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CRMとは?部門別の必要性・メリットをわかりやすく、事例紹介も

CRMとは?部門別の必要性・メリットをわかりやすく、事例紹介も

最終更新日:2024-06-20

「そもそもCRMとは何なのか」にはじまり、導入のメリットや課題、傾向・対策などを、具体的な事例をまじえながらわかりやすく紹介します。

目次

CRM(顧客関係管理)とは?

CRM(Customer Relationship Management)とは、企業が顧客と良好な関係を築き、強化するための戦略や手法、およびそれをサポートするソフトウェアやシステムの総称です。日本語では「顧客関係管理」と呼ばれています。

CRMを活用すれば、企業は以下のようなアプローチが可能になります。

  • 顧客が次に必要としているものを、適切なタイミングで提案できる
  • 顧客が購入した製品に対して適宜フォローアップを行うことができる
  • 特性・行動に基づいて顧客をグループ分けし、効果的なキャンペーンを企画・実行できる
  • 社内全体の情報共有を円滑にし、顧客からの問い合わせに迅速かつ適切に対応する
  • 市場のトレンドを把握して次の製品・サービスの開発に活用する

このようなアプローチを通じて、顧客との良好な関係を構築・維持することが、将来的なビジネスの拡大や、売上・利益の向上につながります。

 

そもそもなぜCRMが必要なのか?

今、なぜCRMが必要とされているのか。その理由・背景としては大きく2つ考えられます。

CRMを使えば多様化する顧客ニーズに応えられる

顧客のニーズや期待が多様化する昨今のビジネスシーンでは、顧客満足度を高めることが企業の競争力を強化するための鍵となります。顧客は、個々のニーズや好みに応じたカスタマイズされたサービスや商品を求めており、画一的な商品やサービスでは顧客の満足を得るのは難しくなっています。また、同じ商品やサービスでも、顧客ごとに異なる提案やサポートが必要とされています。

インターネットの普及で消費者の購買行動も大きく変化しています。人々は商品やサービスを購入する前に、簡単に多くの情報を収集して比較検討できるようになりました。そのため、企業は顧客がどのように情報を収集して購入の決断に至るのかを理解し、それに対応する必要があります。

CRMを導入することで、企業は顧客のデータや購買行動を収集・分析して、1人ひとりのニーズを細かく把握できるようになります。そして、それに応じた商品開発やプロモーションを実施し、きめ細やかなサポートを行うことで、顧客満足度を高め、ビジネスの拡大につなげるができます。

CRMを使えば多くのデータを有効活用できる

近年ではDXが推進され、ビジネスにおける情報のデジタル化やデータ取得が進んでいますが、膨大な量のデータを業務で使えるようにするのは簡単なことではありません。多くの企業がデータの有効活用に対して課題を抱えており、ビジネスの価値に結び付けられていないという実状があります。

たとえば、せっかく顧客情報をデジタル化しても、部門ごとに分散していてスムーズに共有されていないというケースがよくあります。実際、「デジタル化した」といってもExcelファイルのまま保管されているだけで、「有効に共有・分析されているとはいえない」という課題を抱えている企業も珍しくはありません。

そのような、企業の中で蓄積されたままになっている大量のデータを有効活用するためには、部門をまたいで全社的にデータを一元管理できる仕組みが必要です。その役割を果たすのに最適なのがCRMです。CRMでは顧客データを一元管理して分析し、マーケティングや営業活動、カスタマーサポートなどの様々な用途向けに最適な活用方法を提示してくれます。

本記事ではCRMについて、導入メリット・課題、傾向・対策などを具体的な事例をまじえながらわかりやすく紹介します。なお、概念よりも具体的なツールについて詳細を知りたい方は「CRMツール比較15選!できることや選び方をわかりやすく紹介」をご覧ください。

 

各部門のCRM利用方法

CRMの導入は、企業のビジネス活動全体にわたって様々な部門にメリットがあります。ここでは、マーケティング部門、セールス・営業部門、サービス・カスタマーサポート部門の3つに分けて、具体的にCRMが「どのように利用されているのか」を説明します。

マーケティング部門

マーケティング部門では、顧客の特性や購買行動などのデータに基づいて顧客層を高精度でグループ化し、それぞれのグループに対して最適化したマーケティングやキャンペーンなどを設計できるようになります。顧客のニーズに応じた効果的なターゲティングができるため、無駄な広告支出を削減し、広告のROI(費用対効果)の向上を期待できます。

CRMはマーケティング施策の効果測定にも利用できます。キャンペーンの結果を顧客行動データなどと紐付けて分析することにより、「マーケティング施策が顧客のどのような行動を促し、どのように売上につながったのか」を正しく評価することが可能。より効果的な施策に向けた改善点を特定することにもつながります。

後述するMAツールと連携すれば、見込み顧客などのリード情報をより効果的に選定することも可能になります。

セールス・営業部門

セールス部門、営業部門では、顧客との過去の連絡内容や取引の履歴、購買履歴などの情報を一元管理し、営業チーム全体で共有できるようになります。これにより、それぞれの顧客の状況が把握しやすくなって、よりパーソナライズした営業活動やフォローアップが可能に。結果として、顧客満足度の向上につながります。

また、営業活動の成果が可視化されることで、データに基づいた客観的な評価や改善が行いやすくなるというメリットもあります。営業活動の計画と実行をチーム全体で一元管理できることから、担当者同士の連携がやりやすくなり、営業活動の属人化を防いで一貫した顧客対応の実現も可能です。

後述するSFAツールと連携すれば、商談の進捗管理や予測とレポートの作成などが有効に行えるようになり、営業活動の効率化につながります。

サービス・カスタマーサポート部門

サービス部門、カスタマーサポート部門では、顧客からの問い合わせやフィードバック、過去の対応内容などの情報を一元管理することによって、顧客の要望に対して迅速かつ適切な対応が可能になるというメリットがあります。

顧客と直接関わる機会が多いこれらの部門では、顧客がどのようなサポートや回答を望んでいるのかを正確に把握することが重要です。待ち時間の短縮など、顧客が不満を感じやすいポイントを改善することは顧客満足度向上には不可欠です。そのためにCRMによる情報管理の一元化は高い効果を期待できます。

CRMの導入には、顧客の満足度調査やアンケート結果などによるフィードバックを収集し、ニーズを分析して製品のサービス改善につなげられるという効果もあります。また、顧客の行動や問い合わせの履歴を分析し、潜在的な問題を予測することも可能になります。問題が発生する前に予防策を講じることで、顧客の負担を軽減し、信頼関係を強化できます。

 

CRMと関連する類似用語

CRMと関連する類似用語としては「MA(Marketing Automation)」や「SFA(Sales Force Automation)」があります。

市場で流通しているMA・SFAツールにはCRMツールと似た機能を提供するものもあるため、用語の意味を混同して使われることがありますが、実際にはCRMとMA・SFAは焦点を当てている業務領域が異なります。ただし、これらはCRMとMA・SFAは補完的に導入されることも多く、企業の競争力を高める上ではいずれも重要です。

ここでは、CRMと、MAおよびSFAとの相違点を説明します。

MAとの違い

CRMの目的が顧客との関係を管理、強化して顧客満足度を向上させることなのに対して、MAの目的はマーケティング活動を自動化して効率化と効果の向上に焦点を当てています。

そのため、企業全体で部門をまたいで導入することが重視されるCRMとは異なり、MAはマーケティング部門に特化して導入されるケースがほとんどです。MAツールで提供される機能も、メールキャンペーンの自動化や、顧客のセグメンテーション(グループ分け)、マーケティング施策の効果の分析など、マーケティング活動の支援に特化しています。

SFAとの違い

SFAの目的は、企業における営業活動を自動化することで、営業プロセスの効率化と売上の向上に焦点を当てています。そのため、SFAは主にセールス部門や営業部門に特化して導入されます。

SFAツールでは、営業活動の追跡や、売上予測、営業パイプラインの管理、リード管理、営業レポートの作成など、営業活動の支援に特化した機能が提供されます。CRMツールでも営業活動支援の機能は提供されますが、あくまでも顧客データ活用の一環としての位置付けである点がSFAとは異なります。

 

CRMの代表的な機能

CRMツールは、企業が顧客との関係を良好に保つための様々な機能が搭載されています。ここでは、市場に流通しているCRMツールに備わっている代表的な機能を紹介します。

顧客情報管理機能

顧客情報管理機能は、CRMツールで提供される最も基本的な機能のひとつです。顧客の名前や部署、連絡先などといった基本的な情報に加えて、これまでの取引履歴や商談の内容、問い合わせ内容などを管理できます。また、日頃の購買行動のデータや「どのようなコミュニケーション方法を好んでいるか」といった情報も保持できます。

顧客情報を一元管理

これらの情報を組織内やチーム内で統合的に一元管理できる点がCRMの強みです。複数の担当者で顧客情報を共有することで、伝え忘れや誤解を防ぎ、最新の状況を正確に把握できるようになります。

必要な情報をすばやく検索して確認できるだけでなく、担当者が変わった場合の引き継ぎも容易です。また、顧客情報を様々な視点でグループ分けする機能なども備えています。

顧客情報を施策に活かす

顧客情報は単に保存するだけでなく、次のビジネス施策に活かさなければその価値は半減してしまいます。CRMツールでは、収集した顧客情報を様々なビジネス施策に活かす機能も充実しています。

たとえば、好みなどの特性でグループ化した顧客層に対して、グループごとに異なるアプローチのマーケティングを行ったり、顧客の購買行動のパターンから次に求めている製品やサービスを推測したりできます。市場における消費者の購買行動を分析して、将来のトレンドを予測し、製品開発や営業活動に活用するといったことも可能です。

案件管理機能

案件管理機能では、商談やプロジェクトについて、取引相手や取引内容などを一元管理できます。また、取引の進捗状況をリアルタイムに可視化して、次に必要なアクションを明確にすることも可能です。受注の見込み時期や受注の確度なども管理でき、各営業担当者の案件数やタスク数、受注見込み額なども把握できるため、営業活動の効率化につながります。

タスク管理機能

タスク管理機能では、チームリーダーやメンバーが各自のタスクを管理し、進捗を確認できます。タスクの割り当てや、期間の設定、進捗状況の追跡などが行えることに加えて、タスクの期限が近づいたときに担当者にリマインダーを送信したり、タスクの完了や進捗状況の変化を関係者に通知したりといった機能もあります。

タスク管理機能を活用することで、チーム全体の作業効率を向上させ、プロジェクトのスケジュールを適切に管理できるようになります。

顧客への配信管理機能(メール・SNS運用)

顧客との関係を強化するためには、企業側からのアプローチが不可欠です。

CRMツールによっては、メールマーケティングやキャンペーン管理、広告配信といった機能が備わっており、顧客に対するキャンペーン情報やクーポンなどを効率的に配信できるものも。メールの開封率やリンクのクリック率などを確認する機能もあるため、件名や内容、配信する時間帯などで効果がどのように変わるのかを検証できます。

それ以外にもSNS運用をサポートする機能を持ったCRMツールもあり、複数のSNSに対して一括で投稿を行ったり、SNSを使ったアンケートやプレゼント企画などを展開したりできます。

問い合わせ管理機能

CRMの問い合わせ管理機能は、顧客からの問い合わせについて、その内容や担当者、対応状況などを一元管理するための機能です。引き継ぎがあった場合でも、問い合わせ内容をスムーズに把握できるため顧客の待ち時間を短縮可能。顧客満足度の向上を実現します。対応漏れの防止や緊急度の高い問い合わせには優先的に対応できるといった効果もあります。

具体的には、問い合わせ内容の自動的な記録や、過去の問い合わせ履歴の検索、問い合わせの種類や緊急度による分類、よくある問い合わせに対する回答や解決策の提示といった機能があります。また、期間ごとの問い合わせ件数や平均処理時間、顧客満足度などのデータを分析することも可能で、問い合わせの傾向の把握や問題点の特定にも役立ちます。

リード情報管理機能

リード情報管理機能は、見込み顧客(リード)に関する情報を一元的に管理し、営業活動の効率化や成約率の向上につなげるためのものです。Webフォームやイベント参加者リストなどの様々なチャネルからリード情報を収集し、興味のある商品やサービス、購買履歴などの情報と紐付けて管理することで、顧客への理解が深まります。

リードの興味の度合いや成約の可能性などを評価するスコアリング機能もあり、その結果に基づいて次のアクションを決定できます。また、リードと継続的にコミュニケーションを取るための顧客育成(ナーチャリング)支援機能や、リードの獲得数や成約率、ナーチャリングの進捗状況などを評価する分析機能も提供されます。

 

CRM導入で得られるメリット・効果

続いては、CRMの導入が企業のビジネスにどのような効果をもたらすのかについてです。CRMを導入すると、部門を越えた顧客情報の一元管理や、業務の属人化防止、また顧客満足度の向上などが挙げられます。それぞれのメリットについて詳しく見てみましょう。

顧客情報の一元管理で生産性を向上させる

CRMを導入すれば、部門をまたいで顧客情報を一元管理し、組織全体でシームレスな情報の共有が可能になります。商談の進捗状況やマーケティングの効果、問い合わせの対応状況などを、具体的な手続きも含めてリアルタイムに記録し、チームメンバー全員で共有することで、様々な業務の効率化が可能で、生産性の向上につながります。

部門間で情報共有の壁が取り払われれば、たとえば営業担当者がマーケティング活動の効果を確認しながら次のアクションを決定したり、営業活動の中で得られた顧客の好みなどの情報をマーケティングに活用したりといったことが簡単にできるようになります。

部門間でのコミュニケーションも活発になり、顧客に対するアプローチに一貫性を持たせられるというメリットもあります。

業務の属人化を防止できる

CRMには、それぞれの業務の属人化を防止できるというメリットもあります。CRMを使って顧客の詳細な情報や、営業活動の履歴、過去のやり取りの内容などを記録・共有することで、担当者が変わっても必要な情報にすぐにアクセス可能。担当者不在の際に発生したトラブルや緊急の問い合わせに対しても、他のメンバーでスムーズにサポートできます。

また、CRMでは過去の営業活動やマーケティング活動に関するデータを集約してその効果を定量的に分析することも可能です。分析結果を活用して効果的なアプローチ方法を導き出すことで、担当者個人の経験や知識に頼ることなく、誰でも一定の品質で業務を遂行できるようになります。

顧客満足度を向上させる

CRMの導入は顧客満足度にも大きな効果を発揮します。顧客の特性や購入履歴、行動履歴などの情報を収集し、分析することで、顧客1人ひとりのニーズや嗜好を深く理解できるというのがCRMの強みです。顧客理解に基づいて、より的確な商品やサービスを提案したり、パーソナライズされたコミュニケーションを展開したりできれば、顧客との良好な関係を築くことにつながります。

また、問い合わせやクレームへの対応を迅速かつ適切に行うことも、顧客満足度を高める上では極めて重要です。問い合わせへの対応に時間がかかると、それだけで顧客満足度を下げる原因になります。その点、CRMの問い合わせ管理機能を使えば、過去の問い合わせ履歴などを参照しながら顧客の状況を迅速に把握し、適切な対応ができるようになります。

 

CRM導入時ならではの課題やハードル

CRMには多くのメリットがありますが、その一方で導入にあたっては課題やハードルもあります。ここでは、CRMツール導入時に担当者が抱えやすい代表的な課題について説明します。

一定のデータ連携のスキルや知識が必要

CRMツールは多機能で膨大なデータを一元管理したり、分析して次のアクションにつなげたりすることができますが、その機能を十分に活かすためには、各領域の専門知識に加えて、一定のデータ連携のスキルやデータサイエンスの知識が必要になることがあります。

たとえば、CRMの初期導入時には、既存のExcelシートや販売管理システムなどのビジネスツールからデータをCRMに統合する必要があります。また、運用段階でも他のビジネスツールと組み合わせて利用するケースは少なくありません。そのような場合、必要なデータを取り込んで利用するためには、データ連携に関するスキルが求められます。

また、膨大な量のデータを収集したとしても、データの品質を維持するためにはデータの整合性や一貫性を保つためのデータクレンジングのスキルが必要ですし、それを活かして適切な分析結果を得たり、得られた結果を業務にうまく活かしたりするためには、最低限のデータサイエンスの知識も必要です。

必要に応じてCRMベンダーが提供するトレーニングプログラムを利用するなどして、担当者が実践的なスキルを身につけることが重要です。

自社の現場をよく理解している必要がある

CRMツールの使い方を把握できたとしても、そもそも自社の業務プロセスや顧客対応のフローについて深く理解していなければ、ツールの機能を最大限には活かすことはできません。

CRMツールを導入する主な目的は、顧客対応の品質の向上や業務の効率化です。現場の業務の実状を無視してツールを導入しても、「どのデータが重要なのか」「どの作業にどの機能が活用できるのか」などが判断できず、逆に効率が低下する事態に陥る可能性があります。

そのため、CRMツールの導入に関わる担当者は、自社の現場や業務のニーズについて精通し、現状の課題を正しく認識できていなければなりません。このことから、CRM導入のリーダーリップを取るのは、現場経験があって、且つ業務全体を俯瞰して見ることができる管理職が適任だと言えます。

 

CRMツール導入前に心がけるポイント

前述したようにCRMツールの導入では課題やハードルが生じることがありますが、事前にしっかりと準備することでその影響は軽減できます。ここでは、CRMツールの導入にあたって事前に心がけておくべきポイントを説明します。

戦略設定(KPI・KGIの明確化)

CRMツールの導入は、企業全体の戦略策定に大きな影響を与える重要な要素です。そのため、導入する際にはKPIやKGIなどの戦略設定を明確にすることが重要です。「顧客満足度の向上なのか」「売上の増加なのか」もしくは「業務効率化によるコストカットなのか」。目指すゴールや優先度は企業によって異なりますが、まずはそれを明確にしましょう。

また、導入計画を立てる上で、導入スケジュールや予算、必要な人員、リスク管理の方針などを明確にしておくことも大切です。企業の長期的な目標に向けて具体的な指標を設け、定期的に導入後の効果を測定しながら、CRMツールがビジネスに最大限に貢献できる体制を構築することが大切です。

部門間の連携を強化する

CRMツールの導入は、ひとつの部門が単独で行うものではなく、企業全体の取り組みとして実施する必要があります。そのため、システムの設計では、各部門のニーズや要望を確実に把握して反映させることが重要です。

スムーズに導入・運用するためには、CRMツールの導入目的や期待される効果などをすべての部門で共有し、定期的なミーティングやワークショップの実施などによって部門間の連携を強化することが不可欠です。現場での使い勝手を最優先に考えることで、CRMツール導入後の定着率が高まり、全体のパフォーマンスの向上につながります。

自社の成長要因をしっかり把握する

CRMツールは多業種に対応できることを目指して開発されているため、非常に多くの機能を提供しています。CRMツールを効果的に活用するためには、「自社の成長に貢献する重要な要因が何なのか」「それを阻む課題は何なのか」をしっかりと把握し、豊富な機能の中から適したものを選んで使用することが重要になります。

なお、成長要因は業種や事業内容によって異なります。参考までに、ここでは製造業、小売業、ソフトウェア産業について具体例を挙げて解説します。

製造業

製造業における一般的な成長要因は、効率的な生産プロセスと品質管理にあります。顧客のニーズに迅速に対応し、品質の高い製品を安定して供給することが求められます。

CRMツールを活用して顧客からのフィードバックやクレームを一元管理すれば、品質向上につなげることができます。更に、データ連携機能を利用してサプライチェーン全体のデータを統合すれば、在庫管理や納期管理の精度を高め、コスト削減やリードタイムの短縮が可能になります。

小売業

小売業における一般的な成長要因は、顧客ごとに最適化された顧客体験にあります。そのため、顧客の購買履歴や行動データを活用してニーズを把握し、マーケティングのパーソナライズやリピート購入の促進を行うことが重要になります。

CRMツールでは、顧客の購買パターンを分析することで、個別のプロモーションやキャンペーンの実施に活用できます。

ソフトウェア産業

ソフトウェア製品の場合、SaaSに代表されるように販売後の継続的なアップデートやサポートが必要になります。そのためソフトウェア産業では、顧客サポートとリテンション(既存顧客の維持)が大きな成長要因であり、顧客と長期に亘って良好な関係を構築することが重要です。

CRMツールを活用すれば、顧客の使用状況やそれまでのサポート内容、問い合わせ履歴など一元管理して確認できるため、迅速かつ的確な対応が可能になります。

 

CRMを効果的に運用するには

続いて、CRMツールの導入後に、それを効果的に運用するためのいくつかのポイントを解説します。

記録するデータは正確に~注意すべきポイント

CRMツールはシングルインプット・マルチアウトプットが基本で、一度入力したデータは様々な領域で自動反映されます。そのためデータの入力ミスや偏った入力によって不正確な情報が蓄積されると、分析結果や意思決定に悪影響を及ぼしてしまいます。効果を最大限に発揮するためには、記録するデータの正確性と信頼性が極めて重要です。

以下、データの正確性や信頼性を損なう要因はどのような点にあるのかを具体的に取り上げていきます。当てはまりそうな部分は特に注意が必要です。

顧客の分類を誤る

顧客の年齢や購買履歴、興味や関心などの基本的な情報が欠けていたり誤って記録されていたりすると、マーケティングに悪影響を及ぼす恐れがあります。たとえば、高齢者に向けて若年層向けの製品をプロモーションしてしまったり、単身者に向けて子ども用品をお勧めしてしまったりするといったミスマッチが発生します。

このような誤ったプロモーションは、単に販売の機会を失うだけに留まらず、顧客に不快感を与えて満足度を下げる結果につながることもあるため注意が必要です。

不正確な売上予測

商談のステータスや見込み顧客の購買意欲に関する情報が不完全だったり誤って記録されていたりすると、営業部門で作成される売上予測が実態と大きく乖離してしまう可能性があります。その結果、過剰な在庫を抱えたり、供給不足に陥ったりといったリスクが発生します。

たとえば、成立見込みの低い商談に対して、確率が高い受注見込みとして計上してしまった場合、実際の売上が予測を大幅に下回る結果になります。このようなミスが重なれば、経営計画の修正が必要になり、事業の存続が危うくなることも考えられます。

営業担当者ごとの記録データのバラつき

複数の営業担当者が同じ顧客のデータを記録している場合、その内容にバラつきがあると、営業活動の一貫性が失われて信頼を損なうリスクがあります。

たとえば、同じ顧客のデータが誤って複数レコードで記録されてしまっており、2人の営業担当者から同じ内容の電話やメールが送られてしまうというケースが考えられます。このようなミスは顧客の不信感を呼び、顧客満足度の低下につながることが考えられます。

Officeツール・SNSと連携する

CRMツールを効果的に運用するためには、自社で既に導入している既存のツールやプラットフォームとの連携が不可欠です。特に導入実績の多いMicrosoft OfficeやGoogle WorkspaceとCRMツールを連携させることで、現場のワークフローを変えることなく、それまでに蓄積してきた顧客情報をそのまま活用できるというメリットがあります。

また近年では、マーケティングや営業活動にXやInstagram、LINEなどのSNSメディアを活用する企業も増えてきました。CRMツールの中には、SNSと連携して効率的にマーケティングを展開したり、顧客の反応をリアルタイムで追跡したりできるものもあります。これらを利用すれば、より効率的に顧客満足度の向上にもつなげることが期待できます。

業務変更に対する現場への対応やフォロー

業務範囲が広範囲に及ぶCRMツールの場合、業務プロセスの変更は避けて通れません。たとえば、既存ツールとの棲み分けが必要な場合、もしくは顧客情報のデジタル化を同時に進めなければならない場合などでは担当者への研修やトレーニングを入念に行い、必要に応じて専任のスタッフを常駐させるなどして手厚くフォローアップすることが大切です。

運用の開始後も、CRMツールの活用方法について現場の声を定期的に収集してシステムや業務プロセスの見直しを図れば、運用の質を向上させることができます。

スマホなどモバイルデバイスを積極的に活用する

現代のビジネス環境では、スマホやタブレットなどモバイルデバイスを活用することが不可欠であり、CRMツールにもモバイル対応が求められています。営業担当者やカスタマーサポートのスタッフが外出先でもリアルタイムにCRMツールにアクセスして、顧客情報を閲覧できたり、必要なデータを入力できたりすれば、業務の効率は大幅に向上します。

具体的には、営業担当者が商談中にその場で顧客のそれまでの購買履歴や問い合わせ履歴を確認できれば、より的確な提案が可能となります。また、フィールドサービスのスタッフがCRMツールに対して現場で作業状況を入力できれば、チームの他のメンバーはそれをリアルタイムに確認できるため、迅速な顧客対応につながります。

レポート作成など事務処理は最小限に

多くのCRMツールは、データ入力支援機能やレポートの自動作成機能などを備えており、手作業での入力やレポート作成に比べると大幅に作業時間を短縮できます。しかし、いくら作業が効率化できるとはいっても、データ入力やレポート作成はあくまでもCRMの効果を高めるための手段でしかないことに留意が必要です。

CRMツール導入の意義は、顧客満足度の向上や売上増加などといった事業目標の達成なので、データの記録やレポート作成自体が目的化してしまわないように注意しましょう。

定期的に管理体制を整備する

CRMの効果を最大限に発揮するためには、ツール導入後も定期的に社内で活用方法や業務プロセスの見直し行うことが重要です。そのためには、CRMツールの運用管理を担当するチームを設置し、責任者を明確にするなどの体制を整えるのが有効です。

具体的に行うべき施策としては、定期的なミーティングの開催や、ツールの使用に関するガイドラインやルールの策定、現場の担当者への聞き取りなどが挙げられます。また、自社が新製品のリリースや既存製品のアップデートを行ったときや、CRMツール自体がアップデートされたときには、業務プロセスへの影響がないかを確認し、必要に応じて調整することがCRMツール管理者の重要な責務になります。

 

CRMの導入事例

最後に、実際にCRMツールを導入して成果を上げている具体的な事例を確認してみましょう。ここでは、主要な3つの部門について、それぞれCRM導入の成功事例を紹介します。

マーケティング部門におけるCRM導入の成功事例

企業におけるInstagram活用支援に取り組むテテマーチ株式会社は、マーケティングでの見込み顧客の獲得やインサイドセールス強化に向けて「Mazrica Sales(株式会社マツリカ)」を導入。

「誰が・いつ・どの顧客に・どんなメールを送ったのか」「どういう案件が受注につながりやすいのか」以前はGmailや社内チャットなどを遡って確認しなければならなかったのをMazrica Sales上にデータを蓄積し可視化することで、マーケティングを効率化。更にタイミング良くセールス部門へ受け渡すことで成約率の改善にもつながりました。(出典

セールス・営業部門におけるCRM導入の成功事例

オンライン教育のパイオニアである株式会社サイバー大学では、自社のeラーニングプラットフォーム「Cloud Campus」の営業活動において、「Zoho CRM(ゾーホージャパン株式会社)」を導入し、リード管理から顧客サポートまでの業務を効率化。

Zoho CRMによってリード管理がシステム化され、商談やライセンス管理の自動化を実現したほか、ステータス管理の厳格化によってホットリードの選別精度が向上し、手作業の工数が大幅に削減。結果として、顧客対応の質が向上し、営業活動による売上の増加を実現しました。(出典

サービス、カスタマーサポート部門におけるCRM導入の成功事例

WILLER MARKETING株式会社では、顧客の問合せを迅速に解決する手段として、「Service Cloud(Salesforce)」を導入して、パーソナライズされた回答が可能な「Einstein ボット」を利用。

もともと顧客や予約の情報をService Cloudで一元管理していましたが、それらを更にEinstein ボットに活用することによって、人手をかけずに自然言語によるパーソナライズされた問い合わせ対応を実現。チャットボットの利用が定着したことで、有人対応率は3分の1近くにまで低下し、電話対応の迅速化という成果も達成しています。

導入後も定期的に改善を続けており、フリーワードでの一問一答型から選択肢を提示する複数提示型への移行を実施することによって、チャットボットの解決率を36%から50%まで向上させることに成功しました。(出典

 

CRMの選定ポイント

CRM導入のメリットを最大化するためには、自社が抱えている課題や導入の目的、戦略設定などに応じて最適なCRMツールを選定することが大切です。具体的な選び方や比較ポイントは次のようなものが挙げられます。

  • 自社の業務に必要な機能が揃っているか
  • 自社の業務プロセスに合わせてカスタマイズできるか
  • 既存ツールとの連携が可能か
  • セキュリティに問題はないか
  • サポート体制が整っているか
  • クラウド型かオンプレミス型か

自社の要件に合わないツールを選んでしてしまうと、使い勝手が悪くて業務効率が低下したり、無駄な機能やサポートに対するコストがかさんでROIが低下したりするなどの問題が発生する可能性があります。そのような失敗をしないように慎重に選定しましょう。導入前に無料トライアルを活用し、現場の業務担当者も交えて操作性などを確認するのもお勧めです。

詳細を知りたい方は「CRMツール比較15選!できることや選び方をわかりやすく紹介」をご覧ください。

 

まとめ(Q&A)

最後に、CRMに関連して聞かれることが多い質問に回答します。ご自身の疑問点を解消できているか、チェックしてみてください。

Q:CRMとは何ですか?

CRMは「顧客関係管理」と呼ばれ、主に顧客に関する様々な情報を一元的に管理することを差します。それにより、マーケティングや営業、カスタマーサポートなどの業務を効率化。顧客のニーズや行動に合わせたパーソナライズされたサービスを提供することで、売上の増加や顧客満足度の向上を実現します。

Q:どうしてCRMが必要なのですか?

企業では、顧客情報の活用において多くの問題を抱えています。大量データの適切な管理や、部門間でのシームレスな共有、ビジネス活動に繋げるための抽出や分析など、デジタルデータとして蓄積された情報を有効活用するためには様々な課題があります。CRMはこれらの課題を解消し、業務プロセスを改善して市場での競争力を強化するのに役立ちます。

Q:CRMとマーケティングの違いは何ですか?

CRMが顧客との関係の構築や強化に焦点を当てているのに対し、マーケティングは製品やサービスを市場に広める活動であり、市場分析や広告、プロモーションなどを通じた新規顧客の獲得や売上増加に焦点を当てている点が大きく異なります。CRMはマーケティング活動をサポートするための下地ツールとしても活用されています。

Q:CRMは何から始めればいいの?

CRMはツールの導入ありきではなく、まずは導入の目的と戦略設定(KPIやKGIなど)を明確にすることが重要です。現在の業務プロセスを分析してCRMで改善できるポイントを特定。その上で自社の戦略設定に適したCRMツールを選定し、導入計画に基づいてシステム構築や業務プロセスの見直し、担当者のトレーニングなどを行うのがおすすめです。

また、いきなり関係部署すべてを対象にするのではなく、一部の部署で先行して試験導入を行うのも効果的です。そして運用の開始後も、現場の声を収集して継続的に改善し続けることが重要です。

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