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不動産取引の電子契約はどこまで可能に?準備や注意点も解説

不動産取引の電子契約はどこまで可能に?準備や注意点も解説

最終更新日:2023-09-01

2022年に全面解禁された不動産取引の電子契約。その法改正のポイントを知り、電子契約システムを適切に導入・運用したい方へ。電子契約の内容、ルール、注意点、具体的なシステムなどについて詳しくご紹介します。

目次

デジタル改革関連法案による不動産の電子契約への影響は?

これまで不動産の契約では、紙の契約書への押印やサインが必須でした。それは、宅地建物取引業法に則り「重要事項の説明」「売買契約の締結」「媒介契約の締結」の3つは対面が義務付けられていたためです。

しかし、コロナ禍での電子契約の急速な普及もあり、非対面でも契約できる選択肢が増えました。なかでも、大きな変化のきっかけとなったのは、2021年5月に成立した「デジタル改革関連法案」です。押印・書面の交付などの手続の見直しにより押印義務を廃止するとともに、電子化した契約書を交付できるように法律が改正されました。

不動産の売買、交換、貸借の契約のオンライン化は、契約を効率化する有効な手段であり、不動産取引の新たなスタンダードとなるでしょう。

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どの契約が電子化できるようになるか?

「デジタル改革関連法案」の成立により、不動産取引においても2022年5月からは次の書面の電子化が解禁されました。

  • 媒介契約書(売主が不動産会社に依頼する業務・サービス内容や仲介手数料などを明確にした契約書)
  • 重要事項説明書(取引物件に関して宅地建物取引士が買主に説明する事項を記したもの)
  • 賃貸借契約書(アパートやマンションなどの賃貸物件を借りるための契約書)
  • 定期借地権設定契約書(期間を定めて土地を貸す際の権利について記した契約書)
  • 定期建物賃貸借契約書(契約期間の満了により賃貸借が終了する賃貸借契約について記した契約書)

また、電子化した契約書に宅地建物取引士の押印は不要になり、契約書に規定の収入印紙を貼付して印紙税を納める必要もなくなります。その代わり、次の3つ及び相手方の承諾が必要になります。

  • 重要事項説明書の電子交付
  • IT重説(テレビ会議などのITツールを活用した非対面で行う重要事項説明)
  • 電子契約を結ぶ

 

不動産取引の電子契約の全面解禁はいつから?

不動産取引における電子契約が全面解禁されたのは2022年5月。宅地建物取引業法が改正され、契約時の押印義務廃止や売買契約における重要事項説明書・契約書の電子交付が行えるように。これにより不動産取引の完全な電子化が実現しました。

一方で、全面解禁になる前からオンラインで契約できるシステムを導入し、業務を効率化している事例もあります。たとえば、賃貸契約時の入居申込書の受付から契約までをWeb上で行えるサービスは多数リリースされています。

また、以前から書面での交付が義務付けられていない賃貸借契約の更新や駐車場の賃貸借契約では、申し込みから契約・決済までの流れをWeb上で完結できるサービスがすでに存在します。

ちなみに、不動産の売買取引における重要事項説明書の電子化や、賃貸取引における書面の電子化については、国土交通省が主導となって社会実験を行なってきました。不動産取引のオンライン移行は国を挙げて環境整備が進められてきた分野です。2022年の電子契約の全面解禁が追い風となり、不動産業界の電子契約導入が一気に加速しています。

 

電子契約に向けての準備

電子契約はシステムを導入するだけで、業務が円滑になるわけではありません。本格的な導入にあたっては、以下の3点の準備をおすすめします。

(1)契約プロセスの見直し

契約をオンライン上で完結させるためには、契約までのプロセスを棚卸しし、手順を見直すことからはじめましょう。まずは、これまで紙の書類で対応してきた入居申込書などを電子化し、契約者がオンライン上で記載できるようにすることが第一歩です。

また、重要事項説明書のオンライン交付に対応できるよう、ビデオ通話ツールなど口頭で説明できるものを運用しておくと良いでしょう。

(2)業務ルールの設定

電子契約では、書面契約とは異なる業務フローが発生する可能性が高いので、社内で業務の分担をはじめとするルールを明確にしておきましょう。たとえば、契約内容を複数の部署でチェックする際の手順や、電子ファイルを保管する際にアクセス権を付与する従業員の範囲を明確にする、などが考えられます。

(3)契約書の雛形の文面見直し

WordやExcelで紙の契約書を作成している場合は、PDFに変換して活用すれば問題はありません。ただし、一部の内容は電子契約書向けに修正が必要です。以下がその修正例になります。

  • 契約書内の「記名・押印」は「電子署名」に変わるので、電子署名を付与できるようにしておく。
  • 契約書内の「契約当事者が契約書類を保有する」という文言については「電子データとして保存する」に変える。

このように、データでの保管を前提とした内容に修正しておきましょう。なお、必要に応じて電子署名をしやすいレイアウトに変更しておくとベターです。いずれにしても、使い勝手の良い体裁に整える作業が必要です。

 

不動産取引を電子化する際の注意点

電子契約への切り替えには多くのメリットがありますが、注意すべき点もあります。具体的には以下の3点が挙げられます。

(1)契約相手への配慮

電子契約は、双方が同意していることが大前提です。たとえば、物件の所有者がインターネットやPCの操作に慣れていないと了承が得られない可能性もありますし、個人のみならず仲介業者も電子契約に対応していないこともありえます。

こうした想定を踏まえて、場合によっては紙での契約にも対応できるようにしておくことや、電子契約システムを導入する際は誰もが使いやすく操作性の高いツールを優先的に検討することをおすすめします。

(2)コンプライアンスの強化

不動産は高額な取引が多く、個人情報も扱います。電子契約のデータは紙の書面同様に厳重に取り扱い、セキュリティ面・コンプライアンス面では十分注意しなければなりません。オンライン上でのやり取りは、データの管理や共有がしやすくなる一方で、情報流出やデータ破損のリスクが伴います。特に、サーバーへのアクセスについては細心の注意を払いましょう。

たとえば、サーバーにアクセスできる階層を管理者と従業員で区別するなどの工夫で、データの機密性を保持するのもひとつの方法。また、宅地建物取引士の電子署名をほかの人が勝手に行う「なりすまし」防止のために、データのアクセスに関する社内規定も整えたいところです。

(3)電子契約にまつわるコスト

電子契約システム導入にあたっては、様々なコストがかかります。システム導入にかかる費用はもちろん、PCやスマホなどのデバイスやインターネット環境を整える必要も。 また、電子契約による契約書はデータで保存するため、バックアップや改ざん・漏えい防止のためのセキュリティ対策の見直しも定期的に行う必要があります。

電子契約による効率化のメリットを十分に享受するためにも、導入前の準備やランニングコストの試算などをぬかりなく行うことをおすすめします。

 

不動産向けの電子契約システムは?

民法第522条では、契約の成立は「両当事者の申込とその承諾において成り立つ」とされています。形式は問わないということなので、突き詰めればWordやPDFを用いた書類でも電子契約を行うことは可能です。しかし、改ざんのリスクを避け、法的効力を強固なものとするためには「電子署名」「電子証明書の付与」「タイムスタンプの付与」の3要素が必須です。この3要素がそろって初めて、電子署名法第3条の要件を満たすことになり、契約トラブルから訴訟に発展した際などに、有効な証拠として提出できます。

こうしたことから、上記3要素を漏れなく盛り込める電子契約システムの導入が安心です。具体的な電子契約システムについては、「電子契約システム比較15選!図解とタイプ分けで選び方を解説」をご参照ください。

なお、電子契約システムは、「定期借地・定期建物賃貸借契約」など、不動産取引に必要な書類が発行できないサービスもあるので確認しておくと安心です。

ここからは、不動産業務を効率化する電子契約システムを紹介していきます。

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電子契約くん(イタンジ株式会社)

電子契約くん公式Webサイト

(出所:電子契約くん公式Webサイト)

不動産賃貸取引に特化した電子契約システム。入居希望者が申込時に入力した情報とシームレスに連携。契約時にそのまま署名者情報として利用できるため、データ入力業務を大幅に削減できる。また、保証委託契約をはじめ、重要事項説明書、賃貸借契約、定期借家契約など付帯する契約も幅広くカバー。電子と紙での契約を併用するような手間が発生しない。更に、入居時の注意事項など契約書以外の書類を入居希望者に確認してもらうフローの追加が可能。オンライン上でも契約前に必要な情報を過不足なく伝えられる。一般財団法人日本データ通信協会が発行する「認定タイムスタンプ利用登録マーク」を取得していることもポイント。

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いえらぶサイン(株式会社いえらぶGROUP)

いえらぶサイン公式Webサイト

(出所:いえらぶサイン公式Webサイト)

煩雑な契約業務や大量の書類保管を軽減する、不動産業界に特化した電子契約サービス。管理会社ごとに異なる、様々な契約フローに対応。契約者との直接契約だけでなく、家主と契約者間や仲介会社を挟んだ契約にも対応するなど、実務に寄り沿った設計が強み。リーシング・管理機能とデータ連携しているため、途切れなくリアルタイムな情報の受け渡しが可能。一度の入力で物件確認から契約・更新までの業務を一気通貫で効率化する。法的セキュリティ面の強さにもこだわり、電子契約サービス「クラウドサイン」「GMOサイン」と連携。両社が誇る最新技術により、重要なデータを守る。

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マネーフォワード クラウド契約(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド契約公式Webサイト

(出所:マネーフォワード クラウド契約公式Webサイト)

契約書の作成・申請・締結・保存・管理までカバーする電子契約・契約管理サービス。「媒介契約書」「賃貸借契約書」「駐車場使用契約」など、不動産取引に必要なあらゆる契約書の作成・管理に対応。契約書の一元管理に優れており、紙の契約書や他社電子契約サービスから受領した電子契約データなど、あらゆる契約書をまとめられる。電子契約データは締結完了時に自動取込みができるため、手動での保管作業の手間を削減可能だ。送信料・保管料0円で大量の契約書データを上限なく管理できるため、各種契約書だけでなく申込書や重要事項説明書などもペーパーレスで取り扱える。
ワークフロー機能を標準搭載しているため、契約締結時の証跡保管も可能。承認者や申請履歴といった契約経緯の記録や契約書のバージョン管理ができるため、文面の改ざん・不正を防止し、契約相手に安心感を与えられる。

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スマート契約(アットホーム株式会社)

スマート契約公式Webサイト

(出所:スマート契約公式Webサイト)

電子サインサービスをグローバル展開するアドビ社と業務提携した、高セキュリティのクラウドサービス。普段使用している契約書をそのまま電子化することで、様々な契約業務を効率化。スマホからの電子サインにも対応し、時間や場所を問わず契約を完了できる。署名を知らせる通知メールや署名を促すリマインダーメールにより、進捗状況を把握でき、スケジュール遅れも回避。
また、世界水準のセキュリティ規格ISMSなどの規格に準拠。パスワード認証や身分証アップロードを組み合わせて本人確認の精度を高めるなど、高度な先進技術によるセキリュティ対策を講じている。契約内容はすべて国内のデータセンターに保管されるため、万一の災害の際にも紛失・汚損のリスクを最小化する。

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IMAoS(gooddaysホールディングス株式会社)

IMAoS公式Webサイト

(出所:IMAoS公式Webサイト)

重要事項説明書等の電子交付や賃貸管理業に関わる様々な契約書にオールラウンドに活用できる、不動産賃貸業向け電子署名サービス。開封率の高いSMS通知のうえ、スマホで署名する機能を標準装備。スマホさえあればどこでも署名が可能なため、締結率の向上にも貢献する。また、仲介事業者との連携機能も標準搭載。管理会社は契約書、重説をアップロードするだけで仲介事業者にスムーズに賃貸借契約業務を依頼できる。オプションのAPIを活用すれば、基幹システムとシームレスな連携も可能。利用者専用のサポートサイトでは、入居者やオーナーへの送付用文面のサンプルファイルがダウンロードできるなど、きめ細やかなフォロー体制も強み。

  • 料金:月額25,000円+250円/文書、初期費用50,000円(ライトプランの場合)

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まとめ

デジタル改革関連法の施行をきっかけに活用が進んでいる、不動産業界での電子契約。従来のアナログな契約方法を、電子契約に切り替える際には注意点もありますが、業務効率化や顧客満足度の向上にもつながるため、メリットも大きいと言えるでしょう。

社会全体の電子化への流れに機敏に対応し、合理的な経営を実践するためにも、電子化の準備や電子契約システムの導入を早めに検討されることをおすすめします。

よくある質問

不動産取引の電子契約へのよくある質問(要点)をまとめましたので、ご参考にしてください。

1.不動産取引における電子契約のメリットは?

すべてオンラインで完結するため、契約業務の効率化ができること。またそれに付随して、従来かかっていた用紙代、郵送代、収入印紙代、書類の保管業務などの契約に関わるコストが削減できること。更にデータを適切に保管することで、セキュリティやコンプライアンス強化が期待できることが挙げられます。

2.不動産取引における電子契約のデメリット(注意点)は?

導入に際して、自社の都合だけでなく「契約相手への配慮」が必要になる点、データアクセスに関する社内規定を整えて「コンプライアンスの強化」を図る必要がある点、システム費以外にも「電子契約にまつわるコスト」がかかる点が挙げられます。

3.不動産取引の電子契約には収入印紙は必要ですか?

収入印紙は不要です。電子契約で扱われるデータは、印紙税が必要となる課税文書に該当しないと判断されるためです。不動産関連の高額な契約は、それに比例して収入印紙税も高額になる傾向があります。そのため、収入印紙税がかからなくなることは大幅なコスト削減につながるでしょう。

 

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