総務省の後押しを受けて導入が進むチャットボット。各自治体では実際にどのような用途で利用されているのか。導入事例やおすすめのサービスを交えながら、わかりやすくご紹介しています。
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自治体向けチャットボットとは、自治体の業務効率化を可能にする自動会話プログラムです。
「チャット(chat:おしゃべり)」と「ロボット(ro“bot”)」を組み合わせた造語であり、これまで電話や窓口などで一つずつ対応するしかなかった問い合わせを、チャットなどを利用して自動で回答することができます。
自治体でのチャットボット活用が進む背景には、限られた予算枠で十分な職員数を確保しづらい中、住民から寄せられる多様な問い合わせに対応しなくてはならない、行政ならではの苦しい事情があります。
総務省が2020年、行政のデジタル化に向けて基本方針を発表。次いで2022年「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック」が取りまとめたのをきっかけに、現在多くの自治体で導入が進んでいます。
エントリ−タイプのチャットボットの中には月額数千円〜で利用でき、トライ&エラーで精度を高めていくツールもありますが、受け答えに慎重さが求められる行政の場合、導入当初よりある程度の精度が見込めるAIや手厚いサポートのついたサービスが対象になってきます。目安としては月額15万円程度、初期費用数十万〜100万円が一つの指標になるでしょう。
今回は数あるチャットボットのうち、自治体での導入実績があるもので、かつ高精度のAIを搭載&学習やチューニングなどの負担がかからないものを厳選しています。
名称 | 導入実績 |
---|---|
NEC Digital Assistant AIチャットボット |
大阪府・埼玉県・小田原市など |
COTOHA Chat & FAQ | 埼玉県・安中市・日光市など |
MOBI BOT | 福岡市・横浜市・別府市・堺市・相模原市・長岡市・市川市など |
おもてなしSuiteCX | 和歌山県・長岡市・市川市・宮若市・世田谷区など |
OfficeBot | 千代田区・沖縄市・池田市・北海道東川町など |
Bebot | 三重県・富山市・南砺市など |
ObotAI | 藤沢市・長野県・日吉津村・宝塚市・明石市・桑名市・小松市など |
GovNext | 福島市・板橋区・大東市・秋田市など |
KUZEN for 自治体DX | 青梅市・三鷹市・目黒区など |
記事後半に各サービスの詳細を紹介しています。早くツールを選定したいという方はそちらをご覧ください。「どのような用途で利用できるのか」「どこでどのようにして利用されているのか」などを知りたい方はこのまま読み進めてください。導入事例を交えながら、わかりやすくご紹介していきます。
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自治体向けチャットボットの用途としては様々なものが考えられますが、大別すると「住民などから寄せられる問い合わせへの対応」「観光客向けのインバウンド対応」「自治体内のヘルプデスク業務のサポート」の3つに分けられます。
住民が何か知りたいことがあった場合、従来は電話・窓口・問い合わせフォームなどで問い合わせるか、もしくはWebサイト内を自力で検索して回るのが一般的です。しかし、職員のリソースには限界があるため「窓口が混み合って待たされる」、Webサイトの情報量が多すぎて「目的の情報にアクセスできない」という課題がありました。
チャットボットなら、24時間365日問い合わせに対応可能です。土日祝日・夜間も関係ありません。また、チャットボットは質問に応じて最も可能性が高いページに誘導するという使い方もできるため自己解決率の向上にも役立ちます。職員はその分、チャットボットでも解決できない、高度な問い合わせに注力できるようになります。
<具体的な利用例>
一時期は新型コロナの影響で減少していたものの、再度増加傾向にあるインバウンド需要。チャットボットを観光案内サイトに設置すれば、「おすすめの観光スポットを知りたい」というニーズに多言語で対応できます。
観光情報だけでなく、目的地への交通手段、周辺のおすすめ情報などもアピールすることで、観光客の満足度・再訪率の向上といった効果も期待できるようになります。
自治体DXの名のもとに、近年チャットボットに限らず、多くの自治体で様々なシステムやクラウドサービスの利用が増えています。それに付随して情報システム部門や総務部門へ「使い方がわからない」「IDパスワードをなくした」などの問い合わせも増加傾向に。そうした自治体内部からの問い合わせ対応も、チャットボットを使うことである程度の自動化ができます。
自治体向けチャットボットの活用のコツを理解したところで、実際の導入事例を4つご紹介します(出典は各サービスの紹介ページ「導入事例」を参考に作成しています)。
渋谷区の住民向けに、行政サービスの手続きや制度を幅広く案内する総合案内チャットボットです。質問をフリーワード入力すると、事前登録してあるFAQの中から関連性の高い項目を表示(よくある質問はAIがサジェスト表示)。住民はその中から意図に合ったものを選ぶだけで、スムーズに関連ページを案内してもらえます。
日本語以外にも、英語、フランス語、中国語(簡体・繁体)、韓国語など計111言語に対応。特筆すべきは、言語の指定や切替えを行う必要ないところ。任意の言語で質問をすれば、自動的にその言語で返事をしてくれるため日本語が苦手な外国人にも使いやすいです。
IoT化に積極的に取り組む埼玉県庁では、新しいシステムやデバイスに関する庁内からの問い合わせが増加。特に新規採用者の入庁や職員の異動がある年度初め、また確定申告時期の年度末は、電話回線が逼迫する状態でした。そこでヘルプデスクの負担軽減とFAQの効果的運用を図るべく、COTOHA Chat & FAQを導入。
多くのチャットボットでは、事前登録した回答の中から、質問内容と一致したものを提示する仕様になっています。しかし、COTOHA Chat & FAQは質問者の「意味」を理解するため、言葉に多少のゆらぎがあっても対応可能です。それにより、ヘルプデスクへの電話による定例的な質問が減少。大幅な対応工数の削減と業務効率化を実現しました。
海外からの観光客も多く訪れる富山県富山市。県内には多くの温泉地、宿泊地、伝統工芸、お土産などの観光資産があるものの、現状では受入環境や満足度においては課題が残ると指摘されていました。そこで、旅行中(ナカ)だけでなく、旅行前(マエ)の段階から最適な情報を伝えていくことで、受入環境及び満足度向上を目指すべく「BEBOT」を導入。
BEBOTは富山県公式の観光ガイドサイトに設置。デフォルトが英語設定(日本語切り替えも可能)。「Must-do」「Getting around the city」「Events」「Food」などの項目に沿って、質問に回答していくと、観光情報にアクセスできるようになっています。目的地へ交通手段やその利用法、更に近隣情報の発信まで行って、回遊を促してくれるのもポイントです。
119番に電話する救急相談のうち、今すぐ受診する必要のある場合は2割に過ぎず、その一方、若い人の間では電話するのをためらう傾向があるそうです。埼玉県医師会はこの研究結果を受け、2019年「適正受診の推進」「救急医療現場の負担軽減」を掲げ、チャットを利用した「AI救急相談」を導入しました。
患者は「どのような症状ですか?」などの質問に対して、自身の症状をフリー入力するだけ。チャットボットが発言から患者の主訴を理解して「今すぐ救急車を呼ぶべき」「直ちにor早めにor通常診療時間内に医療機関を受診すべき」「受診不要」など、緊急度を表示。最緊急の場合はそのまま119につなげられるのも心強いと評判です。
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(出所:NEC Digital Assistant AIチャットボット公式Webサイト)
NECのAI技術を活用したチャットボット。自然文の多様な表現を認識し、問い合わせに高精度・高速に回答可能。LINE、Teams、Skype音声認識など様々な外部システムとも連携可能な拡張性の高さも魅力。多言語翻訳機能を搭載しており、日本語のQ&Aデータを用意するだけで、100カ国にのぼる多言語対応が可能。クラウド以外にも、オンプレにも対応可能で、セキュリティ要件が厳しい場合でも安心。
(出所:COTOHA Chat & FAQ公式Webサイト)
NTTグループが手掛けるAI搭載型チャットボット。ユーザーが入力した質問の「意図」を読み取り、FAQを利用して適切に回答。学習済みのため、導入にあたって事前学習やチューニングの必要なし。最短1カ月で実用レベルの回答精度が期待できる。
新型コロナウイルス関連など、よくある質問・問い合わせに関しては各種テンプレートを用意。現在FAQを持っていない場合もすぐに利用可能。オプション機能を利用すれば、最大13言語にリアルタイム翻訳可能。埼玉県、安中市、日光市などで導入実績あり。
(出所:MOBI BOT公式Webサイト)
福岡市を中心に、横浜市・別府市・堺市・相模原市・長岡市・市川市など全国自治体で活用されているチャットボット。シナリオはGUIを用いて直感的に作成可能。テキスト・画像・イメージマップ・動画・PDFなどを活用できる。シナリオ応答では対応が難しい場合、対話型AIによる自動応答も利用可能。
特に公式LINEアカウントを使った住民への情報配信において多くの実績を持ち、たとえば、学校連絡網、道路の不具合通報、いじめや子育てのチャット相談や、電話対応の自動化など、住民サービスの向上・効率的な自治体運営に利用されている。
(出所:おもてなしSuiteCX公式Webサイト)
もとは有人チャットに強みを持つサービスだったが、2022年、自治体での利用に強みを持つAIチャットボット「スグレス」を事業譲渡により融合することで、チャットボット領域も強化。
従来のExcelデータ(Q&A・辞書)を取り込むだけで利用開始できる手軽さが特徴で、AIがデータをもとに一問一答形式で会話を行うため面倒なシナリオ作成が不要。顧客が「未解決」と指定したFAQをチェックして最適解に更新するだけのメンテナンスのしやすさも魅力。和歌山県、新潟県長岡市、千葉県市川市、福岡県宮若市、東京都世田谷区などで導入実績あり。
(出所:OfficeBot公式Webサイト)
情報資産を有効活用し、組織内のデータと対話しながら欲しい情報にたどり着けるRAGチャットボット。RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)によって拡張されたChatGPTにより、一般的な情報に基づく回答にとどまらず、組織内部の知識をもとにした精度の高い回答を得られる。グラフやイラスト、写真を参照して回答できるのも強み。
幅広い業種・業界の企業をはじめ、規模を問わずに多くの自治体や官公庁での導入実績を誇る。たとえば、千代田区では徹底したセキュリティ環境のもと、庁内に蓄積された情報を活用して業務の効率化を推進。そのほか、北海道東川町では生成AIを用いるリスクを低減しながら、組織固有データを踏まえた文章作成を行っている。
(出所:Bebot公式Webサイト)
独自開発した人工知能を搭載したチャットボット。長い文章でも、しっかりと文脈を区切り、単語を抜き出し、意味を理解した上で適切に回答可能。国内外の自治体(三重県・富山市・南砺市など)、公共機関・交通機関を中心に総合案内・問い合わせ対応・観光案内・災害対応など幅広い用途で利用されている。
手間のかかるFAQ作成や多言語登録、定期的な回答精度の向上作業なども通常サービスとして提供してくれるのも強み。スムーズな導入と運用を実現できる。
(出所:ObotAI公式Webサイト)
多言語対応に強みを持つチャットボット。日本語のほか、英語・中国語(繁体・簡体)・韓国語・タイ語・ロシア語・ベトナム語の8言語に対応可能。特徴は機械翻訳一辺倒ではなく、言語ごとにネイティブスピーカーの同社スタッフが顧客に代わってデータ更新を行うところ。リアルなデータベースをもとにするため高精度での翻訳が期待できる。
観光案内の多言語化を中心に藤沢市、長野県、鳥取県日吉津村、兵庫県宝塚市・明石市、三重県桑名市、石川県小松市など多くの自治体で幅広い用途で導入実績あり。
(出所:GovNext公式Webサイト)
「AIチャットボット」「電子申請・アンケート」「セグメント配信」「予約管理」といった多彩な機能で、住民サービスのDXを推進する自治体向けクラウドサービス。コミュニケーション窓口として「LINE」を、データ管理として「kintone」を組み合わせることで、直感的にシステムを設計できるのが特徴。
自治体HPにAIチャットボットを設置すれば、住民からの質問に自動で回答。シナリオ型・テキスト型に対応し、約90カ国語で利用可能。行政QAやゴミ分別などのテンプレートも提供。職員のヘルプデスクとして活用できる汎用性も魅力。福島県福島市、東京都板橋区、大阪府大東市、秋田県秋田市などで導入実績あり。
(出所:KUZEN for 自治体DX公式Webサイト)
民間企業で利用実績の豊富なAI搭載型チャットボット「KUZEN」を自治体向けにカスタマイズしたもの。自治体のHPまたはLINE公式アカウント内に実装することで住民からの質問に自動対応だけでなく、住民への定期的な情報発信にも利用可能。青梅市、三鷹市、目黒区などで利用実績あり。
また、外部連携機能を使って、自治体内で既に導入されている住民向け行政手続オンラインシステムと連携すれば、各種行政手続申請をオンラインチャットで完結することも可能に。
最後に、チャットボットを活用するためにはどのようなことに気をつければよいのかについて触れておきます。チャットボットを導入するには、事前に質問&回答を想定したFAQや会話を想定したシナリオなどが必要であり、かつ運用開始後も精度を高めるためのメンテナンス(チューニング)が不可欠です。
しかし、自治体では処理しなければならない業務が多いことから、なかなかそこに時間を割けないのが現状だと思われます。そのため、導入までに手間をかけず、ある程度効率的にシステムを立ち上げ、運用する必要があります。
これまでに自治体内部で蓄積してきたコンテンツがあれば、それをチャットボットに流用するのがベストです。しかし、そうでない場合は別途準備する必要があります。対象とする業務に際立った独自性がなければ、他の自治体等と業務が共通している可能性が高いため、既に利用されているデータを入手し、それに手を加えていくのがよいでしょう。チャットボットのベンダーが保有するデータ、あるいはそれを利用している自治体に直接問い合わせてFAQデータをいただく、といった解決策があります。
また、用語辞書として専門用語の登録が必要なケースが多いため、そちらも入手できればさらに導入しやすくなるでしょう。
導入後は、チャットボットから入力された質問に対して、適切な回答がヒットするようにヒット率を調整することが重要です。AI搭載型の場合は、回答結果に対して「○・×」をつけて学習させていくことにより精度を上げていくのが基本です。ボリュームが多くなければ、日々10分程度の確認で済む可能性がありますが、多いとさらに時間がかかってしまうでしょう。
この場合は、データを読み込ませなくても、最初からある程度の精度が見込めるチャットボットを導入するか、もしくは数ある回答結果のうち特に必須のものを選んでくれるなど、チューニングが簡単に行えるものを利用するといいでしょう。
FAQコンテンツやヒット率の調整が十分でない状態でいきなり市民向けに公開すると、うまく自己解決につながらないばかりか、質問者を混乱させてしまい、対応にかえって時間をとられてしまう可能性もあります。そうした状況を避けるには、まずは職員が市民に対応する際の参照先としてチャットボットを利用することから始めるとよいでしょう。そこで改善を加えていき、調整が済んだら市民向けに展開するという順序だと安心して利用できます。
自治体向けチャットボットについて紹介しました。以下、基本的な要点(よくある質問)をまとめておきますので参考にしてください。
チャットボットは、人工知能の機械学習に応じて応答するもの(AI搭載型)と、人が定めたシナリオやルールに従って応答するもの(シナリオ型・ルールベース型)の2つがあります。AI搭載型チャットボットの場合、質問と回答を紐づけたFAQなどの学習データを読み込ませる必要がありますが、最近は学習済みのAIも増えており、導入当初から高精度が期待できます。
シナリオ型・ルールベース型のチャットボットの場合、「この回答がきたら次にこれを聞く」「このキーワードがきたらこれを表示させる」など事前に登録しておいたシナリオに沿って会話を進めていきます。プログラムの知識は不要で、多くはテンプレートに沿ってドラッグ&ドロップで簡単にカスタマイズ可能。上記と同様、それほど手間がかからなくなっています。
生産性の向上や働き方改革を掲げるDXの流れは、一般企業だけでなく、行政にも及びつつあります。2020年には、総務省が行政のデジタル化に向けた「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を発表。2022年には、それをもとに具体的な導入方法・活用方法をまとめた、「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック」が発表されました。それによればチャットボットはAI活用の具体的手段の一つに挙げられています。
チャットボットは問い合わせ対応を自動化できるため、人手不足や働き方改革などに課題を抱える自治体にはきわめて有用性の高いITツールです。ただし、チャットボットなら何でもいいというわけではありませんし、導入したらそれで万事解決というわけにはいきません。まずは、「どのような用途で利用したいのか」「どんな課題を解決したいのか」を考え、それに合った機能・特徴を備えたチャットボットを選びましょう。
なお、AI学習させるためのデータ(FAQコンテンツ)は足りているか。不足している場合は、どうやって入手・作成するか。どれぐらいの回答精度を望むのか。チューニングはどの程度行うのかetc. 導入・運用に当たって決めなければならない点はたくさんあります。不安がある場合は、サポートが充実したものを考慮するようにしましょう。
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