紙の書面契約から電子契約へ切り替えを検討しているものの、電子契約にどんなデメリットや注意点があるのか、気になって導入に踏み切れていない方へ。電子契約の基本的な内容やメリットはもちろん、具体的な注意点・デメリットをわかりやすくご紹介します。
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電子契約とは、電子文書に電子署名することで成立する契約行為です。書面契約から電子契約へ切り替えた場合、「コスト削減」「業務の効率化」など多くのメリットが見込まれます。中でも、契約締結ごとに負担していた200円~数十万円の収入印紙が不要になるのは大きなメリットです。
「脱判子」を掲げた国を挙げてのデジタル化推進策の後押しと、コロナ禍における急速なリモートワークの普及を受けて、ますます電子契約への切り替えが進んでいくと考えられています。しかし、下記のような懸念点や検討事項があり、まだ電子契約への移行に踏み切れていない方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな方々向けに、電子契約に切り替えた際のメリットだけでなく、「こういう業態・企業は向いていない」「状況によってはこういう難しい局面がある」などのデメリット(利用する上での注意点)もわかりやすく説明します。検討する際の参考にしてください。
文書が証拠として認められるためには、本人の意思で文書を作成したことを証明する必要があります。従来は紙で作成した契約書に、双方の担当者が「押印」することで契約締結の証拠としていました。そのほか、本人が作成した証拠として「印鑑証明書」、改ざんを防止するために「契印・割印」などが存在します。
電子契約では以下のような一定の条件のもと、書面契約と同様の効力が認められています。
電子契約システム・サービスは目的・機能別に様々なものが存在しますが、ほぼすべてが上記を標準機能として搭載しています。比較検討の際にわざわざ「対応しているか」を心配する必要はありません。
ただし、電子証明書に関しては、事業者の電子証明書はあるものの、契約を行う当事者の電子証明書には対応していないシステムも多くあるので注意が必要です。どこまでの法的効力を求めるかについての解説は「電子契約システム比較15選!図解とタイプ分けで選び方を解説」をご覧ください。
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書面契約から電子契約に切り替えた場合のメリットとして、大きく以下の8つが期待できます。
以下、一つひとつ具体的に説明していきます。
紙の契約書は法律により、収入印紙を貼ることが義務付けられています。税額は契約の種別や契約金の大きさによって異なり、1件辺り200円~大きいものでは数十万円に。1件の金額は高額でないとしても、建設業・工事業・運送業など多くの請負契約を結ばなければならない企業にとっては大きな負担です。
電子契約に切り替えた場合、契約書は法律でいうところの「課税物件に掲げる文書」ではなくなるため、こうした印紙税が不要に。また、収入印紙を貼るのを忘れてしまった場合、「税の納付を怠った」として納付すべき額の3倍を徴収されてしまいますが、そのリスクを避けることもできます。
書面契約の場合、1つの契約を締結するまで多くの事務作業が必要になります。たとえば、「契約書を印刷し、製本する」「契約書に収入印紙を貼る」「封筒に宛名を記入する」「封筒に契約書を封入する」「郵便局に投函しに行く」など。これらの手間暇に加えて、インク代・印刷代・郵送代などの事務経費も見逃せない部分です。
電子契約では、契約書のやりとりはインターネット上で行われます。電子ファイルをアップロードするだけで済むため、「印刷・製本」「宛名書き」「封入・投函」などの事務作業は必要ありません。スタッフはその浮いた時間を他の作業に充てることができ、事務効率の改善と生産性の向上が期待できるように。更には、インク代・印刷代・郵送代などの事務経費も削減できます。
書面契約の場合、合意した後に契約書原本を印刷して製本し、押印して送付。取引先に押印してもらい、返送してもらうなど時間がかかります。決裁者・担当者が不在の場合には数週間かかることも少なくありません。ビジネスではスピードが重視されるため、致命的な遅れになることも考えられます。
電子契約であれば、クラウド上でデータを確認し、合意したその場でスピーディーに契約を締結することができます。電子契約サービスによっては、契約合意前の契約書作成をサポートする機能を備えたものも。また、クラウド上で「承認作業が今どの段階にあり、誰のマターなのか」というステータスを管理することができるため、作業の遅延や漏れも起きにくくなります。
契約書は法律により、一定期間保存が義務付けられています。紙の契約書の場合、原本をファイリングして、キャビネットなどに鍵をかけて保管しておくのが一般的ですが、企業によっては「保管スペースに余裕がない」「ファイリングが面倒くさい」「どこに何があるかわからない」などの課題を抱えているところもあるでしょう。
電子契約の場合、契約書はデータとしてクラウド上にまとめて保管できますので、保管方法やスペースに悩むことはありませんし、情報漏えいや紛失のリスクも回避します。また、検索機能を利用すれば必要に応じて目的の契約書を簡単に閲覧できるように。既存の書面の契約書もスキャンして電子化することで、有効活用も実現します。
コロナ禍をきっかけに急速に広まったテレワーク・在宅ワークなどのリモートワーク。にもかかわらず、契約の締結に際し「会社の判子がなくて押印できない」「プリンターがないので印刷して製本できない」という理由で、自宅から会社にわざわざ出勤する人も少なくありません。
電子契約であれば、紙と押印を必要としないため、場所と時間を選ばずに契約を結べます。現状、リモートワークを補完的にしか利用していないものの、将来的に完全リモートワークへの移行を検討している企業は、リモートワーク下でも契約業務が円滑に進むよう、今のうちに電子契約の導入を進めておきましょう。
サービスを提供する側と受ける側の双方にとって、契約期間の終期は重要です。「サービスの見直し」「契約打ち切り」「契約の継続」を検討し、何らかのアクションを起こす必要があります。しかし、膨大な量の契約を管理していると、「更新期限に気づかず、期限を逃してしまった」という事態が発生することも。
電子契約なら、契約期限の管理も容易です。たとえば「契約終了の2カ月前に自動通知する」というように、更新期限が近づいたらアラート通知する設定も可能に。通知回数の設定、期限以外の通知条件の追加、通知先などの条件も柔軟に設定できます。
新規の契約を作成する場合、既存の契約書の中から類似の契約書を探し出し、それを参考にして新規の契約書を作成することが多いでしょう。書面契約では、保管庫からファイルを取り出して、類似の契約書を探し出すのにもそれなりの労力がかかります。
電子契約では、類似の契約書を容易に検索して探し出し、新規の契約書の作成が可能に。これにより、契約書作成業務の省力化・業務効率向上が図れます。
書面契約には、様々な対策がなされているものの、書類の偽造や改ざんといったリスクが潜んでいます。その点、電子契約では、契約するまでに関わった人物や過程を細かくログとして記録できるのに加え、電子署名やタイムスタンプを用いることでリスクを下げることが可能です。
また、書面契約では対策が難しい閲覧制限も、電子契約であれば特定のIPアドレスのみが閲覧できるように設定できます。更に、承認権限を付与すればセキュリティ体制の強化にもつながります。
契約を締結した日よりも過去の日付を契約締結日として設定するバッグデートの不正も防止できるように。コンプライアンスの強化が課題になっている場合にも、電子契約への切り替えは有効です。
メリットを説明したところで、次に電子契約に切り替える上での注意点やデメリットについても触れていきます。
契約には様々な契約類型が存在します。大多数の契約が電子契約できますが、一部利用が制限されているものもあります。たとえば、以下の契約は法令の定めにより紙の書面が必要とされています。今後電子化が進むものもありますが、現状では双方の承諾・希望が合致したとしても電子契約を結ぶことはできません。
2022年6月に施行した特定商取引法改正により、クーリングオフ書面が電子化できるようになりました。ただし、条件として企業が電子契約を結ぶ場合は、事前に消費者から承諾を得なければいけません。よりスムーズな契約の取り交わしに向けて、現在は電子化に対応していない契約書が認められていく可能性も十分あります。
契約書は取引先あってのものです。いくらメリットがあるからといって、一方的に電子契約に切り替えることはできません。同意を得る必要がありますが、取引先によっては拒否反応を示すことも考えられます。その場合、単に利用を促すのではなく、電子契約のメリット・法的証拠力などをわかりやすく説明し、協力を仰ぐようにしましょう。
合意が得られなかった場合、紙の契約書と併用して運用するのが現実的です。取引先とは紙で契約書を締結し、取引先は紙の原本を保管。自社ではPDF化して電子保管するという形態です。
取引先から「電子契約を受け入れる」という合意を得るうえで重要なのが、電子契約を利用するための「コスト・労力」などの準備負担の部分です。いくら電子契約に切り替えるメリットがあるとはいえ、取引先としても余計な初期投資や手間暇は避けたいところでしょう。
双方が同一のシステム・サービスを利用するのが一番ですが、中にはアカウントを持たなくても、リンク先のURLを送るだけで、クラウド上で契約締結が可能なものもあります。ただし取引先担当者がインターネットやITに抵抗がある場合、設定・操作に手間取る可能性があるため、丁寧にフォローすることも忘れないようにしましょう。
それ以外にも「電子契約書は法的な証拠力があるのか」といった問い合わせも考えられます。事前に説明するのはもちろん、利用開始後も同様の質問を寄せられることが考えられるため、説明のためのトークスクリプトや想定Q&Aを用意しておくのがおすすめです。
リモートワークが社会に浸透し、今後、電子契約への切り替えも更に進んでいくことが予測されます。しかし、業態・事務フローによっては、急いで切り替えなくてもよい場合もあります。具体的には、以下のようなケースが考えられます。
電子契約に切り替えるうえで大きなメリットになり得るのが、「印紙代の削減」「事務労力・事務経費の削減」です。導入を検討する際には「月間の契約締結数」「印紙代」「契約締結に関する事務工数」に着目しながら、導入効果を試算してみましょう。
明らかな経費削減効果が見込める場合は電子契約を利用すべきですが、中には判断に迷う企業もあるはずです。たとえば、印紙代は契約類型・契約金額の大小により異なります。契約締結数がそれほど多くない場合は、コストメリットを実感しにくいかもしれません。また、電子契約への切り替えは事務フローの見直しを必要とします。今のフローがうまくいっており「余計な手を加えたくない」場合は、導入を見送るのも選択肢の一つです。
ただし、長い目で見ればデジタル化の潮流は避けては通れません。自社で切り替えなかったとしても、取引先から電子契約への切り替えを持ちかけられる可能性もあります。その時に備えるためにも、「契約締結数がここまで増えたら」「これぐらいの事務コストがかかったら」など、ある程度の導入ラインを考えておくことをおすすめします。
仮に電子化に踏み切ったとしても、すべての契約を電子契約に切り替えることができるとは限りません。取引先に切り替えを働きかけつつ、しばらくは紙の契約書と併用して運用していかなければならない「過渡期」が続くでしょう。その場合、以前に締結した紙の契約書も含めて「電子契約書と紙の契約書、両方をどのように運用・保管していくか」業務フローを考えなければなりません。
まず、現状の取引先のうち、電子化できそうなところを洗い出してみましょう。割合にもよりますが「紙の方が多くて、かえって管理部門に運用の負担がかかる」ということであれば電子化を見送ることも考えられます。「紙とデジタルの運用比率が変わるまで導入を待つ」というのも一つの手です。
主な電子契約システムを目的・機能別に紹介しています。一覧表に目を通しながら自社に合ったものを確認できるので、「色々あって何を選んだらよいかわからない」という方も安心です。
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電子契約は、一定の条件をクリアしていれば書面契約と同様の法的効力が認められています。対面での契約書の取り交わしが難しい場合でも、クラウド上で契約締結に必要な様々な業務に対応できるため、業務効率化を図りたい方には魅力的な方法です。
紙の書面契約から電子契約に切り替える前に、取り扱う契約の電子化対応の有無や取引先の状況などを考慮しておきましょう。業務フローの確認やコスト面の試算、紙とデジタルの割合を把握しておくことも大切です。
電子契約とは、インターネットを介して電子文書に電子署名することで成立する契約行為のことです。書面契約と同様の法的効力を持たせるためには、押印の代わりに電子署名、印鑑証明書の代わりに電子証明書、契印・割印の代わりにタイムスタンプなど一定の条件を満たさなければいけません。
電子契約を導入するメリットとして、「印紙税の削減」「事務労力・事務経費の削減」「契約締結までのリードタイムの短縮」「保管・管理の効率化」「リモートワーク対応が容易」「契約更新の確認漏れ防止」「類似契約書の作成業務の効率向上」「コンプライアンスの強化」などが挙げられます。
電子契約のデメリットや注意点として、「すべての契約書が電子契約に対応しているわけではない」「電子契約に切り替えるには取引先の協力が必要」「取引先の状況によってはサポートが不可欠」などがあります。電子契約の導入を検討する際は、自社に適しているかどうかしっかりと確認しておくとよいでしょう。
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