードの普及から利用促進へ

以下、それぞれ詳しくご説明します。

(1)従来型の本人確認の厳格化

偽造書類による不正を防ぐため、犯収法が更に改正され、2022年からは従来型の非対面における本人確認書類の範囲が厳格化されました。かつては運転免許証の写しを1枚送ればよかったのが、今後は現住所が記載された本人確認書類をもう1つ送らなければならなくなりました。

このようなオフラインでの本人確認のハードルが上がったことで、オンラインへの切替えが更に進むと考えられます。

(2)オンライン本人確認へのニーズの高まり

多くの企業がサービスの利便性やスピードの向上を競い合う中、対面での手続きや郵送が求められる従来型の本人確認は明らかに不釣り合いです。サービスの利用開始に至らず、ユーザーが申込途中で離脱してしまう恐れが高まってしまいます。

今後、スマホやWebでダイレクトにやりとりできる、利便性の高いeKYCの仕組みを導入することが当たり前のように求められるようになるでしょう。

(3)eKYC利用による確認コスト・工数の削減

従来は、本人確認書類を1通ずつ受け付け、手作業で照合し、処理・保管、転送不要郵便の送付などを行わなければなりませんでした。それがオンラインで完了できれば、郵送に関するコストはもちろん、確認・郵送にかかっていた人的運用コストも大幅に削減することができます。オペレーターによる目視確認は残りますが、画面上で一度に確認できるので、ユーザー一人あたりの作業時間を大幅に短縮できます。

(4)eKYC適用範囲の拡大

犯収法改正後、メルペイやLINE Payなどのキャッシュレス決済サービスにeKYCが導入され、話題となりました。2020年には携帯電話不正利用防止法が改正され、携帯電話の新規契約やMNPの本人確認にもeKYCが認められるようになりました。今後もレンタル、不動産業務、各種金融サービスへの申し込みなど、社会的ニーズを受けて新しく台頭してきたサービス領域を中心に、適用範囲が拡大していくと考えられます。

それを受け、2023年3月に、デジタル庁は「民間事業者向けデジタル本人確認ガイドライン概要」を発表。ガイドラインでは今後は法的義務のない民間事業者でも利用が進むことを想定し、本人確認の目的や種類、手法、セキュリティ対策などの基本的な事項をわかりやすく解説しています。

(5)eKYC専用ツール・サービスの充実

eKYCに導入メリットがあるとわかっていても、「画像送信のための専用ソフトウェアの用意」「新たな社内運用体制の構築」などがハードルとなり、なかなか切替が進まない場合もあります。

近年ではそれらをクリアする専用ツール・サービスも数多く登場しています。また、犯収法では、ビデオ通話機能を使用しても良いとされています。撮影ソフトウェアや照合作業など必要な機能・業務のみを切り分けて提供してくれるもの、そもそもの本人確認フローの体制構築から一緒に相談に乗ってくれるようなものなど、利用しやすくなったことがeKYC導入につながっています。

(6)マイナンバーカードの普及から利用促進へ

マイナンバーカードはマイナポイント提供などの施策の甲斐あって、急速に普及しています。2024年7月時点での累計申請件数は約1億件。運転免許証の数値を超え、普及率は80%にも達しています(総務省「マイナンバーカード交付状況について」より)。

また、政府は健康保険証の廃止など、本人確認におけるマイナンバーカード原則一本化を検討しており、今後普及促進から「利用促進」へと軸足が移ることが予測されます。それに伴い、様々な局面でオンライン本人確認の利用が強まると考えられます。

 

主なeKYCツール・サービス

現在ではeKYCの本人確認を効率よく行うための専用ツール・サービスが数多く存在します。スマホアプリ版かブラウザ版か、AI利用の有無、対応している本人確認書類の種類、BPOのようなサービス提供型かシステム開発型か、などによって種類が分かれます。

以下、主なツール・サービスを特徴ごとに一覧でまとめてみました。eKYCサービスの導入を検討されている方は参考にしてください。より詳細を知りたい方は「eKYCサービス比較9選!タイプと選び方をわかりやすく紹介」をご参照ください。

サービス名称 特徴
TRUSTDOCK 導入実績250社以上。業務設計や確認業務のアウトソーシングにも対応。
ProTech ID Checker 累計導入社数200社以上。自動審査機能を搭載し、開発不要で月額18,000円~利用可能。
ネクスウェイ本人確認サービス 導入実績300社以上。オペレーターによる本人確認BPOサービスも提供可能。
GMO顔認証eKYC AI顔認証。確認件数最小50件〜で、利用回数が少なくても導入しやすい料金プランを設定。
Digital KYC 本人照合SDK 自社開発の顔認証エンジンによる顔認証の精度の高さが強み。
Polarify eKYC グローバルで金融機関へ導入実績のある生体認証技術を採用。

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まとめ

eKYCとは、スマホや顔認証などのデジタル技術を用いてオンライン上で本人確認を完結させる仕組みです。

従来の対面や郵送による本人確認と比較して、利用者と事業者の双方に時間短縮、コスト削減、なりすまし防止などのメリットがあります。

eKYCは、2018年の「犯収法」施行規則の改正により認められました。当初は、金融機関などにおける口座開設やクレジットカード発行時に義務付けられていましたが、近年では、キャッシュレス決済サービスや携帯電話の新規契約など、適用範囲が拡大しています。

また、政府は本人確認のデジタル化に向けて、マイナンバーカードの普及促進や健康保険証の廃止なども進めており、今後もeKYCの利用範囲は拡大していく見込みです。

その流れを受けて、現在、各社から様々なeKYCサービスが展開されています。中には、本人認証以外にも、申請情報の突合確認や本人確認書類の機微情報のマスキング、更には反社チェックなどに対応したサービスもあります。

eKYC導入する際には、仕組みを理解した上で、自社にとってどこまでの機能が必要かを洗い出した上で、検討しましょう。

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