最終更新日:2024-09-27
Excelや会計ソフトでの管理会計に限界を感じている方へ。従来よりも広範囲かつ精緻に分析できる管理会計システムのタイプや比較ポイントとともに、おすすめのソフトを紹介します。
管理会計システムとは、管理会計に必要な予算編成や予算実績管理、原価管理などを効率化するツールのことです。管理会計システムを用いることで、ミスなく効果的な経営管理が実現することから、多くの企業で導入が進んでいます。
企業規模が小さい場合や、部署単位や一部門のみで管理会計を行う場合などは、Excel上で予実や原価を集計・管理していくような運用も可能であり、実際に多くの企業は管理会計をExcelで行っています。部門長が一括で入力・管理したり、知見がある社員がいれば関数やマクロで効率化したりといったことも、さほど難しくはないでしょう。
しかし、部署や取り扱い製品、プロジェクト数の増加に比例して、管理すべきExcelのシートが増え、情報の集約や一元管理が難しくなっていきます。また、Excelは自由度が高い分、属人化が進みやすい傾向にあり、関数やマクロが壊れた場合のメンテナンスや署異動や退職時の引き継ぎにも課題が残ります。
管理会計システムを導入することで、従来のExcelを用いた管理会計業務がどう変わるのか。主な機能とあわせて見ていきましょう。
主な機能 | 特徴 |
---|---|
入力 | 各人にExcel・スプレッドシートを配布して入力してもらったり、会計システムからのデータをインポートしたり。ワークフローで入力依頼、収集進捗管理も効率化。 |
集計・加工 | 入力してもらった情報を自動で集計して、データを一元管理。仕訳データの登録、精算表作成、配賦計算、外貨換算なども可能。 |
報告・レポーティング | 各種帳票の設計・出力、ドリルダウン分析(詳細分析)、各種指標の経営分析など。 |
管理会計システムの主な導入効果の一つに、複雑な予算編成の効率化が挙げられます。
Excelの場合、各部門から上がってきたデータの集計・検証・分析などの手間がかかりますが、管理会計システムであれば、各部門で入力された予算や実績を自動集計したり、表やグラフでわかりやすく可視化したりできます。進捗状況や未入力部分を部門ごとに把握し、リマインドも可能です。
Excelでは関数やマクロを使って自動集計ができますが、管理会計システムなら専門知識がなくてもフォーマットに従って入力するだけで済むため、属人化の心配がなくなります。
たとえば、「貸借対照表」や「損益計算書」も、フォーマットから対象のデータを元帳や仕訳伝票へ簡単にドリルダウンでき、収集した情報は、ボタン一つで部門別や期間別といった様々な切り口から分析可能です。
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管理会計システムのタイプは、主に「経営管理に幅広く使えるタイプ」「予実管理中心のタイプ」「会計ソフトに機能が搭載されているタイプ」の3つに分類できます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
予算実績管理、原価管理だけでなく、経営管理に関する様々な機能を備えたタイプのシステムです。
たとえば、「BizForecast」は、Excel資産の有効活用をコンセプトにしたシステムで、これまで蓄積したノウハウをベースに製造計画、在庫計画、販売計画、設備投資計画といった業務での活用事例が豊富にあります。
また、「CCH Tagetik」は、財務報告、開示管理などで活用可能。報告書の一貫性を維持できる標準テンプレートや、作成した報告書を関係者に自動転送する機能、カスタマイズ可能なワークフローなどを搭載。財務報告に必要な各種書類の作成や共同作業の迅速化に役立ちます。マルチGAAP(複数会計基準による財務報告)要件、EBA(欧州銀行監督機構)報告、IFRS(国際財務報告基準)開示要件に準拠しており、グローバル展開している企業も安心です。
予算実績管理に強みのあるシステムです。「Loglass 経営管理」や「DIGGLE」などが該当します。Excelや会計ソフトとの連携で実績データを取り込みやすく、マスタ管理の情報更新や進捗管理、分析のしやすさに強みを持ちます。
「Loglass 経営管理」では、Excelや会計ソフトから取り込んだデータはワンクリックで統合・反映されるため、即、分析業務に移行でき、データ収集の手間を大幅に低減できます。また、マスタ管理については、簡単な操作で組織や科目階層の変更を管理でき、突発的な組織再編や管理会計のルール変更に対してもスピーディーに対応可能。「DIGGLE」では、予算データと総勘定科目突合を自動化できるため、分析業務に時間を割けるようになります。
また、「Amoeba Pro」はアメーバ経営に対応した柔軟な管理会計機能を持つため、特にアメーバ経営を実践する企業に適しています。
会計ソフトに管理会計の機能が搭載されているタイプの製品で、「勘定奉行」や「弥生会計」が該当します。導入済みの会計ソフトを活用することでコストを抑えられるのがメリットですが、会計ソフトの一部・オプションという位置づけのため、機能が限定的になります。
たとえば、予算実績管理での実績は仕分データになるので、仕分データに入らないものは分析できなかったり、配賦ルールが数種類に限られていたりといった制約が発生します。
続いて、管理会計システムを導入する際の比較ポイントをご紹介します。
対応できる帳票は、「汎用的に対応するもの」「自由度高く帳票を設計できるもの」「あらかじめ対応している帳票しか出力できないもの」など、製品ごとに様々。自社で最低限必要となる帳票に対応できるかを確認する必要があります。
たとえば、「勘定奉行」の管理会計オプションは、自社独自の視点を盛り込んだ会計帳票も時間をかけずに作成できます。「部門別変動損益集計表」「部門別利益率月次推移表」「販売管理費予定配賦表」「現預金内訳推移表」「部門別営業利益推移表」などの帳票出力が可能。そのうえで、科目・部門の体系や帳票の縦軸・横軸を自由に設計することもできます。
管理会計の単位ごとにニーズは異なるため、事前に確認しましょう。大企業では「部門別」「製品別」「プロジェクト別」「国別」、飲食業では「店舗別」「地域別」「取引先別」「事業部別」など、様々な視点でデータを分析できる機能が求められます。また、売上やコスト、損益だけでなく、受注額や棚卸資産などで推移を把握したい場合は、これらに対応した仕組みやツールが必要になります。
「Sactona」では、部門別管理のほかに、支店管理や販売店管理、事業別、地域別、機能別など細かい単位での分析が可能。「クラウドERP ZAC」は、事業部、チーム、担当者、クライアント、代理店、サービスごとに売上や利益の予測レポートを出力できます。
配賦機能がある管理会計システムでは、あらかじめ設定した比率に沿って自動的に配賦を行います。シンプルな配賦設定を行う製品では大まかな配賦になりますが、たとえば「Bizforecast」の場合、配賦基準を「従業員数」「専有面積」「動力消費量」のように細かく設定可能。また、相互配賦法や階梯式配賦法、それらを組み合わせた細かな会計ニーズにも応えられます。
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(出所:Bizforecast公式Webサイト)
「脱Excel」ではなく「活Excel」を掲げる、グループ経営管理システム。予算管理や連結会計をはじめ、様々な領域での業務効率化を支援する。
Excelの使い勝手や柔軟性はそのままに、データベースによる一元管理や外部システム連携などの利点を加えることでExcelの情報共有や情報保全における課題をクリア。
画面上で入力されたデータはデータベースで一元管理されるため、ほかの業務システムや製品と連携して二次利用可能。従業員への入力シートの配賦方法についても細かく設定でき、複雑な配賦処理を実行する場合も事前にシミュレーション結果を確認しながら設定内容を調整できる。
月額利用のSaaS型製品のほか、企業ごとの要件に合わせた個別構築型のテーラーメイド構築によるサービス提供も行っている。予算管理以外にも「工数管理」や「人事評価」などのExcelベース業務にも利用することも。
(出所:CCH Tagetik公式Webサイト)
財務会計、コンプライアンス、法務などの分野でソリューションを提供する経営管理プラットフォーム。顧客数は全世界で2,000社以上。日本国内の大企業にも幅広く採用されている。
「SAP HANA」との連携にも対応し、膨大な財務・業務データを素早く処理できる点が強み。
予算編成・計画・予測、収益性分析、財務報告、情報開示管理、コンプライアンス規制報告など様々な機能を搭載。分析機能では、ドリルダウン分析はもちろん、What-ifシナリオ分析を用いてシナリオやモデルごとに自動分析を行う。
自社内にサーバーを構築するオンプレミス型と、コスト削減や柔軟な導入が可能なクラウド型の両方に対応。いずれも同一機能を利用でき、切り替えもできる。
(出所:Sactona公式Webサイト)
管理会計・経営管理分野に特化したコンサル会社による、管理会計・経営管理効率化のための経営管理システム。
予算編成・予算実績管理・見込管理に関するデータを集約し、指標やKPIを可視化することで、現状の把握や差異の分析、迅速な経営判断に寄与する。
既存のExcelデータ・レイアウトを100%活用できるのが最大の特徴。WebブラウザからExcelを起動して入力できるため、これまでExcelメインで経営管理を行っていた企業におすすめ。
Excelの機能に加え、数値データの集計やコメント・KPIなどの定性情報の管理、ダッシュボードによる全体像の可視化、シミュレーションなどの機能も標準搭載している。
導入形態はクラウド・オンプレミスから選択でき、10名の小規模から数千名の大規模利用まで、要件に合わせて柔軟に対応可能。
(出所:クラウドERP ZAC公式Webサイト)
システム業、IT業、クリエイティブ業、イベント業、士業、コンサルティング業など、案件・プロジェクト単位で進行する業種に強みを持つクラウドERP。
販売管理、購買管理、予定表、勤怠管理、工数管理、経費管理、ワークフローなど様々な機能があるなかで、「経営モニタリング」や「プロジェクト管理」といった機能が管理会計に利用可能。見込や引き合い段階からシステムで案件を管理し、将来的な仕入・工数・経費の予定を一元管理することで、売上・利益予測を確実に把握できる。
更に、事業部別、チーム別、担当者別、サービス別などのセグメントごとに、売上や利益の予測レポートを出力できるため、明確な指標に基づいた経営判断が可能に。「経営モニタリング」機能では、プロジェクト利益や部門別の採算が一定水準を下回った場合などに、システムが自動でアラートを通知。ドリルダウン経営分析を行うことで、原因の特定もできる。
(出所:Multibook公式Webサイト)
世界30カ国、500社以上で利用されている、海外拠点管理に最適なクラウド型会計・ERPサービス。製造業、商社、飲食業、建設業など業種を問わず、幅広い採用実績を持つ。
配賦機能を備え、部門別やプロジェクト別に損益計算書(PL)を出力可能。固定資産管理やIFRS第16号に対応したリース資産管理機能、マネジメントコックピット機能も備え、海外多拠点の経営状況をリアルタイムで簡単に把握できる。
12の言語と通貨に対応しているため、現地法人の担当者は現地の言語で、日本本社の担当者は日本語でログイン可能。各国の通貨で仕訳を行い、為替換算も自動で対応。タイ歳入局より認証を受けるなど、各国の法・会計要件に対応しており、現地拠点の記帳ソフトとしても安心して利用できる点も心強い。
(出所:iFUSION公式Webサイト)
「Excelは使いたいが、配布・収集・集計の手間は省きたい」という企業に適したExcel運用サポートシステム。
ExcelフォーマットをWeb上に登録後、各自がダウンロードし、入力・アップロードするだけで配布・収集が可能。煩雑なメールでのやり取りやエラーチェック、バージョン管理がシステム上で完結するだけでなく、「誰がダウンロードして、誰がしていないか」など収集状況や、「誰が・いつ・何をしたか」の操作ログも取得できる。ユーザー権限や承認ワークフローも細かく設定できるため内部統制にも有効。
フォーマットはシステム上で一元管理されており、常に最新版を提供。関数や過去データなど変更されたくない部分は自動で保護されるので「難しい数式が壊れてしまった」などのトラブルも回避。予算編成・予算管理のほかにも、週報/月報・原価管理・人事評価など様々な用途に利用できる。
(出所:集計名人アタボー5公式Webサイト)
利用中のExcelを使い、そのまま自動集計できるデータベースアプリケーション。製造、販売、金融、IT、サービス、運輸、省庁など、幅広い業種での導入実績を持つ。
各部門の担当者への配信機能を使い、Excelフォーマットへの入力を促し、自動集計して予実差異を把握。「タスク管理機能」により、担当者への作業の割り当てや、差し戻しも可能。タスクが可視化されるため、見落としもなくなる。
基本的にExcelが使えれば操作できるため特別なスキルは不要。「データ自動取り込み機能」を使えば、基幹システムなどから出力したCSVデータを自動で取り込み、集計もできる。
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(出所:Loglass 経営管理公式Webサイト)
「テクノロジーで、経営をアップデートする」をミッションに掲げる経営管理クラウド。
予算策定、予実管理、見込更新、管理会計のフローを効率的に仕組み化することで、柔軟に経営戦略の打ち出しが可能に。
各部門に自動でExcelフォーマットを配布し、入力されたデータを統合して予算や見込の集計作業を効率化。会計ソフトからの実績データも直接インポート可能で、売上や利益、KPIなどをBIダッシュボードで可視化できる。
また、「タイムマシン機能」により、データの変更履歴から、「いつどこでミスが発生したのか」を追跡可能。複雑な配賦ルールにも対応するため、内部統制にも有効。
(出所:Amoeba Pro公式Webサイト)
経営判断に必要な情報の集約・分析を可能にする管理会計クラウド。アメーバ経営の管理会計に強み。250社以上で導入されている「The Amoeba 採算表システム」を管理会計に特化し改良。部門別・事業別・商品別など6種類のセグメントで多角的な分析が可能で、データを視覚的に表現。更に分析軸の切り替え、ドリルダウン、データの絞り込みなど、見たい情報を自由に指定し、分析もできる。
最小5ユーザーから月額65,000円で利用可能。従業員が少ない企業・部門での導入や、大規模な利用を見据えたスモールスタートにも適している。
導入前の訪問説明や導入後の専任チームによるメール・電話対応など、サポート体制も充実。
(出所:DIGGLE公式Webサイト)
予実管理に重点を置くクラウド管理会計システム。予実突合、見込、分析、レポートの機能を搭載することで、属人的になりやすいExcel業務を削減。事業部ごとの予算消化状況や見込を直感的なUIで可視化することで、経営判断に役立つ正確な予測が可能に。各事業部からの見込数値を自動集計し、あらゆる角度から差異分析を実行。原因を特定することで、迅速に対応策を取れるようになる。
「予算ID」と「変換機能」の活用により、データの取り込みや突合の手間を削減し、月次データを自動で集計・レポート化。担当者と定性的なコメントを共有する機能も備え、テキストや数値だけでは伝わらない情報の補完ができる。
(出所:Workday Adaptive Planning公式Webサイト)
クラウドベース型の予算管理・管理会計ツール。大企業や急成長企業をはじめ、6,500社以上の導入実績を誇る。
予算編成、配賦、予算・見通し管理、実績、経費・収益管理、ファイナンシャルクローズマネジメント、資産管理などの機能を搭載。経営判断や意思決定に必要な情報を「SAP ER」や「Salesforce」などの参照データと自動連携することで、期初予算、実績、見通しデータを一元化。Excelに似たインターフェースのため、現場担当者にも使いやすい。
更に、収益、経費、人員の計画とローリング予測が作成可能。直感的なレポートとダッシュボードにより、財務・販売・運用実績を視覚化。対話型のセルフサービスレポート作成や、必要に応じた詳細なデータの掘り下げ(ドリルダウン)もできる。
また、スマホやタブレットからアクセスできるモバイルアプリも提供しており、いつでも最新のデータにアクセス可能。複数の通貨や言語にも対応する。
(出所:勘定奉行 管理会計オプション公式Webサイト)
卸売業、製造業、小売業、建設業といった業種の会計・税務、人事・労務、販売管理などの幅広い分野で導入実績を持つ、「勘定奉行シリーズ」の管理会計オプション。
自社独自の視点を盛り込んだ会計帳票を素早く作成できる「帳票作成ツール」を提供。科目や部門の体系、帳票の縦軸・横軸を自由に設計できるため、Excelでの二次加工が不要となり、予算・実績・非会計データを使った柔軟な帳票作成が可能に。
「部門別変動損益集計表」や「部門別利益率月次推移表」「売上対費用5期間比較表」「一人当り損益計算書」「純利益増減解析表」など、様々な帳票を自社用に設計して出力もできる。
(出所:弥生会計公式Webサイト)
登録ユーザー数、のべ310万人突破。「弥生シリーズ」の会計ソフト。企業規模にあわせた3つの製品(「スタンダード」「プロフェッショナル」「ネットワーク」)を提供している。
「プロフェッショナル」「ネットワーク」では、経営分析・予算実績管理機能を搭載。「経営分析機能」では、財務諸表の経年比較、営業利益率などを一覧表示する「比率分析」、収益と費用の分岐点を検証する「損益分岐点分析」、得意先の構成割合がわかる「ABC分析」などにより、決算書だけではわかりにくい数字をグラフ化。
「予算実績管理機能」では、科目ごとに設定した予算と実績を比較でき、部門別予算や売上達成率の管理も可能。また、配賦基準を設定することで、部門共通費を科目ごとの間接費として下位部門に配賦した「予算実績対比表」も作成できる。
管理会計システムとは、管理会計に必要な予算編成や予算実績管理、原価管理などを効率化するためのシステムのことです。
管理会計は組織が大きくなるにつれ、Excelでの運用が限界に近づき、生産性が大きく低下する要因になりますが、管理会計システムを導入することで、様々な業務が効率化され、より重要な分析業務に集中できるようになります。
管理会計システムは、以下の3タイプに分類できます。
自社のニーズを考慮したうえで、以下のポイントを比較し、システムの導入検討を進めてみてください。
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