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勤怠管理システムに使える補助金・助成金とは?2025年に向けて

勤怠管理システムに使える補助金・助成金とは?2025年に向けて

最終更新日:2024-11-13

勤怠管理システム導入を検討中の人事担当者の方へ。導入の後押しとなる補助金や助成金にはどんなものがあり、どうすると使えるようになるのか、支給条件や支給額、活用の注意点などを詳しく紹介します。

目次

勤怠管理システムの導入に使える補助金や助成金の制度は?

中小企業・小規模事業者が勤怠管理システムを導入する際に利用すべき補助金や助成金としては、主に2つが挙げられます。

  1. 経済産業省管轄の「IT導入補助金」
  2. 厚生労働省管轄の「働き方改革推進支援助成金」

両者は管轄が「経済産業省」「厚生労働省」に分かれていることからわかる通り、そもそもの目的が異なります。

「IT導入補助金」はDX化による業務効率化を目的として、ITツールの導入にかかる費用の一部を補助する制度。もう一方の「働き方改革推進支援助成金」は近年の働き方改革促進を目的として、その環境整備のための費用を一部助成する制度です。

2つの補助金・助成金の概要

いずれも勤怠管理システムの導入費用に充てることができるものの、細かな支給金額や要件が異なります。「いくらぐらいもらえるのか」「いつもらえるのか」について、概要をまとめておきましたので参考にしてください。

受給金額 受取時期
IT導入補助金 勤怠管理システムの導入・運用にかかる費用のうち5万円〜450万円(最大1/2を上限とする) ITツールを導入して事業実績報告を行った後
働き方改革推進支援助成金 成果達成度に応じて異なる(例:月80時間以上だった時間外労働を60時間以下に減らしたら200万円、など) 成果を達成したと認められた後

なお、同一の勤怠管理システム導入について両者を併用して受給することはできません。取り組みやすい方・メリットが大きい方を利用するようにしましょう。

本記事では、「IT導入補助金」「働き方改革推進支援助成金」2つの制度の詳細な内容、支給金額の目安、利用条件、注意点をわかりやすく解説していきます。

なお、 制度の概要さえ理解できれば十分で、「勤怠管理システムの選定に移りたい」という方は「勤怠管理システム比較16選」を参照ください。

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「IT導入補助金」とは?

こちらでは、「IT導入補助金」の具体的な中身について解説します。

<補助の内容>

対象となるのは「IT導入補助金で規定されたITツール」の導入にかかる費用です。ここには業務効率化のために、新たに導入するソフトウェア製品やクラウドサービスなどが当てはまります(サポート費用や設定費用も含まれます)。

勤怠管理システムは、勤怠データの入力集計作業の自動化によって業務効率化が実現できるため、補助の対象に該当します。募集は「通常枠」で、A類型とB類型の2種類があります。

A類型とB類型の主な違いは「補助金申請額」「プロセス数」「賃上げ目標」です。「補助金申請額」とは文字通り、申請できる補助金の額を指します。「プロセス数」「賃上げ目標」については、下記で簡単に解説します。

プロセス数

プロセス数とは、いわゆるソフトウェアに必要な業務プロセスのこと。「顧客対応・販売支援」「調達・供給・在庫・物流」「会計・財務・経営」など、6種の業務プロセスと1種の汎用プロセスが設定されています。A類型とB類型とで、導入予定のシステムが担うべき業務プロセス数が異なります。

賃上げ目標の策定

補助金交付の採否にあたって、加点または必須項目になります。賃上げ目標の策定とは、以下の2つを満たす3年の事業計画を従業員に表明することを指します。

  1. 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加すること
  2. 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること

この計画が実現できなかった場合、賃上げ目標が必須項目である通常枠のB類型では、補助金の返還が求められるため注意しましょう。

以上をまとめると、各類型の規定は次の通りです。

A類型

  • 補助金申請額…5万円~150万円未満
  • プロセス数…6つの共通プロセスのうち、1つ以上
  • 賃上げ目標…加点項目

B類型

  • 補助金申請額…150万円~450万円以下
  • プロセス数…6種の業務プロセスと1種の汎用プロセスのうち、4つ以上
  • 賃上げ目標…必須要件

A類型よりB類型の方が、担うべき業務プロセス数が多く、賃上げ目標も必須となるため、補助金が高額になります。

<補助金の目安>

補助対象経費の2分の1以内

<利用条件>

補助対象者になるのは、資本金・常勤の従業員が規定以下の中小企業・小規模事業者。業種の分類ごとに定義があり、最大規模でも資本金3億円以下・従業員数300人以下となっています。
たとえば、小売業の場合は、「資本金の額又は出資の総額が5,000万円以下の会社、または常勤の従業員の数が50人以下の会社および個人事業主」と定義されています。

また、導入を検討している勤怠管理システムの提供企業が「サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局」に登録されている必要があります。登録状況は、「IT導入補助金」のサイト内資料「IT導入支援事業者一覧」から確認できます。

なお、近年、「IT導入支援事業者登録を受けていない事業者がIT導入支援事業者を装って、架空の補助金申請を斡旋する」というようなケースが報告されているため要注意。ITベンダーとの商談の際には、「IT導入補助金」のサイト内資料の確認やコールセンターへの問い合わせを通して、IT導入支援事業者登録の有無を必ず確認するようにしましょう。

<申請と手続きのフロー>

まず、補助事業について理解したうえで、IT導入支援事業者とITツールを選定します。次に、IT導入支援事業者と事業計画を共同作成し、「交付申請」を行います。

なお申請にあたっては、経済産業省が提供する、1つのIDで様々な行政サービスにログインできるサービス「gBizID」のアカウントを取得する必要があります。アカウントの取得まで概ね2週間となっていますが、数週間を要する場合もあるので、申請を決めたら早めに取得するのがおすすめです。

審査を経て交付の採否が確定すると、事務局から交付決定通知が届きます。通常枠の場合、この交付決定通知より前にITツールの契約・発注をしてしまうと、補助金の交付を受けられなくなるので注意しましょう。

また、補助金交付にあたっては、導入後の効果報告が必要です。最終的に補助金が交付されるのは、「事業実施効果報告」を提出してからになります。事業実施効果報告に際しての効果報告作成支援、必要情報の収集・集計、必要書類の取りまとめなどは、IT導入支援事業者のサポートを受けられます。

 

「働き方改革推進支援助成金」とは?

続いては、「働き方改革推進支援助成金」の具体的な中身について解説します。

<助成の内容>

「働き方改革推進支援助成金」には4つのコースがあります。そのうち、企業が勤怠管理システムの導入に活用できるのは、「労働時間適正管理推進コース」「労働時間短縮・年休促進支援コース」「勤務間インターバル導入コース」の3つです。

助成の対象となる取り組みは、幅広く設定されていますが、勤怠管理システムの導入は「労務管理用ソフトウェアの導入・更新」にあたるといえます。

各コースの違いは、「助成内容」「成果目標」などです。コースを選ぶ際には、成果目標を達成できるかどうかを確認することが重要です。なぜなら成果目標の達成状況に応じて、助成金の支給額が変わってくるからです。

令和4年、現在に定められている、各コースの主な成果目標は次の通りです。

労働時間適正管理推進コース

下記の3つの成果目標達成を目指して実施します。

  1. 全ての対象事業場において、新たに勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステム(※)を用いた労働時間管理方法を採用すること。
    • ※ネットワーク型タイムレコーダー等出退勤時刻を自動的にシステム上に反映させ、かつ、データ管理できるものとし、当該システムを用いて賃金計算や賃金台帳の作成・管理・保存が行えるものであること。
  2. 全ての対象事業場において、新たに賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することを就業規則等に規定すること。
  3. 全ての対象事業場において、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に係る研修を労働者及び労務管理担当者に対して実施すること。

労働時間短縮・年休促進支援コース

下記の4つの成果目標の中から1つ以上を選択して、その達成を目指して実施します。

  1. 全ての対象事業場において、令和4年度又は令和5年度内において有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行うこと。
  2. 全ての対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること。
  3. 全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入すること。
  4. 全ての対象事業場において、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること。

上記の成果目標に加えて、対象事業場で指定する労働者の時間当たりの賃金額の引上げを3%以上行うことを成果目標に加えることができます。

勤務間インターバル導入コース

事業主が事業実施計画において指定したすべての事業場において、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入し、定着を図ること。

<助成金の目安>

各コースで支給額の上限や、経費に対する補助率が異なります。いずれのコースも成果目標の達成状況に応じて支給されます。たとえば、「労働時間適正管理推進コース」は、成果目標達成時の上限額が100万円で、対象経費の合計額に補助率4分の3を乗じた額が助成されます(上限額を超える場合は、上限額まで)。

また、全コース共通のこととして、賃金額の引き上げを成果目標に加えた場合、賃金引上げ数の合計に応じて、上限額に支給額が加算されます。たとえば、賃金額を3%引き上げた人数が11~30人の場合、1人当たり5万円(上限150万円)の加算になります。

<利用条件>

3つのコースに共通する条件は、中小企業事業主であることです。中小企業事業主の定義については、業種ごとに「資本または出資額」「常時雇用する労働者」をもとに要件が定められています。なお、業種は「小売業(飲食店を含む)」「サービス業」「卸売業」「その他業種」の4分類です。具体的な要件は次の通りです。

小売業(飲食店を含む)

資本または出資額は5,000万円以下、または常時雇用する労働者が50人以下

サービス業

資本または出資額は5,000万円以下、または常時雇用する労働者が100人以下

卸売業

資本または出資額は1億円以下、または常時雇用する労働者が100人以下

その他の業種

資本または出資額は3億円以下、または常時雇用する労働者が300人以下

<申請と手続きのフロー>

まず、都道府県労働局に「交付申請書」を提出します。その後、交付の可否が決定したら、通知が届きます。

通知が届いたら、勤怠管理システムの購入や導入を実施し、「支給申請書」を都道府県労働局に提出。支給の可否が審査されたのち、支給が決定したら助成金を受け取ることができます。

 

補助金・助成金活用の注意点

「IT導入補助金」と「働き方改革推進支援助成金」は、どちらも効果や成果の報告が必須です。つまり、単に勤怠管理システムを導入したからといって、補助金や助成金を支給してもらえるわけではありません。あくまでも目的は、業務効率化や働き方改革の達成です。そのため、勤怠管理システムの導入と、業務プロセスの見直しや働き方改善の計画をセットで考える必要があります。

加えて、申請から交付決定・入金までの時間もかかるので、事業スピードを優先するために申請しないという選択肢も。また、それぞれの制度は単年で設計されており、年度ごとに申請期限が決まっているので、いつでも利用できるものではありません。

2025年の補助金・助成金のスケジュール

2024年IT導入補助金は、2024年10月を持って交付申請が締め切られました。2017年から毎年実施されているため、次年度以降も制度が継続される可能性は高いです。2025年IT導入補助金もおそらく実施するものと思われますが、詳細な内容・スケジュールはまだ明かされていません(記事執筆時の2024年11月時点)。
2024年IT導入補助金とほぼ同様と考えるなら、2月中旬より1次受付開始。その後、期限を区切って、2次・3次・・・と受付が行われると考えられます。早期の申請を考えている場合は、申請にあたって必要となる「gBizID」のアカウント取得を進めておきましょう。アカウント取得まで2週間ほどかかるため早めに動くのがおすすめです。

 

勤怠管理システムの選び方

具体的にどのような勤怠管理システムを選べばいいのか、というポイントについては「勤怠管理システム比較16選」で詳しく紹介しています。
その他にも、「中小企業向け勤怠管理システム10選」「無料の勤怠管理システム14選」なども用意しています。それほど高機能でなくても良いので「コスト・料金重視でサービスを選定したい」という方はご活用ください。

 

まとめ

申請や報告の手間はかかりますが、勤怠管理システムの導入による効果や成果をしっかり見据え、計画を立て、実行できれば補助金や助成金を受けることができます。

補助金や助成金を活用するしないに関わらず、システム導入の効果測定は重要です。逆に言えば、取り組むべきことに取り組み、その結果、補助金や助成金を支給されるのであればお得だという考え方もできるでしょう。

手続きにあたっては、自社だけでなんとかしようとせずに適切なサポートを受けることも大事なポイントに。「IT導入補助金」はIT導入支援事業者、「働き方改革推進支援助成金」なら事業所の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にアドバイスをもらいながら進めていくといいでしょう。

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