ホテル・旅館向け電話設備の新設やリプレイスを検討しており、業務効率化のためにクラウドPBXの導入を視野に入れている方へ。ホテル向けクラウドPBXの特徴や選び方、比較のポイントとともにおすすめのツールを紹介します。
ホテル向けクラウドPBXとは、ホテルや旅館などの宿泊施設向けに利用できる電話交換機能(PBX)をクラウド上で提供するサービスです。
PBXとは「Private Branch eXchange」の略称で、発着信の制御を行う電話交換機(システム)のことを指します。複数の回線を一括で管理して、外線着信の振分けや内線の転送、内線同士の通話などを可能にします。
そしてクラウドPBXは、PBXをクラウド上で利用するためのシステムです。電話機だけでなく、PCやスマホ、タブレットで通話を行えるようになります。そのため、設備導入にかかる工事費用や、設置スペースの確保、保守運用業務などが不要となり、従来の構内交換機(PBX)よりも低コストで導入しやすい傾向があります。
ホテル向けクラウドPBXは、一般的なクラウドPBXのメリットに加えて、宿泊業ならではの業務に役立つ機能を搭載。PMS(ホテル管理システム)と連携して着信時に宿泊客の情報を表示したり、客室内線やホテルインフォメーションの配信に対応したり、通話に限らずフロントからバックオフィスまで幅広い業務領域を効率化できます。
なお、ホテル向けに特化した機能を必要とせず、オフィス向けのクラウドPBXをお探しの方は「クラウドPBX比較14選。料金や選び方をわかりやすく紹介」をご覧ください。
ホテル向けクラウドPBXの主な機能は、一般的な電話交換機能に加えて、下記のようなものがあります。
内線通話機能 | 従業員間の内線通話や、複数の棟や拠点間の内線通話のほか、宿泊客向けに客室などから各施設への内線通話を可能にする機能 |
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スマホ連携 | 従業員向けスマホを内線端末化する機能。場所を問わずに内線対応が可能に |
多言語対応 | 外国人観光客向けに、客室端末における多言語表示に対応 |
IVR (音声自動応答) | 着信時に自動音声で案内する機能。予約、忘れ物の問い合わせなど、お客様の求める対応に応じて着信先を振り分け、担当ごとの効率的な顧客対応を支援する |
通話録音 | 顧客対応時の通話を録音。顧客対応の振り返りやトラブル回避に活用可能 |
客室内線のスマホ・タブレット利用 | スマホ・タブレット端末から、客室内線を使えるようにする機能 |
ホテルインフォメーション・客室サービスの配信 | 客室内線のタブレットに、お知らせや付帯施設の混雑状況など館内情報を表示する機能。ルームサービスや土産品の購入を受付られるシステムも |
顧客管理 | 内線着信時に、宿泊客情報を管理画面に表示し、スムーズな案内を支援する機能 |
なお、一口に「ホテル向けクラウドPBX」といっても、コールセンター向け機能を中心とするタイプや、客室内線とホテルインフォメーションに対応するタイプなど、対応する業務領域はサービスごとに大きく異なります。サービスを比較する際は、問い合わせ専用窓口のために導入するのか、ホテルインフォメーションと合わせて導入するのかなど、目的を整理したうえで、必要な機能を備えているか確認しましょう。
ホテル向けクラウドPBXは導入目的に応じて、以下の4タイプに分けられます。それぞれの特徴や強みについて、詳しく解説していきます。
フロントではなく専用の電話窓口を設置して、予約・問い合わせ対応の品質を向上させたい場合向け。外線の着信と同時にお客様情報を表示したり、問い合わせ内容を記録してスタッフ向けFAQを作成したりと、効率的かつお客様に寄り添った対応を支援する機能を備えています。
たとえば「COLLABOS PHONE」は、着信数や応答数などを可視化するレポート機能を搭載。入電時間の傾向を踏まえた適切な人員配置に役立ち、放棄呼(呼損) の減少や、応答率の向上を図れます。
また「BIZTEL ビジネスフォン」は、利用中のCRM・SFA・MA・独自データベースとの連携に対応(オプション)。着信と同時に顧客情報や対応履歴などを自動表示する「着信ポップアップ」や、顧客情報画面に通話ログを自動保存する「通話履歴連携」などを活用することで、業務効率化と顧客満足度苦情が見込めます。
外線も含めた通話システムを手軽に導入したい場合に適したタイプ。低コストで外線・内線の基本機能を利用できるサービスや、スマホに代表番号を紐づけられるサービスなどがあります。
たとえば「TramOneCloud」のEssentialプラン(10~30名規模向け)では、月額5,000円+800円/名での導入が可能。IVRや転送機能といった基本的なPBX機能を備えているため、場所を選ばずに外線対応ができ、フロント対応の非対面化を推し進められます。
「ひかりクラウドPBX」では、ひかり電話オフィスA、またはひかり電話オフィスタイプとあわせて契約することで、外線通話の導入が可能に。スマホ1台で内線番号、代表番号、携帯番号の3種類を使い分けられます。
客室向けの通話・通信端末として、クラウドPBX対応のスマホを利用したい場合向け。サービスによって、施設側で設置したスマホ端末にアプリをインストールするタイプと、お客様のスマホからサービスに接続して内線利用できるタイプに分けられます。
たとえば「HOT/TEL」では、客室に設置したスマホ端末を客室電話として利用できるアプリをオプションで提供。フロントへの内線と外線通話にくわえて、施設案内など簡易的なホテルインフォメーションの表示が可能です。
「THISIS」ではQRコード読み取りによって、お客様のスマホとフロントとの無料通話が可能に。お客様も施設側のスマホもSIMカード不要で通話できるため、海外からの宿泊客でもスムーズに利用できます。
客室タブレットで内線通話にも対応したい場合向け。このタイプなら、VODや紙に代わるホテルインフォメーション機能もまとめて導入できます。
たとえば「vivuan」は、タブレット端末を使った客室からフロントへの内線通話が可能。ホテルインフォメーション機能として、付帯施設の予約などを行えるほか、客室ごとに個別のメッセージも送れるため、予約の確認や問い合わせへの回答など様々な用途に便利です。また、「tabii」は、内線機能の利用に加えて、近隣の観光地や飲食店情報といったコンテンツを配信できます。
なお、タブレットサービスは、内線とホテルインフォメーションの配信が機能の中心であり、外線には対応していないサービスもあるため、比較検討の際は注意が必要です。PBXとは別に、配信コンテンツの充実や多端末対応など、ホテルインフォメーションに特化したシステムをお探しの方は「ホテルインフォメーションシステム比較9選。できることや選び方を紹介」もご覧ください。
自社ニーズに合ったホテル向けクラウドPBXのタイプを確認したら、以下の3つのポイントをもとに、具体的なシステムを絞り込んでいきましょう。
クラウドPBXの中には、スマホやタブレットにのみ対応するサービスもあります。フロントや管理部門で固定電話としても利用したい場合は、対応の有無を確認してください。
たとえば「TramOneCloud」はIP多機能電話機に対応。多機能ボタン、グループ着信といった電話機ならではの機能を利用できるほか、FAXにも対応しています。
ほかにも、「ホテル向けIPテレフォニーソリューション」「BIZTEL ビジネスフォン」といったサービスが固定電話端末に対応。「ホテル向けIPテレフォニーソリューション」のように、既設のIP電話などを活用できるサービスも。
既存の電話機や施設内の配線などを維持しつつ、クラウドPBXを導入したい場合は、既設PBXとの併用が可能なサービスを検討しましょう。
たとえば「ひかりクラウド PBX」では、既設のPBXやビジネスフォンとの併用が可能。段階的なクラウド移行に向いているほか、障害発生時のリスク分散といったメリットが得られます。
客室内線からフロント以外にも発信できるサービスもあります。付帯施設ごとに問い合わせを管理したい場合や、フロントの省人化を進めたい場合に向いています。
たとえば「crotta」の内線機能(オプション)では、フロントだけでなくレストランなどの付帯施設を発信先に設定できます。また、スタッフグループ着信機能を利用すれば、お客様からの発信を複数スタッフが受電できるようになるため、取りこぼし防止に有用です。
(出所:COLLABOS PHONE公式Webサイト)
低コストかつ短期間での導入に強みを持つクラウドPBX/CTI。IVR(音声自動応答)機能やACD(着信振り分け)機能といった機能を標準搭載している。主にコールセンター向けに提供されているサービスだが、宿泊予約の受付や問い合わせ専用窓口を新設するのにも適している。
管理者からオペレーターまで使いやすいシンプルなUIと、通話録音機能や通話モニタリング機能など、顧客対応の質向上やオペレーターの教育に役立つ機能が特徴。初めて問い合わせ窓口を立ち上げる場合にも安心だ。また、コールセンターの稼働状況について、リアルタイムの統計表示や期間ごとのレポート作成が可能。時間帯ごとの入電数に合わせた適切な人員配置を行いやすく、応答率アップが期待できる。
(出所:BIZTEL ビジネスフォン公式Webサイト)
インターネット経由でPBX機能が利用できるクラウド型IPビジネスフォンサービス。代表番号発着信やIVR、ソフトフォンといった基本機能に加えて、全通話録音や音声認識・テキスト化、外部システムとのAPI連携など豊富なオプション機能が用意されている。
CRM/SFA・MA連携機能は、オプションサービスとして提供。既存の顧客データベースとPBXを連携させることで、開発費用の抑制と業務改善を両立する。たとえば、着信時にリピーターの顧客情報を表示する「着信ポップアップ」機能を使えば、顧客の事情をふまえた丁寧な対応や、保留時間の短縮を実現。顧客満足度の向上に寄与する。
(出所:ホテル向けIPテレフォニーソリューション公式Webサイト)
サービス品質の向上から業務効率化までワンストップで実現する、ホテル向け客室タブレットシステム。訪日外国人宿泊客に対応した多言語対応コンテンツ表示や、ルームコントロール、施設混雑状況確認、日立PBXと連携した音声通話といった機能で、顧客対応品質の向上に寄与する。
客室タブレットは、内線に利用できるほか、ルームサービスの注文や交通・観光情報の案内といったホテルインフォメーションも充実。また、清掃状況やチェックイン/チェックアウト状況を表示・管理できるシステムや、接客中の使用に便利なインカム機能を搭載したスマホ内線など、現場の業務改善に役立つ機能も豊富にそろう。
(出所:TramOneCloud公式Webサイト)
高品質な音声通話と豊富なPBX機能を備えた、オールインワンクラウドPBX。転送や代理応答などの基本的なPBX機能によって、既存の電話業務フローを大きく変えることなく、クラウドPBXへの移行を実現する。既存の電話番号をそのまま継続利用できるほか、新規発番にも対応している。
ソフトフォンと同じUIで発着信が可能なスマホアプリや、Wi-Fi接続が可能なIP電話機を提供。用途や業務に応じたデバイスでシステムを利用できる。また、複数のスマホで1つの電話番号を共有可能。IVRによる問い合わせの振り分けと併用すれば、リモート環境や移動中でも、フロントや付帯施設への問い合わせ対応ができるため、業務効率化と顧客満足度向上の両立に貢献する。
(出所:ひかりクラウド PBX公式Webサイト)
スマホでのオフィス番号の発着信を可能にするクラウド型電話機システムサービス。既設のPBXやビジネスフォンと併用できるため、段階的なクラウド移行に向いている。専用アプリをインストールすることで、スマホを内線としても使用できる。また、同社の光IP電話サービスを契約すれば、代表番号を使った外線の発着信も可能に。自宅や出先でも代表番号で発着信ができるため、フロントの省人化に貢献する。
また、「ひかりクラウド電話 ダイレクト for ひかりクラウドPBX」をあわせて契約すれば、汎用ルータからサーバまでの音声通信がインターネット区間を通らないため、トラフィック集中の影響を受けない安定した通話品質で利用できる。
(出所:HOT/TEL公式Webサイト)
新規開業や既設電話機のリプレイスに適した、ホテル・旅館向けスマホPBXアプリ。客室からフロントへのコールや、スタッフ間の内線通話機能を標準搭載している。その他、ホテルならではの業務を効率化するためのオプション機能が豊富にそろう。
たとえば、充実のホテルインフォメーション機能を備えた客室タブレット「MOT/Hotel Phone(モットホテルフォン)」や、PMS(ホテル向け基幹システム)との連携が可能なバックオフィス向けPBX、忘れ物管理も行える清掃管理システムなど。これらのシリーズ製品とスマホアプリを連携することで、フロントやバックオフィス、清掃などにかかわる幅広い業務を効率化できる。
(出所:THISIS公式Webサイト)
着信⽤のアプリをインストールするだけで、ビジネス専用の連絡先を取得できるサービス。ウェブブラウザ経由での無料通話やチャットも利用可能だ。
客室に連絡先のQRコードを掲示すれば、お客様自身のスマホからフロントや担当者への通話が可能に。客室端末を設置するコストを省けるほか、客室以外の場所からもホテルに連絡できる利便性を備える。加えて、QRコードごとに部屋番号や位置情報を登録できるため、発信元の特定も容易だ。
また、従業員同士の内線通話にも利用可能。グループ着信設定を活用して、担当や施設ごとに一斉入電する仕組みを作れば、取りこぼし防止やお客様対応の迅速化に役立つ。
(出所:crotta公式Webサイト)
タブレット利用によって、ホテル運営のペーパーレス化と効率化を促進する非対面型コミュニケーションツール。内線電話機能「crotta Phone」はオプションとして提供されており、タブレットを使ったフロントや付帯施設への通話が可能に。同時に複数台のスタッフ端末を呼び出せるので、着信もれの防止にも有効だ。加えて、スタッフ端末同士での通話もできるので、業務用のPHSやインカムの代替としても利用可能。
また、客室タブレット機能では、電話を介さずに付帯施設の予約やルームサービスの注文をシステムから受け付けられ、電話対応の手間を軽減する。付帯施設の案内や空き状況、周辺地域の観光情報などを配信できるホテルインフォメーション機能なども便利。
(出所:vivuan公式Webサイト)
スタッフの作業負担と時間・費用を軽減しながらゲストの満足度向上を実現する、宿泊施設向けタブレットサービス。タブレットを介して、客室内線やホテルインフォメーションのコンテンツ配信を手軽に行える。デジタルサイネージ表示や、曜日や時間を決めたコンテンツの配信やリンクの設定などもできるため、期間限定のプロモーションやイベント情報への導線を配信するのに役立つ。
顧客満足度向上につながる便利機能として、システム上で清掃の要不要を伝えるドアカード機能や、付帯施設の予約機能などを搭載。加えて、ルームオーダーのQRコード決済にも対応。購入の手間を軽減するUXで売り上げ向上が期待できる。
(出所:AdvaNceD IoTスマート客室内線電話公式Webサイト)
宿泊客情報管理システムとの連携で業務を効率化する客室電話サービス。タブレットもしくはスマホを客室端末として設置して、内線電話機や客室タブレットとして利用できる。スタッフ端末にスマホアプリをインストールすれば、フロント以外の場所でも内線を使用できるので、効率的に業務を行えるようになる。
同社が提供する宿泊客情報一元管理システム「AdvaNceD IoT DMS」と連携すれば、顧客情報と紐づいた業務効率化を実現する。たとえば、内線着信時には宿泊客の情報が管理画面から確認でき、スムーズな案内をサポート。また、宿泊客のチェックイン情報から、端末の言語表示を自動で切り替えるなど、インバウンド対応もスムーズに。
(出所:tabii公式Webサイト)
非対面・非接触での接客品質向上をサポートする客室タブレットサービス。客室に設置したタブレットとスタッフ用のスマホで内線を受発信ができるため、高額な機器や複雑なネットワーク設定が不要で、内線電話や客室タブレットの導入を進められる。
ホテルインフォメーションには、館内案内や多言語対応のLIVEニュースなどに加え、問い合わせの多い質問に対する回答を紹介するQ&Aを掲載可能。問い合わせ対応の手間を削減する。また、Google MAPと連携した近隣の観光地や、グルメサイト「ぐるなび」と連携した飲食店情報を配信できるなど、宿泊体験の向上に貢献する機能も充実。
本記事では、ホテル向けクラウドPBXについて解説・紹介しました。ホテル向けクラウドPBXなら工事不要で導入でき、外線・内線対応の効率化、フロント省人化による業務改善に貢献します。
ホテル向けクラウドPBXは、「応対品質の向上に強みのあるタイプ」「外線の手軽な導入に適したタイプ」「スマホで客室内線に対応するタイプ」「タブレットで客室内線に対応するタイプ」といったタイプに分かれます。これらのタイプから自社に適したものを選んだら、「固定電話端末への対応有無」「既設PBXとの併用可否」「発信先制御の柔軟性」といったポイントで、具体的なサービスの比較を進めてください。
また、クラウドPBXはサービスにより対応する業務範囲が大きく異なります。コールセンター向けの機能が必要か、客室内線とホテルインフォメーションの配信が必要かなど、自社の用途に合ったサービスを見極めることが重要です。
ホテル向けクラウドPBXを利用することで、円滑な情報共有による業務効率化や、スムーズな接客による顧客満足度の向上が期待できます。本記事を参考に、ぜひホテル向けクラウドPBXの導入を検討してみてください。
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