最終更新日:2024-05-01
社内システムの浸透や効果に課題を感じている担当者の方や、SaaSやクラウドサービスのUIを改善したいCS担当の方へ。システムの利用やUI/UX改善に役立つデジタルアダプションツールの概要やメリット、具体的なサービスについてご紹介します。
デジタルアダプションツールとは、ユーザーが新たなデジタツールや技術をスムーズに利用できるようサポートするためのツールです。たとえば、カーソルを当てると用語の説明や利用手順が表示されるガイド機能などを搭載しています。デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)とも呼ばれています。
デジタルアダプションとは企業の関係者全員がデジタルツールを使いこなせるような環境を作るという考え方です。従来デジタルツールは従業員のITリテラシーの差や操作難易度が原因で想定よりも普及が進まないという問題がありました。また、問い合わせが増加し、社内のヘルプデスク部門の負担が重くなる問題も発生していました。
そこで、業務改革をデジタルツールの導入で終わらせず、定着まで支援することで、ユーザーの満足度と導入効果の最大化を図るデジタルアダプションの考え方が注目されるようになりました。
デジタルツールの導入にあたっては、従業員への研修トレーニングを行ったり、具体的な操作方法のマニュアルをが成するというのが一般的な方法です。しかし、一度の研修トレーニングで完全にマスターしきれるとも限りませんし、効果的なマニュアル作成には手間もかかります。企業によってはそのリソースには限界があります。
デジタルアダプションツールであれば、ユーザーの操作に伴走する形で画面にユーザーガイドや入力ルールを表示したり、定型業務の入力確認を自動化できます。デジタルツールの定着と同時に、ヘルプデスクの問い合わせ対応の工数削減や、入力ミスによる差し戻し数減少が期待できるとあって、多くの企業で導入が進んでいます。
デジタルアダプションツールの主な機能としては以下の3つが挙げられます。
システム上に手順が表示され、順番に進めることができるステップ・バイ・ステップのガイドや、入力時のルール、用語の説明、ヒントを画面上に表示させるツールチップを画面上に設置できます。また、誤入力防止機能によって入力内容をリアルタイムに検証し、入力ミスを未然に防止できるので、ユーザーがスムーズに手順を進めることができます。
条件に応じてデジタルガイドを出し分けるなど、ユーザーごとに最適な内容・最適なタイミングを設定できるため、日時、期間、ブラウザ、デバイスなどユーザーの環境に応じた設定も可能です。
なお、システム上にマニュアルを表示させる機能を充実させたい場合には、操作手順書の作成に強みのあるツールを利用することもおすすめです。たとえば、「Dojo(株式会社テンダ)」では検索機能を搭載しており、ナビゲーションを開始するアイコンがブラウザ画面上に常駐し、迷った時にはマニュアルの目次を簡単に検索できます。また、操作上の注意点や、忘れてはいけないポイントなど、紙マニュアルに書き込んでいたメモをデジタル付箋として貼ることができます。
マニュアル作成ツールに関しては、「マニュアル作成ツールの比較15選。4つの目的別の選び方」もご覧ください。
システムの入力に際しては、定型操作の発生が多々あります。定型操作が面倒だったり複雑だったりすると、利用の停滞につながりかねません。デジタルアダプションツールでは、定型操作を自動化するオートフロー機能によって、操作時間の短縮、操作ミスの削減を実現。それにより、ユーザーは重要なプロセスにだけ集中できる状態をつくることができます。また、ユーザーが入力した情報を記憶し、自動入力の値として利用することもできます。
ほとんどのデジタルアダプションツールは、プログラミング知識や技術を必要とせず、画面上の操作だけで自動化を実現できます。たとえば、「WalkMe」は、複数のアプリケーションを横断したプロセスをトータルで自動化できるので、クリック作業の省力化、効率化を図ることができます。
システムの利用頻度や時間、多く使われている機能が記録されるので、システムや各機能の活用状況が把握可能に。ユーザーによるシステムの利用動向を可視化することで、あまり活用されていない機能や非効率な操作を発見して、改善につなげていくことができます。
さらに、導入ガイドやツールチップの利用回数などの分析で、ツールが有効に機能しているのかを確認できます。ユーザーの行動分析を踏まえて、ユーザーが操作に困る場面、離脱箇所、離脱理由の理解を深めることで、的確な改善点の打ち出しなどが可能になり、品質向上に役立ちます。
上記のような機能を備えた、デジタルアダプションツールを活用することで、次のようなメリットが得られます。
デジタルガイドにより、誰でも簡単かつ正確にシステムが使えるようになるため、「入力時間が短縮される」「煩雑な手続きが簡略化される」「定型業務を自動化できる」など、システム導入の恩恵を受けられるようになります。これによって利用促進を期待できます。
また、管理者がダッシュボード上で、ツールごとの操作の手順や動線をチェックし、無駄な箇所があれば柔軟に修正を加えられます。そのため、自社や顧客にとって使い勝手の良いシステムに改善してくことができます。誤入力や入力漏れなどをなくし、質の高いデータが収集できるようになれば、システムの利用価値を高め、経営における効果的なデータ活用が可能になっていくと考えられます。
デジタルガイドの利用により、マニュアルなどでは説明が難しい操作であっても、最低限の情報量で正確に伝えられます。また、マニュアル作成や勉強会といった事前の準備が不要になるので、社内システムを導入する企業にとっては教育の手間やコストの削減につながります。実際の操作を行いながらセルフオンボーディングができるので新人の即戦力化も可能です。
デジタルガイドにより、ユーザーが自己解決できる事項が増えると、問い合わせ数の削減をできます。社内システムの場合、正確な入力や操作ができるようになるので、提出物や申請物に不備がなくなり、差し戻しの手間を減らすことにもつながります。
顧客向けのシステムの場合であれば、ガイドに沿った操作やヒントの表示によって、顧客のセルフオンボーディングが促進されます。また、顧客の疑問点の早期解消とカスタマーサービスの対応時間を圧縮する効果もあります。
さらに、ツールによっては問い合わせ削減のために、誤操作ができないようにあらかじめ設定しておくことも可能です。指定箇所以外を操作できないようにするマスク機能を利用することによって、人的要因によるミスが発生しづらくなり、結果として問い合わせ数の削減につなげられるでしょう。
デジタルアダプションツールは、大きく2つのタイプに分けることができます。
様々な社内システムに対してツールを導入し、従業員の業務を手助けするタイプです。新規システムを導入する場合と既存システムにツールを組み込む場合、両方のパターンがあります。どちらのパターンも、従業員のリテラシーに左右されず、誰もが効率よくシステムを使えるようにすることを目的にしています。
このタイプは、ソフトウェアやアプリなどの積極的な活用・定着化を促進していくため、入力補助やシステムのオートメーション化など、ヒューマンエラーを削減して業務負担軽減に役立つ機能が充実しているのが特徴です。ただし、どこまでできるかはツールによって異なるため、自社で希望することが実現できそうか確認しておきましょう。
たとえば、「Techtouch」は、面倒な定型操作を自動実行し、不要なシステム操作時間の短縮、操作ミスの削減が期待できるオートフロー機能が備わっていて、ユーザー負担を軽くできます。「WalkMe」は、業務プロセスの完了率を追跡管理し、複数のアプリケーションにまたがってユーザーの行動を理解・改善していく分析機能が充実しています。
また、「Pendo」は、モバイルにも対応し、アプリ内ガイドの作成に強みを持っています。「BizFront」は全Windowsアプリに対応し、画面上に注釈やヘルプ、ガイド、リンクなどを表示できるアノテーション機能が魅力的です。なお、BizFront以外は、カスタマーサクセス向けの用途でもサービスを展開しています。
企業や個人に販売するSaaSやサービスに向くタイプです。ユーザーにサービスをストレスなく利用してもらうことを目的としています。その結果、満足度や売り上げの向上、クロスセル、解約・離脱の防止といった面につながります。
このタイプの特徴は、ノーコードでエンジニアに頼らずチュートリアルを作成できる点です。自社で直接作成するため、ユーザーの声の即時反映や、つまずき箇所をすぐに改善できることから、タイミングが遅れることなく対策できます。
たとえば、「Onboarding」はガイドの作成に専門的な技術・知識は不要、極力エンジニアの工数を使わずにプロダクト改善を行う体制が構築できます。「Fullstar」では、チュートリアルの作成に加えて、アンケートの設置や条件設定をして顧客ごとの活用状況を把握できるなど顧客の声を吸い上げる機能に長けており、解約やアップセルの兆候を逃さず、ハイタッチ管理が可能となっています。
社内のシステム定着や活用促進に役立つツールを4つご紹介します。
(出所:Techtouch公式Webサイト)
システム上に操作ガイドや入力ルールを示すガイドを展開することで、ユーザー体験を向上できるツール。ノーコードでガイドやツールを作成・修正できるため、非エンジニアでも迅速に運用改善を行えるのが特徴。新システム導入時のナビゲーション設定、ユーザーフィードバックの即時反映、自社製品への実装が可能で、生産性と運用効率の向上も可能。
また、利用分析機能を通じて滞在時間の改善や問題点の特定が可能になり、問い合わせやクレームへの対応前に問題を解決もできる。
(出所:WalkMe公式Webサイト)
SaaSアプリケーションの利用を促進するのに役立つ強力なツール。SaaS導入にありがちな、従業員向けのトレーニングやマニュアル作成のコスト・工数を不要にできる。
あらゆるSaaSについて対応可能で、連携した後は「どんな機能を持ったサービスなのか」をわかりやすく説明したり、カーソルを合わせるとそれについて説明するコンテキスト情報を表示したり、アプリケーション内の機能や情報をすばやく検索したりすることが可能。自社に合わせてユーザーエクスペリエンスの最適化を無理なく実現できる。
(出所:Pendo公式Webサイト)
プロダクト分析、アプリ内ガイダンス、プロダクト計画、フィードバックツールを組み合わせたソリューション。ソフトウェアのユーザーデータを収集・分析し、分析結果にもとづいてガイドする。ユーザーはWebとモバイル全体でソフトウェアをより効率的に導入できる。ソフトウェアの利用分析と同時に利用率を向上させる機能が充実。ユーザーの属性に合わせたガイドラインやメッセージの表示をはじめ、ユーザー行動の把握、ユーザーの満足度調査などの機能をエンジニア不要(ローコード/ノーコード)で設定可能。
(出所:BizFront公式Webサイト)
NTT研究所のR&D成果を活用し、システム改修なし・低コスト・短期間で業務システムの使い勝手を改善するシリーズ。「BizFront/アノテーション」と「BizFront/SmartUI」の2つのアプリ構成されており、前者では既存のシステムを変更することなく、画面上に注釈やヘルプ、ガイドを表示できる。後者は既存のシステムの大規模な改修を行うことなく、利便性を高めることが可能。たとえば、異なるWebシステムや端末間での情報連携をスムーズに行うことでUI/UXを改善。自動転記機能により入力ミスの削減も可能だ。
カスタマーサクセスの工数削減に効果的なツールを2つ紹介します。
(出所:Onboarding公式Webサイト)
自社サービスにノーコードでガイドの表示ができるツール。UI/UX改善をノーコードで直感的に操作できるため、エンジニアリソースを必要とせずにプロダクトを改善できる。「サービスを使いこなせない」「サービスのUI/UX改善リソースがない」といった課題に対処できる。
機能活用レポートは、ユーザーごとのガイド利用率、ログイン頻度、機能活用状況を可視化してPDCAを円滑に。データにもとづいて次の改善施策につながる。早期にサービスの利用イメージをつけることで、営業時の訴求や、導入後の活用と定着を促し、LTVの最大化を期待できる。
(出所:Fullstar公式Webサイト)
ノーコードでチュートリアルが作成できるSaaS向けツール。顧客自身が活用できる仕組みをつくり、セルフオンボーディングを促進する「チュートリアル管理」、顧客ロイヤリティを知るためのエンゲージメントや、顧客インサイトを知るための自由記述のアンケートなどが作成・表示できる「エンゲージメント・アンケート管理」、プルダウンから条件を選んで顧客の活用状況を確認できる「コミュニケーション管理」が特徴。
ほかにもタスクを割り当てる条件を構築するストーリー編集など、効率的にLTVを最大化できる機能が整っている。お試しで実装し、対応工数を減らしたい企業向けにフリープランも用意されている。
テクノロジーの進化により、従来の業務や体験をより効率的に実現できるシステムが数多く開発されています。
そのなかでデジタルアダプションツールには、下記のようなタイプがあります。
(1)社内システムの活用支援
(2)カスタマーサクセスの効率化
すでに国内外問わず優れたシステムが展開されています。デジタルアダプションツールは、気の利いたアシストで、システムの活用と浸透を促してくれます。すでにシステムの利用に課題を感じている企業やSaaSやクラウドサービスのUI/UXを改善したいと考えている企業は、導入を検討してみるのがおすすめです。
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